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133. ときめきシンギュラリティ

前回のあらすじ!

魔王が手下を利用しているだけの邪悪な思想の持ち主であることを改めて知らされた私達……このままではギガさんの尊厳は貶められる一方です! ラッさん、ギガさんを楽にしてあげて……

 「人類……? お前は? なら死ね!」


ギガさんは飛び回るラッさんを叩きつぶそうと腕を振り回しています。ラスターさんは全力でかわしながら、私に声を掛けます。


 「一撃で仕留める! こいつの核の場所を教えろ!」

 「核の場所ですね! リョーカイで……んん?」

 「……やり方わからなかったらチギリに聞け!」


私だってやったことないですけどね、私ならできるという、娘への信頼ですねこれは。魔力探知すれば簡単に見つかるとは思いますが……


 「こうですか? えいっ!」


微弱な魔力をぶつけて、反射してきた魔力から核の位置を読み取ります。クレアさん、筋がいいですよ! ついでにラッさんにテレパシーで位置を送ってあげましょう。


 「ラスターさん! 核が分裂して体内を動き回ってます!」

 「何!? そうか、分かった……」

 「一撃じゃ仕留められませんよ!」

 「……そうだな!」


クレアさんの細かい指摘は無視して、ギガさんの死角に入ったラッさんは大きく息を吸って一瞬息を止めます。


 「奥義……流星乱舞!」


ラッさんは銀色に光る流星群のように飛び回ります。速すぎてよく見えませんが、ギガさんの体に穴が空いています!


 「あと5秒……間に合えよォ!」


数秒後、ラッさんの動きが止まりました。竜影術は解除され、地上に舞い降りてきます。


 「ラスターさん!」

 「……ギリギリ500発、仕留めたぜ」


ラッさんは息が上がっています。ギガさんは、全身穴ぼこになって動きを停止していました。そしてさらさらと崩れ落ち、大きな土ぼこりが舞いました。


 「……終わった、みたいですね」

 「ああ。せめて安らかに眠れ」



ギガさんとの死闘を終えた私達は王都に戻りました。ラスターさんにも無事に信用してもらえたので、体の主導権はチギリちゃんにお返しします。


 「ラッさん、私ちょっとお出かけしてきます」

 「晩飯までに帰ってこいよ」

 「はーい!」


そう言って街の方に繰り出していきました。ちなみに私が表に出ているときはチギリちゃんの体力を消費しないので、今日のチギリちゃんは全く疲れていません。


 「クレアさん、ゴーレムは全部機能停止したんですよね?」


そうですよ。そうですけど、私に話しかけていると独りごとを言っているようにしか見えないので外では控えた方がいいと思います。


 「それもそうですね……いや、メシアガレオンさんが気になって……」


パン屋のロボットさんですね。確かに、あの後どうなったのでしょうか……早歩きでガレオン堂に向かいます。


 「メシアガレオンさん、しっかりなさってください!」


ガレオン堂からジェイミーさんが嘆く声が聞こえてきます。彼女もロボットさんのことが気になって来ていたようですね。


 「ジェイミーさん、やっぱりメシアガレオンさんも……」

 「チギリさん……はい、すっかり動かなくなっていて……」


やはりギガさんと一緒に機能停止してしまっていたようですね……ていうかそもそもどうしてギガさんと他のゴーレムが一緒に停止するんでしょう。


 「クレアさん、どうしてですか?」

 「だ、誰ですかそれ?」

 「あ、私の中にいる人ですよ!」

 「中に? んん?」


チギリちゃん、お友達が困惑していますよ。先に質問に答えておくと、ゴーレムさん達は全て主からの魔力供給で動いていたようですから、ギガさんが死んでそれが途絶えたことが原因でしょう。


 「──らしいです!」

 「そんな……」


ジェイミーさんは今にも泣きそうになっています。私だって悲しいですよ……


 「って、イストさんは相棒の一大事にどこに行っているんですか?」

 「奥でパンを焼いてますけど……」


そうでしたか……どんなに辛い状況でも仕事はし続けなければならない、社会人の悲哀というヤツですね。


 「自分一人でも店は続けなきゃいけない、って。一番お辛いはずですのに、表情一つ変えずに……」


立派ですね。もしかしたら厨房で一人泣いているのかもしれません。


 「おーい、焼けたぞー」


噂をすれば、イストさんがパン籠にクルミのパンをたくさん詰めて出てきました。あれはいわば花束です。メシアガレオンさんへの手向けの……


 「おい、いつまで寝てんだー? 腹減ったのか? 腹減ってんだろ?」


イストさんは焼き立てのパンをメシアガレオンさんの口元?に相当してそうな部位に押し付けます。


 「そうか……メシアガレオンさんの死を受け入れられなくて……」

 「イストさん、お気を確かに!」

 「……何言ってんの?」


イストさんは怪訝そうに私達の方を振り返ります。別れってこんなに突然やってくるものなんですか? こんなのってひどすぎます……


 「メシアガレオンさんはもう……」

 「やめろって、勝手に殺すなー」


表向きは飄々としていますがその心中は……あれ? イストさんが手に持っていたパンが消えています。


 「ピー……エネルギー、補給完了、フッカーツ!」

 「えーっ!?」


再起動しました! 私達は驚きの声を上げてしまいます!


 「チギリさん、どうなってますの!?」

 「私にもさっぱり……」


動力源である魔力の供給は絶たれているはずでは? まさかまだギガさんが生きて……しかし確かにこの目で見ましたし……


 「ピー! 私ハ、魔力ヲ自己生産、シテイマス!」

 「おぉー! すっごぉーい!!」


でも魔力って人間の感情から生まれる物だったはずです。怒りによって感情を得たギガさんはともかく、ロボットさんはどうやって?


 「ピピピ……メモリーヲ、検索……」


また固まってしまいました? 頭の部分からシャーシャーと回転音が聞こえてきます。


 「……メシ?」

 「ご飯ですか?」

 「メシ、ガ、旨カッタ、ノデ」


「ご飯美味しい」で感情が芽生えたってことでしょうか? 案外なんてことないきっかけだったんですね。


 「ま、飯が美味けりゃ万事オッケーよ」


イストさんはにやりと笑いながら厨房に戻っていきました。なんだか嬉しそうです。


 「なんだか私もお腹空いてきちゃいましたよぉ」

 「あら、それでは家で一緒にどうですか?」

 「おっ、いいですね!」


ジェイミーさんの家のご飯楽しみです! ……でも何か忘れてる気が。


 「少々待ってくださいね。手土産にここのパンを買っていきますから」

 「あ、私も出しますよ!」


ま、いっかです!



宿屋


 「……夕飯までには帰ってこい、って言ったのにな」



続く!


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