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146. カップリング

前回のあらすじ!

ラッさん達と悪霊ディヒターの戦いは、光の力により見事ラッさんが勝利! しかしディヒターには逃げられてしまいました!

そして私は師匠と一緒に逃げてきていました……

チギリちゃんです。師匠と逃げてきました。ここは初めて師匠と魔法の練習をした草原ですね。ラッさん達は無事でしょうか……まあ多分大丈夫ですよね、ラッさんですし。


 「なあ、弟子……チギリさんよ」


師匠は呼び方に迷ったのか、随分とかしこまった感じで話しかけてきます。私は弟子でもいいですけど。


 「あの時さ、どうして俺なんかに師事しようと思ったんだ?」


師匠は不安そうに微笑みながら聞いてきました。なんだ、そんなことですか。それなら答えは簡単です。


 「ししょーのカップリング術、参考になると思ったからです!」

 「そうか、カップリング……ん?」


【カップリング】

①男女が契りを結ぶ仲介をすること。

②人間関係を取り持つこと。

古来よりカプル王国が国際交流の要衝であったことから、転じて人と人の絆をつなぐことを言うようになった。

(『言淵』より引用)


 「ししょー? どうしたんですか?」


師匠ったら固まっています。何か変なこと言いましたでしょうか? 少ししたら師匠は絞り出すように再び口を開きました。


 「えっと、魔法を? 教えてほしかったんだよな?」

 「話聞いてましたか? カップリングのやり方を、教えてほしかったんです!」


今更そんなことを確認してどうしたいんでしょう。これまでも、師匠からたくさんのアドバイスをもらったじゃないですか。師匠はお腹を抱えて笑いました。


 「はっはっは! 何だ、そうだったのか、やっぱお前面白いなぁ」


冗談を言ったつもりはなかったのですが、笑ってくれているので良しとしますか。それにしても笑いすぎでは? 涙出てますよ。


 「いや、あのな、俺はてっきり魔法の師匠ってことかと……」

 「ああ、それもあります!」

 「ついでかよ! 変わってんな、お前」


「面白い」から「変わってる」にランクアップしました。確かに魔法も沢山教えてもらいました。あの時の師匠の瞳は輝いていました。


 「なあ弟子よ」

 「なんですか、ししょー?」


師匠は草原に正座しました。私もそれにならって正座します。


 「俺なぁ、お前やボマードくんが羨ましかった」


私が羨ましかった? まさか師匠もラッさんの娘になりたかった……? いやしかし、ボマードさんも、と言ってますから違いますね。


 「ラスターの隣にいて信頼されてるお前らのことがさぁ……バカだよなぁ、自分から捨てたもののこと羨ましがるなんて」


師匠は自虐的な笑みを浮かべました。そうですよね、本当ならラッさんの隣の魔法使いは師匠のはずだったんですよね。


 「信じてやれなかったんだよな、あいつの強さをさ。でもお前は無邪気に心の底から、勇者のことを信じてる」

 「子が親を信頼するのは当然ですよ!」

 「はははっ、そうだったな。あいつもいい娘を持ったもんだ」


なんだか分かりませんが楽しそうにしています。外堀、着々と埋まっていますね。


 「俺も恵まれたよな、いい弟子に、いい友達に、いい家族に……やっぱりこんなところにいたらダメだな」


師匠は私の頭を撫でながらスクッと立ち上がりました。さっきよりも晴れやかな表情になっています。


 「弟子よ、最後に教えといてやる。まず王都の景色をイメージしろ」

 「王都の? はぁ、分かりました」


師匠は何を教えてくれようとしているのでしょうか? 言われるままに王都の街並みを心に浮かべます。


 「思い浮かべました!」

 「よし、じゃあ次に、空に透明な管が通ってるのをイメージしろ、こっから王都までな」

 「透明な……分かりました!」


おヒゲの配管工さんのゲームで見たような土管の形を思い浮かべます。すると目の前に突然、穴が開きました! そしてその穴の先には王都の街並みが!


