127. キラキラとともに
前回のあらすじ!
試練を終え、新たな力を手にしたラッさん! その力とは、ラッさんの妹を救うことができる力でした!
嬉しいんですけど、私それ以来ちょっと様子が変でして……ちょっと!? もともと変って何ですか!
十二神官どきどきスタンプラリーも無事に終了し、私達は元の生活に戻っていました。とはいえ気持ちはかなり前向きですけどね!
「ラッさんがようやく報われそうです!」
「ホント!? いやぁ、こっちも試練を用意した甲斐があるってもんよ」
私は朝の日課と化したリオさんとの修業を終え、二人で話していたところです。リオさんも大喜びですよ!
「あー、でも、それじゃあチギリちゃんがここに来る必要もなくなるのか……」
「えっ、どうしてですか?」
「だってチギリちゃんが修行してたのって、ラスターの妹助けるためでしょ?」
確かにそうです。もう暗いうちから早起きする必要も、滝に打たれて痛い思いをする必要もないわけです。
「イヤです! これからも毎日来させて下さい! 私はここが好きなんです!」
「お、おぉ……そう言ってくれるのは嬉しいけど……」
思っていることと逆のことを、リオさんの肩を掴んで懇願する形で言っていました。これはひょっとして……
「楽に流される弱い自分を律する心が身についたのですね……! 修行の成果おそるべしです……!」
「チギリちゃん、何かいつもと雰囲気違うね……」
そして結局修業は続けることになったわけですが、リオさんにも言われました。私、そんなに変でしょうか? 喜びのあまりテンションが上がりすぎているのかもしれません。
こんな時は、母に会って癒されるのが一番です。と言うわけで、リリスさんに会いに行きましょー!
「リリスさーん! あっそびに来まし……た……」
絵画の世界でした。いつも通りガラガラのマジカル☆ケミカルに、リリスさんと、魔法学校校長兼十二神官のアークさんが二人で話し込んでいます。
「ルネッサーン!」
「チ、チギリちゃん?」
美しい光景過ぎて叫んでしまいました。チギリちゃん的世界2大美女の夢の競演です! アークさんは授業の教材に使う魔道具を見に来ていたんだそうで。
「リリスさんは知識が豊富ですから頼りになります」
「でしょう、でしょう! 私の自慢のお母さんです」
褒められたリリスさんは嬉し恥ずかしという感じでうつむきながら笑っています。しかしアークさんは困った顔で私を見つめました。
「……二人は親子なのですか?」
「そうですよ?」
「ち、ちがいます……チギリちゃんのことは大切だけど……」
「えっ!?」
この関係が親子でなければ何だというのでしょうか……チギリちゃんは理解に苦しみます。
「ふふ、ご冗談でしたか」
「いえ、冗談ではなくて!」
「チギリさんは面白い方ですね」
アークさんは私に向けて微笑みます。これですよ、この表情がチギリちゃんを惑わせるのです。
「では、私は学校に戻ります」
「あ、はい……」
「大丈夫です、また会えますよ」
「きゅーん!」
去り際に私の手をそっと握ってからお店を出ていきました。チギリちゃんは、しばらくとろけておりました。
「あの……チギリちゃん、大丈夫?」
「はっ! はい! ええ!」
母親に心配をかけてしまいました。女の子なのに、女性相手にどきどきして……やっぱり私は変なのでしょうか?
「変じゃないです! 人を好きな気持ちに貴賤はありません!」
「ど、どうしたの?」
「いえ、何でもないです!」
また思ってもいないことを口にしていました。私は本当にどうしてしまったのでしょうか……
「で、でも、ドキドキしちゃう気持ち分かるなぁ。アークさん綺麗だし」
「リリスさんもドキドキしますか?」
「うん、するする」
「ラッさんといる時よりも?」
そう尋ねるとリリスさんは急にしおらしくなって、無言で首を振りました。ごちそうさまです。
「励ましてくれてありがとうございます! やっぱりリリスさんは私のお母さんです」
「良かったけど……それはどうだろう……」
また表に出てくるチャンスを逃してしまいました。分離できれば一番良いのですが、この子と私の親和性が高すぎるのです。
どうしたものかと思案していると、ラスターさんがお店にやって来ました。
「あっ、ラスターくん……」
「よう、リリス……」
二人は照れながら挨拶を交わします。ははぁ、愛の試練での一件が尾を引いていますね。ラスターさんが熱い愛を囁いたから……
「ちょっと相談があって」
「いいよ、何?」
ラスターさんは剣を取り出して見せました。何度見ても素晴らしいキラキラです。
「うわぁ、すっごい光ってる」
「……これ、常に光ってんだ」
ラスターさんは重々しくつぶやきました。それはまあ神の威光ですしね。
「水晶ン中に収納しても光だけ外にダダ漏れなんだ」
「確かに! 最近ラッさん、ずっとキラキラしてました!」
この眩い輝きは、ちょっとやそっとしまい込んだぐらいでは隠せないということですね。友人たちが立派に神様やっていて鼻が高いです。
「……どうにかして隠せないか?」
「うん、そうだよね……」
「ラスターさん、どうしてそんなこと言うんですかー!」
別に言ってもいいのでは? ラッさんが常にキラキラ粒子に包まれていたら私の腹筋が耐えられません。
「チギリちゃん、今ラスター“さん”って……」
「俺は別にどっちでもいいが」
どっちでも良くないです! ラッさん呼びはチギリちゃんの1つのアイデンティティです。心ではラッさんと呼べているのにどうして……
「……はっ!」
「チギリちゃん?」
夢の中にいるみたいです。意識はバッチリあるのに言葉も体も思い通りに動きません。
「そういうことですか……キラメキと共鳴して……」
「チギリ、さっきから何を言って……」
「私はチギリちゃんではありません!」
何を言っているんですか!? 私は正真正銘、オシノチギリ11歳・魔法使いです!
「私はクレアと言います!」
ようやく帰ってこられました、私の世界に! って、いやいや、誰ですか!? ラッさんは目を見張っています。
「く、クレア? それは誰……?」
「あんたが……どうしてチギリの体に?」
ラッさんは「クレアさん」のことを知っているのでしょうか。私の身体は一体どうなってしまうんですか!?
続く!




