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きっかけ

 

 深い深い谷がある。どこまで遠くを見据えても見えるのは谷が織りなす幾重もの闇。更には砂嵐が吹き荒れ視界などあってないようなものである。


 その地に約20人程の騎士がいた。


「お前らぁ!絶対離れるんじゃねぇぞ!火か光魔法が使えるやつはMPを惜しまずに周りを照らせ!ライトボールとフレイムスフィアだ!」


 帝国騎士団団長は周りに向けて叫ぶ。

 周りの騎士らはその指示に何の異を唱えることもなく魔法を使う。


『『『ライトボール!!』』』

『『『フレイムスフィア!!!』』』


 二つの魔法により光の球と火の球が空中に数百出来上がった。

 この魔法は一度唱えたら術者が魔力を供給していれば消えない。そして自由に操ることができる。

 よく使われる使い方は一度この魔法を唱えた後、その球で相手をけん制しつつ大きな魔法を打つための時間稼ぎだ。

 だが今はただの明かりとして宙に漂っている。


「よし、多少は周りが見えるようになった」


 先ほどまでの目の前すら視界が怪しいとゆうのは改善された。だが、魔法である限りMPが尽きるまでという時間制限がある。

 それにMPが切れてしまってはこれから先の戦闘では無力になりこちらの勝率がぐんと下がってしまう。

 もちろんそれは帝国騎士団団長は理解していた。


「お前ら!時間がない!先を急ぐぞ!」


「「「おーー!!!」」」


 騎士団は谷を下り、奥へ奥へと進む。奥へ奥へ、奥へ…


「どうゆうことだ?」


 帝国騎士団団長は異変に気付いた。

 谷をかなり下っているはずなのに斜向が変わらない。確かにとても大きな谷だがここまで斜向が変わらないのは異常なことだった。


 ざわざわ…


 帝国騎士団団長以外の騎士も異変に気付き始めたようだ。


「団長、先ほどから同じ場所を通過しています、おそらく幻術系の魔法がこの地に掛かっているか、もしくは…」


「ああ、そうだな」


 ここに来たからには当たり前のことであった。もちろん、みな戦う覚悟はできている。


「総員、戦闘準備!おそらく敵の幻術魔法に方向性を奪われている可能性がある!いつ魔族が襲ってきてもおかしくない!ディスペルを使え!」


 帝国騎士団団長の指示で補助魔法が得意なもの状態異常回復魔法、ディスペルの詠唱を始める。


『ディスペル』


 …何も変化はない。


「ダメなようだな」


「申し訳ありません…」


 人に効果がないとゆうことはこの地自体に魔法がかけられている可能性が高い。ディスペルは人には掛けられるがそれ以外には効果はないので対策ができないのだ。

 魔法も使いっぱなしでMPの消費が気になるところだ。

 時間をかけている暇はない。だが、敵が攻めてくる様子もない。


「少し周りを探索してくる、お前らは円陣を組んで周囲を警戒、何かあったら音響花火を上げてくれ」


「団長、明かり要員を連れて行かなくても大丈夫ですか?」


 騎士の一人が言う。


「ああ、俺の『才能』なら何とかなる」


「わかりましたお気をつけて」


「ああ」


 騎士団は円陣を組み周囲の警戒を始める。


 帝国騎士団団長は他の団員から少し離れて『才能』を解放した。


『身体強化っっっ!!!』


 身体能力が向上し、体が軽くなる。それと同時に視界も明るくなり、先ほどよりも遠くを見えるようになった。


「っ!!!!」


 それは目の前にいた。

 最強の才能を発動してようやく見える距離に…

 距離が遠く、暗いのも相まって顔まではよく見えないが、豊満な体つきの女がいた。


 それだけではなくコウモリの様な羽が生えている…


 目が合い、ニタァと恍惚な表情を奴は浮かべた。


『フラッシュ!』


 パァァァ


 敵に向けて明かりを放った。これで待機させている騎士たちにも敵がいることは伝わっただろう。


「行くぞ魔族!!!」


 ダンッ!


