表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/147

103. どっちも果て無し

クレアのあらすじ!

私の衝撃の告白にプニさんの反応は……

 「私ですね……この世界の創造者なんですよ」

 「…………はぁ?」


クレアの告白にプニュスタージは怪訝な表情を浮かべた。またふざけているのかとも思ったが、表情は真剣そのものだった。


 「本当なの?」

 「本当です。信じてくれますか?」


見つめるクレアの目は、不安がっているようであり、同時に脅迫するようでもあった。


 「ごめん、クレア。私にはよく分からない」


クレアは悲しそうだった。プニュスタージは身がすくむ思いだったが、声を振り絞る。


 「分からないけど、君のことは信じてみたい。だから、私を信じさせて?」


曇りのない目で見つめられたクレアは、しばし逡巡した。試すつもりが、あべこべに試されることになった。そしてため息一つ。


 「しょうがないですね……ま、その内に分かることです」

 「……ありがとう」


そしてクレアは話を続ける。彼女の目的の半分、赤子の親探しと、もう片方。


 「それから私、この世界を回ってみたいと思っています」

 「それはどうして?」

 「私の力を託すに足る人物を、探すために」


「創造者」としての言葉だろうか、一人は既に見つけたという。


 「人の器の限界を考えると、12人は欲しいです」

 「じゃあ、あと11人ってことか……ちょっと親父さん」


プニュスタージは店長を呼びつけて、地図を持ってこさせる。彼女もどうせ世界を回る身、少女一人と赤子一人を連れて行くぐらい、何てことはなかった。


 「おお……正確な世界地図……!」


クレアは人類の英知に感動していた。


 「感激してるとこ悪いけど、これからの話していい?」

 「あ、はい!」

 「これから世界中回るんだけどさ、私は強さを求めて、君は後継者と親を求めて……だよね?」

 「その通りです!」


プニュスタージは地図の真ん中を指さす。


 「ここが、私たちが今いるところ、カプル王国。大陸の中央部を牛耳ってる」


次に地図の東西南北を順番に指し示す。


 「東西南北にそれぞれ大国があって、この4つがちょっと仲悪い感じ」

 「えー……」

 「小さい国もいくつかあるけど、ほとんどが4大国のどれかの傘下だね」


そして、それらの情勢を踏まえたうえで、旅程の説明をし始めた。


 「大国やその属国間の移動、これがちょっと厳しいんだ」


クレアは地図を覗き込む。


 「えっと、じゃあ例えば北の国から東の国、とかは難しいってことです?」

 「うん、そういうこと。でも完全に制限されてるわけじゃない」


プニュスタージは、北の国に置いた指を、東の国ではなく、大陸中央のカプル王国へ滑らせる。


 「このカプル王国が、4国の緩衝地帯になってる。こっち経由なら、出入りの自由度は比較的高い」

 「ということは、北→東はダメだけど、北→カプル→東ならOKってことですか?」

 「その通り。だから、まあ、まどろっこしいんだけど、いちいちここに戻ってこないといけないわけね」


クレアはうんうんと頷く。心なしか瞳が少しうるんでいるように見えた。


 「世知辛い世の中ですねぇ。人間同士で争って……こんな調子じゃ……」

 「こんな調子じゃ、何?」


クレアはしまったという顔をした。


 「何でもないですよ! へへ、善は急げです! 早く出発しましょう!」


クレアは明らかに何かを隠しているようだったが、あえて追及はしなかった。自分と同じように、彼女もまだ「信じたい」段階なのだと思ったからだ。


 「……そうだね。じゃあ行くか」

 「そうしましょう!」


二人は結局、何も注文せずに食堂を立ち去ろうとした。その二人を、食堂の主人が呼び止める。


 「……ご注文は?」

 「ごめん、勘弁! お金なくて……」


頭を下げるプニュスタージの前に、無言で皿が置かれた。


 「腹減ったまま旅に出るつもりか?」

 「でも、あの、ホントにお金払えない……」

 「どうせこの街、戻ってこなきゃいけないんだろう。お代はその時でいい」


主人は少し考えるような仕草をしてみせた。


 「俺はこの店空けらんねぇからな。代金がわりに土産話、聞かせてくれや」

 「おやっさん……!」


プニュスタージとこの主人はほぼ初対面だった。その食事は、少し塩辛かったが、今までで一番美味かったという──


こうして二人は、旅立った。心の船に、たくさんの荷物を積んで──


 「ねえ、クレア。さっき、世知辛い世の中って言っただろ?」

 「ん? はい」


東の国境の山を歩きながら、さっきの味を舌の上で思い返す。泣いてしまってまともに味わえなかった料理、もう一度行かないと失礼だ。


 「でもな、さっきの食堂のおやっさんみたいな人もいるんだよ。だからどんなに世の中が落ち込んでもさ、人の何だろう……優しさとか、そういうのって、無くならないんだと思う」


クレアは目を細めて微笑む。その表情からは喜びがにじみ出ていた。


 「……はい。そうあってほしいものです」



続く!


試練空間


 「あの……これ一万年前の話ですよね?」


 「うん、いかにもそうだが」


 「街の感じとか、今とそんなに変わってない気が……」


 「うむ、変わるものもあれば変わらんものもある。そういうことじゃ」


 「そうですか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