316年2月2日 ウォーウルデン州カーレイク村にて
アーデル歴316年2月2日
既に旅立ってから8日が経過している。その間、ゆっくりと日記を書く時間すらなかった。そして、急ぐ旅ではないとは言うものの、考えていたよりもずいぶんののろまな旅となっている。と言うのも、本来使う筈だった、交易路が洪水によって寸断されてしまったためだ。荒天の中、別の道を選んでと周りをせねばならず、これだけの時間をかけて、やっと、先ほどウォーウルデンの入口と言えるカーレイクにたどり着いたのだ。
今回の旅には2等引きの荷馬車を使っている。馬一頭の身軽な旅の方が好きではあるのだが、ウンベスターにウルカルまでのついでの商用を頼まれてしまっている。売り物を運ぶ訳ではなく、ウルカルにいる商人への手紙と多少の贈り物を運ぶだけだが、馬一頭では運びきれるものでもない。ウルカルまではいたしかたないのだ。荷馬車はウルカルで売っぱらって、そのあとは馬だけで旅をすることにしよう。
ここ数日は荷台に毛布を敷いて寝ていた。今日は久々にまともなベッドでの睡眠を楽しめる。明日一日はこの町を散策するなどして、出発は明後日にしよう。どうせ急ぎの旅ではないのだ。遅れてたところで、誰が困る訳でもない。ウルカルまでの使いも日限が限られたような話でもないのだ。
カーレイクの宿は小さなもので、安宿ではあるが、部屋はそれなりに清潔だし、何より夕食は実にうまかった。カーレイクはラウクレア側からウォーウルデンを訪れる旅人なら必ず宿泊するところなので、村と言ってもそれなりの人口がある。ウォーウルデン州自体は農耕生産力が低く、とりたてて、美味な食材に恵まれた土地ではないが、ライ麦のパン、ジャガイモと鶏肉のは入ったスープ、豚肉の腸詰めにエール2杯もあれば、くたびれた旅人には十分なごちそうだ。
まだまだ、旅は始まったばかりだし、疲れ切っているわけでもないが、旅先でのあたたかい食事ほど、ありがたいものはない。
今日は疲れている。さして面白いことも書けそうにないので、ここまでとしよう。ベッドが恋しい。