 地面の砂を力強く蹴る。

『身体強化』を使っている今の状態だと人を超越した力が出る。

 岩を砕き、風を切る。人類最強と言われる才能の一つ。


 それを思いっきり魔族の女に向けて放った。


「破っ!!!」


 すべての力を込めた最強の一撃。

 最強の『才能』を込めたパンチが女の魔族の腹を突き抜け風穴を開けた。


「ぐふぁぁぁぁぁ!!!!!」


「悪いな、呪うなら魔族に生まれてしまった自分を呪え」


『フラッシュ』


 魔族は消滅させなければならない、灰の一つすら残してはいけない。

 魔族は体そのものが魔力で出来ている。肉体とゆうのは魔力の入れ物であって本体ではない。

 実際に魔族の遺体をそのまま放置していると何年後かには必ず同じ個体の目撃報告が入る。どのような仕組み化は明らかにされていないが、魔族は消してしまわなければ復活してしまう。


 体に穴が開き動けなくなった魔族に目印の光を当てる。


「一斉攻撃!総員光に向けて魔法を打て!」


「…む?」


 いくら待っても魔法が飛んでこない。


「魔法だ!魔法を打て!おい!返事をしろ!!!」


 後ろに声をかけても返答はない。


「っ!!!ライトボールとフレイムスフィアが消えている!」


「ふふ…ふふふっ」


 むくり


 先ほど風穴を開けた魔族が起き上がる。


「貴様!俺の仲間をどうした!?」


「んっふふ、そんなの食べちゃったに決まってるじゃな~い…ふふふっ、鍛えられていておいしい魔力だったわぁ」


「このっ!」


 ズババババババ!!!!


『身体強化』の才能を駆使して魔族の腕を、足を、首をすべて落とした。


「はぁ、はぁ…どうして…」


「なんで死なないんだよ!!」


 ズチャズチャ


 落とした魔族の体の一部が独立してうねうねと一つの場所に集まっていく。


「それはねぇ…あなたのお仲間さんの魔力で回復してるからよぉ~」


「がぁぁ!!!」


 殴る、殴る。地面にはクレーターのような穴が何重にも重なりまるで隕石が落ちた跡地のようになっていた。


「はぁ、どうだ…っ、これなら起き上がれまい!」


「いたいいたい…っふふふ、お仲間さんはどうでもいいみたいねぇ?お仲間さんの魔力、どんどん消えていく、あなたが殺してるのよ?」


 ズルズルっとまた肉片が一つに集まっていく。


 殺し続ければもしくはあの魔族の魔力が尽きて殺せるかもしれない。だがその前に騎士団俺以外全員の敵として胸にこいつを刻まなければならないと思った。


「…貴様の名は何だ」


「あなたに教えて何か私にメリットがあるのかしらぁ?」


「俺の名前はルシア・ゴレウン…人類最強の称号をもつ男だ」


「騎士の礼儀ってものだったかしら?昔勇者も魔王様に向かってそんなことやっていたわねぇ」


「…名前を言え」


「でもその勇者が魔王様に名前を聞いてどうなったと思う?それがねぇ」


「もういい、殺s」


「名前を聞いてる最中に魔王様の手で殺されちゃったのよぉ~」


 ズルッ


「傑作ったらなかったわねぇ~、まさか自分も体験できるとは思わなかったけどぉ…ふふっ」


 気付けば胴体が真っ二つに分かれていた。


 ドチャァ


「それにしてもこんなカスが人類最強とかもう魔族の勝利の様なものじゃない!魔王様も喜ぶわぁ~」


「ヒュー…ヒュー…」


「あら、まだ生きているの?すごいわねぇ、それじゃあご褒美に名前のヒント上げちゃおうかしら?」


「私はねぇ~」


「………」


「魔王様直属の血が大好きなドラキュラでぇ~すぅ、じゃあ、い・た・だ・き・ま・す♡」


 じゅるぅ










 帝国騎士団精鋭部隊が祖国に帰ってくることは永遠になかった。



 この事件きっかけに、国王は勇者の召喚を決めたのであった。




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