 「空間魔法! これはししょーが?」

 「いいや、お前ならできると思ったよ」

 「私がやったんですか!? いつの間に……」

 「今のが空間魔法の使い方だ。ちゃんと覚えとけよな」


師匠はそれだけ言い残して穴の中へ消えていこうとしました……いやいや、待ってください! 後ろから師匠の腕を掴みます。


 「どこ行くつもりですか?」

 「自首すんだよ」

 「ああ、そうでしたね……」


そういうことなら私も止めますまい。罪を償う機会を与えられるというのは、幸せなことですから。


 「ししょー、お達者で!」

 「……付いてこないのか?」

 「え? あ、ひょっとして寂しいんです?」

 「まあいいや。お前本当に良い奴だな」


師匠は憑き物の落ちたような笑顔を見せて、立ち去っていきました。それからほどなく、師匠が拘留されたとの報せを伝令の人が伝えてくれました。



────────────



スカイルーク孤児院


 「……そうか、クロウリーが」


報せを受けたラッさんは、ただそれだけ呟きました。量刑はおって決められるそうです。


 「クロウリーは、どれほどの罪になるんだろうか?」

 「うんうん! 私も気になる!」


ヴァイスさんとアルさんが心配そうに尋ねました。ピスケスさんが答えにくそうにしながらも答えます。


 「相当長いと思います~……短ければ2,30年……最悪なら一生……」


何となく暗い雰囲気になりました。そりゃあ、魔王に手を貸しちゃったんですし罪は重いですよね……でも王様は優しいし、こう、手心というか、加えてくれるかもですし。


 「すみません、でもクロウリーくんも反省してますし~、少しは軽くなる、かも~……」


ピスケスさんが精一杯のフォローをします。しかしヴァイスさんの表情は穏やかでした。


 「待ちますよ、いつまでも。今度帰ってくるときには、甥っ子か姪っ子の顔でも見せてやろうかな」

 「……そうだね、クロくんの家はここだもんね」


お二人は家族としてクロウリーさんを信じることに決めたわけですか。しかし甥っ子か姪っ子ですか。そんなことを言ったらまたチギリちゃんが狂乱して……


 「はいっ! 約束ですもん、絶対に帰ってきますよ! 家族の絆は永久に不滅です!」


……クレアは自分の宿主を見くびっていたようですね。流石にこんな真剣な時にまで空気を読まずに暴れるほどではないということです。チギリちゃんの明るい笑顔で、お二人もつられて微笑みました。


 「僕はクロウリーを守れなかったから、だからせめて、あいつの帰る家ぐらいは、守ってあげないとね。……お兄ちゃんとして!」

 「私も! お義姉ちゃんとして!」


ヴァイスさんの決意表明に同調して、アルさんも元気良く手をあげました。温かいですね、この家は。


 「ヴァイスさん、それじゃあ俺らはそろそろ……」

 「ラスターくん、ちょっと」


二人が大丈夫そうなのを見届けて立ち去ろうとしたところ、ヴァイスさんが呼び止めます。


 「今さら言われるまでもないと思うけど、弟を好き勝手に利用された……魔王を、絶対に倒してくれ」

 「安心しな、そういうのならいくらでも受け付けてる」


ラスターさんはヴァイスさんからの想いを受け取り、スカイルーク孤児院を後にしました。そして王都の宿屋さんに帰った後のことでした……



 「ラッさん、ししょーと仲直りできてよかったですね!」


チギリちゃんはとても嬉しそうに言いました。ラスターさんは剣の手入れをしながら、黙って頷きます。


 「ヴァイスさん達も、甥っ子か姪っ子見せてあげよう、って言ってましたね!」


チギリちゃんはとても嬉しそうに言いました。ラスターさんは剣の手入れをしながら、黙って頷きます。


 「兄弟の絆……憧れちゃいます!」

 「……そうか」

 「ラッさん、私の弟か妹はいつできますか?」


ラスターさんの手が止まりました。そして水晶に剣を収納し、大きくため息をつくと、チギリちゃんに爽やかな笑顔を向けました。


 「さあ? 俺はお前の親じゃないから分かんねぇや」


それを聞いたチギリちゃんはあんぐりと口を開けました。


 「えっ!? まだですか!? もー、いつになったら認めてくれるんですかー!」

 「未来永劫認めねぇよ、バーカ! いい加減諦めろ!」

 「いいえ、決してあきらめません! くっ、こうなったらリリスさんに……!」

 「おい、何する気だ!」


走り出したチギリちゃんをラスターさんは追いかけていきました。……やっぱりチギリちゃんはチギリちゃんですね。


続く!


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