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11. オシノチギリは高みを目指す

前回のあらすじ!

ラスターさんの悲しい過去を聞かされた私とウリたん。こうなったら俄然やる気! そんなの吹っ飛ばすぐらいの良妻を絶対に見つけるんですから!

あとオオダマコゲチャイノシシの“ウリたん”が仲間になりました。よろしくどうぞ~


※今回よりウリたんの台詞は同時通訳でお送りします。


────────────



 「魔法には属性があり……ぶつぶつ……その中でも……ぶつぶつ……」


 「随分頑張っておられるようですが……何かありましたか?」

 「…………さあな」


 どうもチギリちゃんです。私は魔法のお勉強を頑張ることにしました。きっとラスターさんの妹さんを助けられる魔法があるはずです!


 「はぁ……ではこのイノシシは?」

 「俺に聞くな!」

 「イノシシじゃなくて“ウリたん”です!」


そして私たちの新しい仲間のウリたん! なぜか懐かれちゃいました! 図鑑によると背中のシマシマがないのでメスだそうです。


 「姉上は一足先に王都に戻ったようですが、我々はどうしますか?」

 「魔法の勉強ならあいつのところに連れて行ってやってもいいかもな……」

 「ああ、あそこですか。良いんじゃないですか?」


お二人は何の話をしているんでしょう? あそこってどこですか。ウリたんも鼻を鳴らしています。


 「よし、じゃあ行くか。ドラゴン!」


おや、ドラゴンちゃん。また乗せてもらえるんですね! しかし単に“ドラゴン”って呼び方だと味気ないですね……


 「ぶひぷひっ!」(兄ちゃん、そりゃあねえだろ)

 「ねえ、ラッさん、ドラゴンちゃんには名前付けてあげないんですか?」

 「こいつは俺のペットじゃねぇんだ。勝手に付けるわけには……」


ドラゴンちゃんはラスターさんの言葉を聞きながらいじけたようにガックリうな垂れています。絶対付けてもらいたがってるじゃないですか!


 「……じゃあ、そうだな……ドラゴンをもじって“ドラえごん”とか……」

 「おお、いいですな!」

 「ぷひゅい!」(良かったなぁ、お前!)

 「マズいですよ!」


しかし私の忠告が聞き入れられることはありませんでした。まあここは異世界だし多分問題ないでしょう。そう思いましょう。


そしてドラえごんに揺られること約1時間。ごんちゃんは緑鮮やかな草原地帯に着陸しました。私はこれから彼のことを“ごんちゃん”と呼びます。これは私の気持ちの問題です。


 「これからどこへ向かうんですか?」

 「この辺にスカイルーク孤児院って所がある。そこに行く」


遠くに見えてるあの白い建物のことですかね? ほほう、孤児院ですか。確かにこんな緑豊かな場所で育ったらさぞかし……えっ、孤児院?


 「ラッさん!? 嫌ですよ! お嫁さん見つけるまでは傍にいるんですから!」

 「ぷひ?!」(見損なったぞ!)

 「お前みたいなやつ預けられるか!」


なんか酷いこと言われた気がしますけどそれなら安心です! 建物に近づくと外で遊んでいた子ども達が駆け寄ってきました。元気がいいですね~


 「よっ。元気にしてたか?」


随分親しげですが、ラスターさん、ここの子達と知り合いなんですかね?


 「ラスター殿は報奨金の一部をここに寄付しているんですよ」

 「はえ~ラッさんも良いとこあるんですね!」


 「痛て! 離せ、離れろ!」


背中に乗られたり手足を引っ張られたりしてますね。楽しそうですね! 微笑ましく見つめていると、孤児院の扉が開いて白衣を着た男の人が出てきました。白衣……怪しい……


 「おお、ラスター! 来てたのか! 最近すっかり足長おじさんだったからなぁ。久しぶりに会えて嬉しいよ! まあ、積もる話もあることだし時間の許す限り……」

 「ヴァイスさん……先にこいつらどうにか……」


ラスターさんの顔がだんだん苦しそうになってきました。幼児とはいえ5人も背中にのせてたらそりゃ苦しいでしょうね……ヴァイスさんと呼ばれた男性はさっさと子ども達を抱え下ろしました。


 「ほう、そちらの女の子は新しい仲間かい?」


ゆっくり話せる場所ということで、地下室に構えられたヴァイスさんの研究室に案内されました。孤児院内で何の研究をしてるんですかね……初対面の人を疑ってかかるのは失礼ですが……なんかこの人見た目が怪しいんですよねぇ。


 「僕はヴァイスニット=スカイルーク。学者をやりながらここの運営もしている。と言っても、こっちはほとんど弟に任せっきりなんだけど……それで、君の名は?」


軽快に自己紹介を済ませて穏やかに問い直してきます。ヴァイスニット=スカイルーク? どこかで聞いたことがあるような……


 「あっ! 『いきもの図鑑』の!」

 「おぉ、知っててくれるとは光栄だね。で、そんな君の名前は?」


この図鑑を作ったのはこの人だったんですね! そんな人とお会いできるなんて光栄ですね~!


