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144. ぶちこわし

前回のあらすじ!

友情を取り戻したラッさん達がししょーに見せたかったもの、それはヴァイスさんとアルさんの結婚式! 素晴らしい式でした! みんな幸せそうでよかったです!

しかしこのまま終わるはずもなく……

式も終わり、クロウリーさんは式場を立ち去ろうとしていました。大好きなお兄さんの幸せそうな姿を見たら、嬉しくってお腹いっぱいになってしまったのです。だからこそ次に会う時には、罪を償った汚れのない姿で、そう思ったのです。


 「クロウリー! またどこかへ行くのか? 行き先ぐらい、教えてくれても……」


ヴァイスさんが呼び止めます。クロウリーさんは振り返ることができませんでした。お兄さんの幸せに、水を差したくなかったのです。


 「……どれだけ時間がかかっても、絶対に帰ってくる。今はそれしか」

 「分かった。約束だぞ!」

 「うん、約束だ」


弟を信じて、あえて追及はしませんでした。やっぱり兄弟っていいものですね。それなのに──


 「ちょっとちょっとクロウリーくん! ダメだよ、家族にはちゃんと言わなきゃ! 魔王に協力した罰を受けるんですー、って!」


女神像の頭の上で悪霊があぐらをかいていました。ヴァイスさん達は動揺しています、そりゃそうです。


 「だ、誰!? ていうか魔王、って……嘘だよなクロウリー!?」


クロウリーさんは振り返って充血した目でディヒターを睨みます。それはもう最悪なタイミングでの暴露ですから。しかし逆にその表情が、ヴァイスさんに真実を伝えてしまったのです。


 「本当……なのか?」

 「残念ながらねぇ。お兄さん、この子ったらね、魔王様に『協力すれば兄は見逃してやる』って言われて泣く泣く……感動的でしょう?」


ディヒターはわざとらしく泣きまねをしながらさらに最悪な暴露を続けます。ヴァイスさんは膝から崩れ落ちました。兄が最も傷つくのは兄弟を守れなかったときです。


 「おい貴様、いい加減にしろよ」


ラッさんがいつの間にかディヒターのすぐ隣にいました。剣を振り抜きましたが、ディヒターの体には……


 「何!?」

 「ごめんね、僕オバケなもんで」


今度はディヒターがラッさんの腕を掴みます。そっちからは触れるのズルいですよねぇ!?


 「……ッ! 全員逃げろォ!」

 「優しいねぇ。セヴンスカース・星宿変化」


そう唱えるとなんと、隕石が礼拝堂の天井を突き破って落ちてきました! あんなのアリですか!?


 「ラッさん! よけてー!」

 「クッソ……だが……!」


隕石はそのままラッさんに直撃しました。女神像も木っ端みじんです。ラッさんならあの程度の隕石余裕で真っ二つにできたでしょうが、そうしたらここの人達に危険が及びます。だから自分の体一つで受け止めたんです。何て卑怯な!


 「大怪我だねぇ。足手まといが沢山いたせいで!」

 「何だとテメェ……?」


隕石の衝撃で皆さん我に帰ったのか、子ども達は新郎新婦の指示で外に避難を開始しました。幸せな結婚式だったのに、こんなにメチャクチャにして……


 「……みたいな顔してるねえ、お嬢ちゃん。だけどね、クロウリー君がいたからこんなことになってるんだよ?」


師匠はギュッと胸を抑えました。本当に辛そうで見ていられませんでした。人の弱みに付け込んでこんなことして、一体何が楽しくて……


 「それ以上喋らないでもらえます? 悪霊ごときが、私の友達のことを侮辱しないでください」


ピスケスさんはいつの間にか、黒いトラを引き連れています。召喚魔法です。そうです、師匠は悪いことをしましたが、その前に私の師匠です。


 「ラッさん、私この人嫌いです!」

 「……珍しく気が合うな。なあ、ボマード」

 「お任せください、悪霊退治は聖職者の領分ですので」


勇者一行とピスケスさんに明確な敵意を向けられてなお、ディヒターは余裕の笑みを浮かべています。


 「僕の狙いはクロウリーくんだけなんだけどなぁ。まあ仕方ないね……まずは魔術師から潰すか」


チギリちゃんの方を見ました。いち早く察知したピスケスさんが黒虎を向かわせます。虎ちゃんがディヒターの腕に噛みつきました!


 「私の友達に……これ以上傷つけさせません!」

 「はあ……これはちょっと痛い……星宿変化!」


虎ちゃんに向かって隕石が落ちてきますが、切り刻まれて小石ほどバラバラに! ラスターさんにかかればこんなもんですよ!


 「ボマード! いけ!」

 「ええ!」


虎ちゃんが動きを止めてくれている間に、ボマードさんが正義の鉄拳を食らわせます! ……私何もしてないですね。まあいいです、倒せるなら!


 「ふぐっ……ちょっとなんてモンじゃない、かなり効いた……」

 「さらにもう一発!」


ディヒターの体が徐々に薄くなってきました。このままいけば成仏させられます! 私は何もできてませんけど!


 「このまま消えるのは……イヤだなぁ」


そんな透け透けの体で駄々こねたってもう遅いです! ボマードさんが今まさに、最後の一撃を打ち込もうとしています!


 「御免ッ!」

 「……! ボマード、引け!」


ラスターさんが割り込もうとしましたが間に合わず、しかしディヒターの姿は見えません。やったんじゃないですか?


 「がうがう!」

 「トラちゃん……どうした~……はっ!」


ボマードさんの様子がおかしいですね。さっきから俯いたままピクリとも動きません。そんなに疲れるほどの激戦には見えませんでしたが、チギリちゃんの目には映らない熾烈な駆け引きが?


 「ラスターくん……」

 「分かってる」


ラスターさんは剣を構えています。相手はボマードさんですよぉ? しかしトラさんもうなっていますね。……これは一体?


 「上手くいったねぇ。聖職者の体に入るのは賭けだったけど……」


ボマードさんの喋り方がおかしいです! ボマードさんはあんなにねっとりいやらしい不快な喋り方はしません!


 「……セヴンスカース・冥府侵逼。んっふっふ、どうしてくれようか?」


ボマードさんの体が、悪霊に乗っ取られちゃいました!?



続く!


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