プロローグ
「ちょ、もう悠之!!そこ突っ走たらだめだって!あぁもう!」
とある少年の声が静かな空間に響いた。
少年の先に走っているのは悠之と呼ばれた少年が走っている。表情はマスクに覆われて見えないが目元は真剣な表情そのものだった。
「月希、急がないと凜がここから消えてしまう!」
悠之はどこからか刀を取り出し壁を切り裂く。月希と呼ばれる少年も悠之の隣に追いつく。
「悠之って真剣になると周り見えないよね。」
月希は一言それを言い、悠之と同じ方向を向く。二人の目の前の後継はたくさんの黒い服に身を包み、そして顔を悠之と同じようにマスクで隠している人たちが大勢いた。
「悠之、最近君みたいにマスクつけることって流行っているの?」
「さぁ、それは俺にはわからないな。」
二人の話している口調は普段の話口調だが、表情は殺気を纏っている。
すると黒い服に身を包んだ男性1人が一歩前に出た。
「あなたたちは死にたいのですか?」
そう言うと、黒い服に身を包んだ男性は悠之と同じような刀を取り出した。
「フンっ、死にたい?馬鹿じゃねーの?もう僕ら死んでいますけど、なに君たちはそんなのも知らずにのこのこここにいるってわけ?」
月希は馬鹿にするような口調で向こう側にいる黒い服に身を包んだ男性に言う。月希の言うセリフに悠之が反応し、月希の体を手で遮る。
「やめとけ、それをアイツらに言っても無駄だ」
「悠之……」
「最後のお話は終わりましたか?終わってないにしても私達はここであなたがたを殺します。」
黒い服に身を包んだ男性の1人が悠之らに切りかかってくる。それを見ていた他の黒い服に身を包んだ者たちも次々に切りかかってくる。
「悠之!どうする?この数でいけるか?」
「いけるだろ。こいつら如きに負けたらおかしい」
悠之は敵の1人が切りかかってきたところを、隙の空いている足に蹴りを入れそして己が持っていた刀を敵のひとりのお腹にぶっ刺した。
「グァァァァァ」
当たり前だが断末魔の叫びが響き渡る。
「容赦ないですね。あなた」
「戦いに容赦なんているか?」
次々に悠之は敵を切り裂いていく。月希も同様にどこからか拳銃を取り出し悠之のサポートをしている。
「あなたたちはなにを知っている?私達よりも【ここ】のことを理解している」
黒い服に身を包んだ男性は悠之に刀を向け問いかける。
「さぁな、でも少なからずお前らよりは【ここ】のことを理解している。ちなみにお前は俺に切られる運命だ」
悠之の目が変わる。それは憎しみを持つ目だ。その瞬間悠之は黒い服に身を包んだ男性を切り裂いてしまう。真っ二つになる勢いだ。
「悠之、さすがにそこまでしなくても……」
「そこまで?まだ足りない。アイツの痛みには程遠い」
月希は悠之を咎めるが、悠之は聞こうとしない。また月希を置いてどんどん先に進んでいく。
「どんだけあの子のこと好きなのさ。まぁいいけど……あ、悠之。そのマスクについた返り血どうにかしなよ、怖がられるよ」
月希が言うと、悠之は慌ててマスクを外し、どこからか出した綺麗なマスクをつけた。
「一体何個ストック持っているんだ?」
月希は一つの疑問を抱えつつ悠之の後を追いかける。
しばらく歩き続けていると外は暗くなる。悠之はふと止まり、休憩にするか?と言う。月希はもちろんうなづいた。
そして寝床にちょうどいい場所を見つけ寝袋を取り出したとき悠之は口を開いた。
「どうしてあの時俺はアイツを助けられなかったのか……」
独り言のように声はか細く、でもどこかに悔しさの混じった強い口調にも聞こえた。
「それは僕にもわからない。あの時の悠之も充分に強かったはずなのにね」
「過去が憎い。だが、過去よりもここの世界が憎い」
悠之は身近にあった木の枝を掴みそして投げる。月希はそれを見てどう思ったのかわからない。
だけど、月希はふと笑顔になる。
「そうだね。ここの世界は死後の世界だからね」
そうだここは死後の世界なのだ。