 「この図鑑楽しいから大好きです!」

 「そうかい? ありがとう。で、名前は?」


この人が作った、ってことは挿絵とかも全部自分で描いてるんですかね? せっかくすごい人に会えたわけですからいろんなお話聞きたいです!


 「挿絵とかも自分で描いてるんですか?」

 「この子全然名乗らないじゃん! おたく娘さんにどういう教育してるわけ?!」

 「娘じゃねぇわ!」


おっと、うっかり自己紹介を忘れていました! これは失礼です。ついテンションが上がってしまいました。


 「チギリって言います! よろしくどうぞ!」

 「ん、よろしい。よろしくどうぞ」


ヴァイスさんが満足げにうなずくのを見計らったように、ラスターさんが口を開きました。実は私は今日何しに来たかよく分かっていないのです。


 「今日はヴァイスさんには用ないんだ」

 「その言い方ちょっとひどくない!?」

 「クロウリーは? いないのか?」

 「クロウリーなら王都だよ。確定申告の時期だからな」


クロウリーなる人が何者かは知りませんが、ファンタジー世界の住人の口から確定申告というワードが飛び出してきたことに失望を禁じえません。どうしてこの世界はちょいちょい現実感のある設定なんですかね? そんなに私から夢を奪いたいんですか?


 「どのぐらいで戻ってくる?」

 「もうすぐ帰ってくるんじゃないか? ……ほら、帰ってくる」


言いながら散らかった机の上に不自然に置かれた白い水晶のような石を指さしました。心なしか少し光っています。と、次の瞬間その石の中から人が一人飛び出してきたではありませんか!


 「おかえり、クロウリー! 助かったよ」

 「ただいま、兄貴。おぉ、ラスター来てたんだ」

 「よっ。ちょうどよかった、お前に用があったんだ」


えぇ……どういうことですか……? どうして石の中から人が……いや、確かにファンタジーですけど急にそんなことされたら高低差でビックリするって言うか……


 「ボマード君もか。……この子は?」

 「えっ、今のどうやったんですか!?」

 「はっはっは、元気な子だなぁ。今のは俺の空間魔法だよ」


空間魔法……! 魔法の教科書に一番難しい魔法の1つだって書いてました。それをあんな風に使いこなすとは……!


 「お兄さんは一体何者ですか!?」

 「この子全然名乗らないな……うん、質問攻めの前にまず名乗ろうか?」


私ったらまたやってしまいました! いっけなーい☆


 「勇者の嫁探し担当官のチギリです!」

 「変わった肩書だな。俺はクロウリー=スカイルーク。このおじさんの弟だ」


もっと食いついてくれるかと思ったんですが軽くスルーされてしまいました。この世界では嫁探し担当官が一般的に存在しているのでしょうか?

そしてヴァイスさんも少し落ち込んだ顔をしています。オジサン呼ばわりがショックだったのでしょう。正直私もそう思っていますが……


 「いけないんだぞ、クロウリー……明日は我が身なんだぞ……」

 「そんな顔すんなよ。で?ラスターは何の用だ? あれだったら席外そうか?」

 「いや、いい。お前に用事があったんだ」

 「へぇ、お前が俺に頼みごとなんて久しいな。何だい?」


 「そいつ……チギリに魔法を教えてやってくれ」

 「ほえ?」


私にですか? そのためにわざわざこんなところまで……ちょっと申し訳ないですね。しかし私もラスターさん達のために魔法をもっと身につけないといけませんからね! 願ったり叶ったりです!


 「私からもお願いします!」

 「そんなに鼻息荒くしないでよ。ま、俺で良ければ」


クロウリーさんも快諾してくれました! やりますよ~ワンランク上の魔法使いへ、いざ!


続く!

 「ところでウリたん殿はどこへ……?」

 「ああ、あいつなら……」


 「わーい、おっきいイノシシー!」

 「ふきゅい!」(たまにはこういうのも悪かねぇな)


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