132. 死してなお消えぬ思い
前回のあらすじ!
ギガさんを見事撃破したラスターさん! しかしこのままあっさり終わってくれるはずもなく……
「……帰るか」
ギガさんとの決着がつき、私達はギガリスラボ跡地を立ち去ろうとしていました。
「何はともあれ平和は保たれたのである。ラスター、顔を上げい」
「分かってるよ、分かってる」
何か違っていたら、ギガさんともお友達になれていたのかもしれません。なんか可哀想な人でした。
「ラスターさん、後でボマードさんを呼んで供養してもらいましょう」
「ああ、そうだな」
ラッさんは空を見上げながら私の頭を撫でました。クレアさんは最初は戸惑っていましたが、やがて嬉しそうに微笑みました。
「私のこと、信じてくれる気になりました?」
「……ちょっとだけな」
素直じゃないです。そしてなんかいい感じで帰ろうとしたその時でした。
ズドーン!
跡地から轟音が聞こえてきました。さっきギガさんと戦った辺りです! 振り返るまでもありません、巨大な影がこっちまで伸びてきています。
「ラスターさん!」
「リーバーさん、近隣住民に避難の呼びかけを!」
「うむ!」
先日のスライムさんと同じです、ギガさんが巨大化して私達を見下ろしていました。
「ちっ、しつけぇな……ドラゴン!」
ラッさんは竜影をまとい、引き返して飛んでいきます。私も急ぎましょう! もう1対1なんか関係ありません!
「うぉっ、ビルぐらいありますよ……! ラスターさんは……」
ギガさんの顔の周りを飛び回っています。ギガさんは蚊でも払うように手を振っています。
「いくらラスターさんが強くてもサイズ差がありすぎます。チギリさん、魔力お借りしま……」
クレアさんは身をすくめました。何か分かりませんが私も感じましたよ、凍てつくような冷たい気配! ですが私が1万年前に出会った“それ”よりはるかに強い!
「おやおや、懐かしい『人間』と出会ったな?」
土の巨人の足元で、チギリちゃんと同じぐらいの少女が佇んでいました。しかし可愛らしいのは見た目だけ、邪悪な気配は隠しきれません。
「くだらん思慕のために神の身を捨て、私に殺された哀れな人間……そうだろ?」
「……その通りですね。魔王さん」
ま、ままま魔王!? てことは、あの体はラッさんの妹さんの! ラッさんは気づいていないはずありませんが、今はギガさんを何とかするのが先決と考えているようです。
「なかなかの傑作だろう? まるで勇者が羽虫のようではないか」
「ギガさんに何をしたんですか」
クレアさんにとっても自分を殺した憎い相手のはずですが、あくまで冷静に、感情を押し殺して問いかけます。魔王はギガさんを見上げながら不気味な笑みを浮かべます。
「私が分け与えた力の一端、それが死に瀕して暴走したと言ったところかな?」
「暴走? 本当にそうですか?」
「目ざといなぁ。人に堕ちたとはいえ流石に元・神だ」
暴走はしていないというのでしょうか? 意思を失っているようにしか見えませんが……
「ま、だが暴走はしているよ。私の想定内でね」
魔王は得意げに言いました。暴走はしていて? そしてそれが想定内? クレアさんは勘づいているみたいです。どういうことでしょうか?
「お前の真似だよ。私一人では勝てんからね」
「一緒にしないでください!」
「同じだよ。自分の都合で身の丈に合わない力を押し付けているんだから」
クレアさんは押し黙ってしまいました。何やってるんですか、言い返して! クレアさんと十二神の皆さんの間には絆があったじゃないですか!
「で、でも、私は友情や愛を結んだ相手に力を託しました!」
「奇遇だな、私も彼らの忠誠の証に『魔神の種』を埋め込んだ」
うおぉ、話が通じません。しかし「魔神の種」という単語が出てきました。それがギガさんを暴走させたのでしょうか。
「そして私は、彼らの忠誠の見返りとして力を授けた。死してなお、彼らの望みが果たされる力をな」
だからギガさんやスライムさんが復活したんですね! これで謎が解けました。ですが魔王が自分の部下だからってそんな親切なことを……?
「彼らの願いを無駄にしたくはない。だって彼らの願いは、悪感情から生じた尊いものなのだから」
悪感情って確か魔王の力の源で……あっ! 私にも分かりました、こいつメッチャ悪い人じゃないですか!
「自分の手下を苗床にするつもりだったんですね?」
「人聞きが悪い。彼らの欲望が生み出す悪感情のおこぼれを、少し頂戴しようと思っていただけだ」
魔王はわざとらしく顔をしかめます。つまり手下さんは最初から捨て駒だった、ってことです!
「生き永らえて私のために働くもよし、死して思いを託すもよし。いい考えとは思わんか?」
「思いません! 命を何だと思ってるんですか!」
「何を言う、これはただの土の塊だろう?」
小馬鹿にしたようにギガさんの足元を指さします。クレアさんも堪忍袋の緒が切れました、杖を振り上げて魔王に飛びかかります。使い方を間違えていますが気持ちは分かります。
「落ち着け、お前は勇者共々たっぷり苦しめてから葬ってやる」
クレアさんの振り下ろした杖は空を切ります。魔王は姿を消してしまいました。
「おい神様、魔王は!」
「ぐぅ……逃げられました!」
二人とも悔しそうです、私だって悔しいです。しかし目の前で暴れるギガさんを無視できません。
「人類……滅亡……!」
意思も尊厳も奪われて、ただ欲望のままに目の前の物を破壊する、それが幸せといえるでしょうか?
「ラスターさん!」
「……何だ」
「ギガさんを救ってあげて下さい!」
この場合の救う、ってそういうことです。
「そのつもりだ。神様、あんたも手伝えよ」
「勿論です!」
続く!




