7章第3話 第2空挺旅団
さて、もう一つの作戦が実行中である事を忘れてはならない。
F-15EJストライクイーグル、F-15Cの戦闘爆撃型で、ヨルジア空軍向けの改修仕様だ。
本家F-15Eからの変更点は、SLAMの運用能力やアクティブフェイズドアレイレーダーの搭載、AGM-84ハープーンやASM-2シーバスターなどの空対艦ミサイルの運用能力付与である。
世界最高峰の空戦能力に、戦闘爆撃機としては最大級の兵装搭載能力、腕のあるパイロットとWSOが搭乗すれば、「建物に爆弾を命中させるのでは無く、建物の窓に爆弾を放り込む」曲芸じみた爆撃が可能な投下精度。
そんな戦闘爆撃機が4機、間隔を広く取ったエシュロン編隊で飛行している。
間隔を広く取るのは、対空火器に一度に複数機を狙われるのを防ぐ為だ。
この編隊の任務は兵器製造工場に向かったF-2と同じく、対空火器の始末と地上部隊の支援である。
リドリス奥地の渓谷内に存在する敵の弾薬庫は、谷に坑道を穿ち、その中に弾薬を備蓄している。
場合によっては坑道を丸ごと破壊する必要がある為、F-15EJにはGBU-28と呼ばれるバンカーバスターが搭載されている。
彼らの垂直尾翼にあしらえられたエンブレムは、下向きにクロスした2本の槍だ。
『ランサー01より各機へ。目標確認 地対空ミサイルと対空砲に注意。全兵装使用自由。ブレイク!』
手筈通り、2機で1組になり散開。渓谷に沿って地形追随飛行を行っていた4機のF-15EJが谷を飛び出し、高度を上げる。
瞬間、コックピットの中でSAMの照準を報せるアラームか鳴り響く。
ミサイルを躱す為にチャフとフレアを撒いて急旋回、ミサイルに対して100度以上の角度をつけて躱す。
グラスファイバーにアルミ塗膜を付けたチャフは無事敵のレーダーに雲を作り、F-15EJがその雲の中に入るとミサイルは目標を見失ってあらぬ方向へと飛んで行った。
高度を上げて機体を安定させる。旋回しつつ、後部座席に乗る兵装システム士官がAAQ-33スナイパーXR目標指示ポッドで、SAMをマークする。
『目標マークした』
『Roger. Drop ready……Bombs away』
コンフォーマル燃料タンクに増設されたパイロンに搭載されているEGBU-12能力向上型ペイブウェイが1発投下された。
弾薬庫に配備されている対空火器は16基あり、コールチクの様にミサイルと機関砲がセットになっており、自動迎撃では無くトリガーは制御される形だ。
そんな厳重な防空網の1角に、1発の500ポンドレーザー誘導爆弾が命中した。
誤差数センチで命中した爆弾は正確に対空砲を破壊する。
気付いた他の対空砲が上空に向けて射撃するが、弾体の小さなEGBU-12にはなかなか当たらない。
『命中!』
『次弾投下する、レーザーを照射しろ。Drop ready……Bombs away』
2発目のEGBU-12が投下される、着弾まで12秒を切った所で、AAQ-33スナイパー目標指示ポッドから誘導用レーザーを照射した。
EGBU-12がカウントダウンと共に急降下していき______直撃した。
『ヒューッ!』
『命中だ』
パイロットは口笛を吹き、兵装システム士官は命中した事を告げる。
AAQ-33の目標が表示される多機能表示パネルには、対空砲が爆散する様子も見えた。
F-15EJの高い爆弾投下精度は前述の通りだ。
1度目の爆撃で開けた穴に爆弾を放り込んだり、地下施設への通気孔に投下してそこから地下施設を破壊したりと通常ではあり得ない様な精度で爆弾を投下出来る。
しかも、搭載兵装の種類・量共に豊富だ。
レーザー誘導爆弾、JDAM、滑空爆弾、ミサイル、ヨルジア空軍が保有する航空用弾薬の殆どを搭載する事が出来る上、攻撃最大装備では第2次大戦に使用されたB-29超空の要塞より2t多い11tなのだ。
ランサー01は搭載しているEGBU-12の残り2発を無事に投下、担当範囲にあった地対空ミサイル及び対空砲を全て破壊した。
『ランサー01より各機へ、状況報告』
『ランサー02、対空砲を全て破壊した』
『ランサー03、同じく』
『04』
どうやら全機が担当範囲の対空砲火を全て潰した様だ。
