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Dreamer×Dreamer  作者: 蓮華
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1P ゴミための街


 走る。走る。ただひたすらに走る。それにゴールなど無く、あるのは生きろという言葉だけ。

 ハァハァ、聞こえるのは自分の呼吸音で、喉はカラカラで腹は鳴りっぱなし。何度かの山を越え町を抜けた。ここ最近雨もなく川もない。幼い僕の体は限界で次の一歩が出る前に、先に僕の頭が地面とぶつかった。僕の意識が薄れていく中少し寂しそうな顔をした母様を見た気がした。



「お・・・・・っ、・・・と!」誰かが僕を揺さぶっている。

「お・・・ぞ!何・・・よ」嫌だ。嫌だ。もう少しこのまま夢か現かわからないこのなんとも言い難い気持ちのいい感覚のままでいたい。

「おい、今日は朝市の日だよ!早く起きなよ」起きた。僕は一瞬で目を覚ました。

「ごめん、ルーク、ありがとう、今何時かわかる? 」僕を起こしてくれた親友のルークにお礼を言いながら今日の支度をする。

「えっと・・・、短い針が・・8だから、今8時ちょっと過ぎだよ」ルークは僕の餞別の品の一つの懐中電灯を見て僕の支度を手伝ってくれた。

「わかった。よし、準備は出来た。寝坊したお詫びにたくさん土産持ってきてやるから待ってくれよなっ」僕は薄汚れたフードを深く被った。

「うん。楽しみに待っているよ。行っていらっしゃい」とルークは壁に寄りかかり杖替わりの棒を振って僕を見送ってくれた。



 僕たちが住処としていた町はデディールと言い所詮孤児や浮浪者、薬をやっている人や犯罪者など救いようがない人がたくさんいる。もはや町としての機能を持っておらず近隣の街の人からはゴミ溜めの町と呼ばれている。昔は町としての機能を持っていたそうだが、何度かの戦で破壊や再生を繰り返していく内住人はいなくなり建物は崩れ、作物は枯れていき町全体がゴミのようになってしまったらしい。僕は何日も何日も走った結果この町の近くで倒れた。そこを偶然通りかかったルークに助けられ今に至る。あの時ルークが通っていなかったら、ルークが優しい人でなかったらと考えると僕は本当に彼に感謝しなければならないと思った。彼は命の恩人だ。僕が目を覚ますと彼は残り少ない食料を僕に分けてくれた。ルークはとても優しい人物で穏やかな性格をしており年齢も15歳と僕と同じくらいということもありすぐに意気投合した。ルークはこの町のことなど色々なことを教えてくれた。その時この町は僕が逃げてきた場所からとても遠いところだと気づきここで彼とこの町で暮らしていこうと決めた。彼が色々なことを教えてくれた代わりに僕はこれから生きていくのに必要な文字や勉強を教えた。ちなみに出会ったとき食料を分けてくれたことについて、この町で生きていくにはあんまりそういうことはやらない方がいいと注意しといた。人を助けた代わりに自分が死んでしまっては元も子もない。そしてやルークはえへへと笑って、でも僕の前で死んじゃうのは後味が悪いんだもん、とかなんとか言っていた。だもんじゃないよ全く。まぁ彼のおかげで生き延びることができたのだからあまり強くは言えなかった。

 僕たちがこの町で生きていくのに最重要項目は食料の調達だった。住処の方はもともとルークが暮らしていた橋の下で暮らすことになったがこの町で食料を調達するのはとても大変だった。この町の調達手段は隣町まで行き買ってくるか盗むかのどちらかだ。ただ前者の人はほとんどいない。だいたいの人は市場から盗んでいくが、その途中で取ったり取られたりしていくからこの町は弱肉強食の世界だ。1年くらい前に僕とルーク二人でとある町に盗みに行った帰り2mくらいありそうな男と鉢合わせてしまい食べ物は取られるわ殴られるわで最悪だった。しかもその時打ちどころが悪かったのかルークの右足が使い物にならなくなってしまった。全くもって散々だった。以降調達は僕一人で行くようになった。以前より慎重に行かなければならない。僕が動けなくなってしまったらそのまま二人とも餓死してしまう。それだけは絶対に避けなければならない。


 デディールからこの町へは走って1時間くらいかかる。町へ入ると色々な人の賑わう声が聞こえた。僕は裏路地に入りフッーと息を整えてフードを深る被り直し今日も無事に帰れますようにと祈って光差す広場へと出ていった。


 最近ルークの調子が悪そうだったから果物とか体にいいものを取ってきてあげたいな、なんてこれから起こることも知らずに僕はどれを取ろうかなんて考えていた。





 

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