2章第1話 動き
ガー……とレンタカーショップの自動ドアが開く。
女性店員が気付き、声をかけた。
「いらっしゃいませー」
銀髪を短くした色白の男と、金髪をオールバックにした浅黒い男の2人が店に入り、カウンターに座る。
銀髪の男が口を開く。
「車を借りたいんですけど…」
「はい、車両はもうお決まりでしょうか?」
「いえ、まだなんですが…」
でしたらこちらからお選び下さい、と、女性店員らカウンターの引き出しから1枚のシートを取り出す。
この店舗で借りられる車両の一覧の様だ。
2人の男は悩んだ結果、セダンとバンを借りた。
「期限は如何致しましょう」
「4日間でお願いします」
銀髪が答える。
女性店員は「観光ですか?」と問いかけ金髪が「えぇ、まぁ」と笑いながら返した。
「それではこちらの書類の事項を良くお読みになってからサインをお願いします」
2人は書類を読み、銀髪の方がロード・ルイズ、金髪の方がダニエル・ジーンと書類にサインをした。
更に様々な規定を説明した後、コピーを取る様に事務所に居た店員に声をかけてから。
「ありがとうございます、では、お車の方へご案内させて頂きます」
とカウンターを立ち、駐車場に向かった。鍵と車を受け取り、駐車場から出す。出口付近で女性店員が「観光楽しんで下さいね」と笑いかけた。
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グルーバキア連邦 サラム
山に向けて走る2台の乗用車があった。2台とも、この国ではよく見かけるセダンとバンだ。山に向かう2台を誰も不思議がる事無くすれ違って行く。
山の中の崖の近くに車を停め、それぞれの車から降りてきた2人の男が居た、銀髪で色白の男と金髪で浅黒い男。
2人は藪の中からバラキューダ(偽装ネット)を三重程に被せ、上にも被せた。その崖に被さる蔓状の植物を掻き分けると、洞窟が現れた、そのまま洞窟の奥へ消えていく2人。
銀髪の方-エドワーズ・スコットが言う。
「こんな辺境で任務とはな……」
それに金髪の方-デリック・ハートマンが応える。
「活動地はここじゃねぇよ、ま、上からの命令なんだから仕方ねぇじゃん」
デリックは前回の戦闘で負傷したが、弾が抜けていた事と傷が軽かった事などの幸運が重なり、部隊に復帰出来た。
洞窟を2度程に曲がると、数個のLEDランタンで照らされた6坪程の空間があった、そこに14人の男が居た。
洞窟の男達の目が一斉に動き、入り口付近の男達は銃を向けかけ、下ろした。
「おかえり」
「セダンとバンだ、1番目立ちにくい」
エドワーズはそういってスーツから黒いタクティカルスーツに着替える。壁にもたれて手を掛けたのは-レミントンACRだ。
あと3日だ、3日でここを出発する、と作戦内容を思い出し、目を閉じた。
レミントンACR
レミントン社が生産しているMAGPU MASADAの軍用モデル。
ポリマーフレーム構造で見た目は良く言えば先進的、悪く言えば玩具っぽい。
しかし、作動信頼性は高く、「強い衝撃」「泥につける」「塩につける」「凍らせる」「砂塵に埋める」などの過酷な環境に置いた上で射撃を行うというテストを行い、基準値をクリアしている。
使用弾薬は5.56×45mmNATO弾の他、6.8×43SPC弾もバレルを交換する事によって使用可能。
ピカティニーレールを上面、側面、下面に装備し、様々なアクセサリーを搭載可能である。