『了解、残存対空火器に注意しつつ空中哨戒待機に移行、輸送機を護るぞ』
『02、Roger』
『03』
『04』
対空火器への爆撃を終えた4機のF-15EJストライクイーグルの編隊は2機1組に分かれ、弾薬庫上空を旋回して敵の新たな対空火器と戦闘機を警戒する。
F-15EJに続いて空域に侵入して来たのは______C-17ER大型輸送機2機である。
===========================
「1番機用意……行くぞ!」
「「「「応!」」」」
「行くぞ!」
「「「「応!」」」」
「立てー!」
輸送機の機内、貨物室に轟々と響く音を乗り越えて、降下指揮官が叫ぶ。
1機につき2個小隊、2機で1個中隊の兵員が搭乗している。
隊員達の手にはFN SCAR-L Mk16やFN M249MINIMIpara。被っているヘルメットはAirframeという後頭部の通気孔が特徴のヘルメット、プレートキャリアもJPCという空挺部隊のモデルだ。
彼らはヨルジア陸軍第2空挺旅団。
ヘリや固定翼機からの空挺降下を得意とする部隊で、軽快な足取りで機動戦を行うヨルジア軍のQRFの一端を担う強力な部隊だ。
そんな彼らの18番である空挺降下で、電撃的に弾薬庫を強襲する。それが本作戦の要である。
隊員達は立ち上がり、スタティック・ラインに沿って機体側部のドアに寄る。
ラインには彼らが背負っているパラシュートバッグから伸びたケーブルのフックが引っかかっていて、隊員達はケーブルを持ち、ドアの近くに移動した。
高度300m、輸送機の速度は250km/h程の低速。
C-17ERはフラップを目一杯下げ、揚力を得ようとしている。
機内は轟音、飛び出せばまた別の轟音が響く事だろう。
降下するのは、小隊4つで構成された1個中達、渓谷の内部に存在する弾薬庫を、四角形の頂点に立つ様に降下して包囲。
周辺へと弾薬庫を輸送していく河川港がある。そこを制圧し、弾薬の輸送を止める事。
更に小隊から部隊を割り当て、坑道内部を制圧、重要な情報を奪う。
今回の空挺旅団の仕事は以上である。
『ダッシュ01、コース良し、降下用意!』
降下指揮官が側面のドアを開ける、暗い機内に慣れていた機内に光が差し込む。
ドアの向こうは、流れていく渓谷と山肌の風景。
ドアの近くのランプが、赤から緑に変わる。
『降下用意……降下降下降下!』
降下指揮官はドアを指しながらそう叫び、空挺隊員達はそのドアから飛び出した。
同時にケーブルが引かれ、C-17ERから飛ぶのと同時にパラシュートが開く。
開いたときに瞬間的にかなりのGが掛かったが、落ち着けばそれも無くなる。
2機から降下した空挺隊員の数はおよそ200人。人数分のT-10パラシュートが空中で花開いた。
河川港を包囲する様に、第2空挺旅団の各小隊が降下する。
大掛かりな対空砲や対空ミサイルの類は既にF-15EJによって殲滅され、イグラやストレラの様な携行地対空ミサイルが発射されるも、強力な赤外線パルスジャマーによってシーカーが焼かれ、あるいはフレアに惑わされてあらぬ方向へと飛び去っていく。
こうして2機のC-17ERグローブマスターⅢは無事に戦闘空域から離脱した。
空挺旅団の落下傘は、各小隊の兵士を無事に降下させ、役目を終えた。
第2空挺旅団のアキラ・タカナシ准尉はLZⅡと呼ばれる河川港に降下し、降り立った隊員と共に装備を整える。
パラシュートを切り離し、戦闘用の装備を整える。
身体に括り付けていたFN SCAR-L Mk16の銃床を展開し、光学照準器のスイッチを入れた。
「准尉!そちらを頼むぞ!」
「了解!」
小隊長を務める中尉がそう言葉を投げる。
小隊長率いる2個分隊はこのまま河川港へ向かい制圧、アキラ准尉の分隊は坑道に存在する弾薬庫を捜索する。
上空では、OA-10がスモーク用ロケットを放ちながらF-15EJに爆撃目標の指示を出している。
F-15EJはそれに向けてレーザーを照射、EGBU-24ペイブウェイⅢを投下して施設や舟艇を破壊していく。
空挺部隊は、そこへ向けて進行し始めた。
この作戦が、テロ組織の継戦能力を剥奪すると願って。




