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129. 創造者は不信を買う

前回のあらすじ!

私の体に宿っていたのは、何と創造神クレアさんの魂でした!!!! どうなってしまうことかと思いましたが、私がラッさんの娘になるのに協力してくれるいい神様でした! これからよろしくお願いします!

こちらこそです!

いつもの宿屋


 「ラッさん、剣のキラキラ、私が預かっておきましょうか?」


ラスターさんは首をかしげました。チギリちゃんもラスターさんが常にキラキラしているのは嫌なそうなのでクレアさんが一肌脱ごうと思ったのです。


 「預かる、ってどうやってだよ?」

 「私もよく分からないんですけど、クレアさんが」


それを聞いたラスターさんは眉をひそめました。ふむ、完全にクレアさんを警戒していますね。


 「俺はまだクレアのこと信用してないからな」

 「えー、悪い人じゃないのにー」

 「そりゃあ、人じゃなくて神様だからな」

 「屁理屈ですー」


私とラッさんを親子にするために尽力してくれた最高最善神ですのに。(結局うやむやにされてしまいましたが)一体何が気に入らないんでしょうねぇ?


 「あっ、そうです! ラッさん、私は今日一日クレアさんに体を譲ります」

 「はぁ? 何考えてんだ?」

 「丸一日一緒に過ごせば、ラッさんもクレアさんのこと好きになりますよ!」


チギリちゃんはそう言ってくれていますが、この体は基本的にあちらの物なので必要緊急の時以外はあまり交替したくないのですが……


 「クレアさんもいいですよね?」


……そんな可愛らしい笑顔で言われたら無下にするわけにはいきませんね。それに、せっかく勇者の命と再び巡り合えたわけですから仲良くならなきゃですよ。


 「それじゃあラスターさん、今日一日よろしくでーす!」

 「うぉお!? 急に変わるんじゃねえ!」


ラッさんとクレアさんが二人で街を練り歩きます。ただ、見た目は私のままですので街の人には見慣れた光景なのです。


 「勇者様、今日も親子でお出かけかい?」

 「だから親子じゃねぇ!」


もう周りからは親子と認識されているんですね、ラスターさんも強情ですね。私の2,3歩先を歩きながら、振り返って尋ねます。


 「おい神様、どっか行きたいところないのか?」


どこでもいいんですよ、この世界は良い所ですからね。


 「朝ご飯食べませんか? 行きたいお店があるんです」


クレアさんはそういうと、早歩きでラッさんの前に出ました。一万年たっても、足はその場所を覚えているみたいです。


 「残ってますかね……あっ……」

 「ここに来たかったのか?」


お店の前をロボット?が掃除しています。お店の名前は「ガレオン“工房”」、プニさんと通ったあの食堂ではありません。


 「金属加工?のお店になってるんですね」

 「いや、ここはパン屋だが……」


 「イラッシャイマセー!」


ガレオン堂の親父さん、神パワーの適性がなかったので継承者にはなれませんでしたが、私が出会った善き人間の一人です。


 「ガレオン堂はもうないのですね……」


 「ピピー、“ガレオン堂”ノ、データヲ、検索……」


さっきから何ですかこのロボットは? クレアさんも同じ勘違いをしています。メシアガレオンさんはロボットではなくてゴーレムです。


 「まあいいや。パンでも買っていくか?」

 「そうですね……せっかくですから」


 「ピピー、検索検索……」


私達がお店に入っていくとその後ろをロボットさんが付いてきます。何を検索してるんでしょうね?


 「へい、らっしゃい! おっ、魔法使いちゃんと勇者様か」


ラッさんは軽く手を上げて挨拶を返します。チギリちゃん達もすっかりここの常連ですからね、おいしいんですよパンが。


 「ほぁー、すっごくいい匂いです!」

 「どれにする?」


表に出ていないと味や匂いまで分かりませんからね、私には新鮮な体験です。


 「坊チャマー、『ガレオン堂』トハ?」


パン屋のご主人にロボットさんが尋ねます。イストさんは少し宙に視線を漂わせて考えます。


 「ガレオン堂? 親父から聞いたことある気がするな……」

 「本当ですか!?」


飛びつくとご主人は驚いたように軽くのけぞりました。そして思い出したのか「あっ」と声を漏らしました。


 「ひいひい爺ちゃんの代まで『ガレオン堂』だったんだよ、この店」

 「まぁっ!」


私はパァッと瞳を輝かせました。ラッさんはそんな私を怪訝そうに見つめています。


 「ガレオン堂はここにあったんです! 形を変えてもここに!」


 「ピー! 検索結果、ガイトウ!」


嬉しそうに飛び跳ねる私の横を、メシアガレオンさんが駆け抜け厨房へと引っ込んでいきます。さっきから様子がおかしいですね?


 「でもどうして名前が変わっちゃったんですか?」

 「ひい爺ちゃんが、どうしてもパン屋がやりたい、って食堂の方は譲ってこの店建てたらしいけど……」


イストさんは厨房の様子を気にしながら答えます。やはりイストさんから見てもおかしな様子らしいです。


 「ピー、完成、完成ィー!」

 「どうしたメシアガレオン」


流石に放っておけなくなったのか、私を振りほどいて様子を見に行きました。私もちょっと覗かせていただきます。


 「検索結果『山菜の盛り合わせ』、リザーブ!」

 「ちょっ、それ昼飯用に取ってきたヤツ!」


悔しがるイストさんの隣で、私は泣いていました。クレアさんはどうしたのでしょう?


 「ロボットさん……」

 「私ハ、メシアガレオン、デス」

 「その料理は……」


歩み寄ってお皿を受け取りました。クレアさんはポロポロ泣きながらお皿に盛られた山菜を手づかみで口に運びます。


 「すごいです……一万年前と同じ味です……」

 「ピー! 土地ノ記憶ヲ検索、『ガレオン堂ノ自慢、神ノ愛シタ味』トシテ該当!」


 「なあ、勇者様、さっきからあいつらは何の話をしてるんだ?」

 「深い意味はない。気にするな」


クレアさんの思い出の味をメシアガレオンさんが再現してくれたんですね。ゴーレムってすごい……!


 「ですがなぜ? 頼みましたっけ?」

 「ピー! オ客様カラ、悲シミヲ、検出、コノ店デ、悲シソウナ顔、法度デス!」


思い出の店がなくなったと思って悲しむクレアさんを喜ばせるために! 何て優しいロボ……もといゴーレムさんなのでしょう! 私はメシアガレオンさんに抱き着きました。


 「ありがとう……ロボットさん、本当に……」

 「ピー! 不正ナ、アクセスヲ検知! 思考回路、シャットダウン……」


あれ? 良い所だったのにメシアガレオンさんが動かなくなってしまいました。不正なアクセスと言っていましたが……


 「あー、またこれかぁ。最近よくなるんだよ」


イストさんはうんざりした様子でメシアガレオンさんの体を隅々まで検分します。


 「特に異常ないけどなぁ。どうすっかな、ギガリスさんももう死んでるし……」


私はメシアガレオンさんの頭に手を当てます。クレアさんは気を集中させて何かを探っているようです。


 「……! いけません! ラスターさん、シングラ市に行きましょう!」

 「ギガか?」


私もクレアさんを通じて分かりました! ギガ江さんがとんでもないことを企んでいます!



────────────



シングラ市・ギガリスラボ跡地


 「……みんな、友達。みんな、私の」



続く!


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