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7章第2話 侵入〜工場side〜

今回の作戦は2つを同時に進行する。

兵器製造工場の強襲と、敵の弾薬庫の強襲だ。


兵器製造工場の強襲は"コールドスチール"のヘリに乗った第3レンジャー連隊が、弾薬庫はガルシア島から離陸したC-17ERに乗った第2空挺旅団が行う。


しかし、敵の航空戦力の脅威が完全に消えた訳では無い、特に兵器製造工場には、輸送機を離着陸させる用の滑走路が偵察衛星により確認されている。


その兵器製造工場を強襲するのは、CV-22BオスプレイとMH-47GチヌークやMH-60Mブラックホーク、MH-6Mリトルバードに分乗した第3レンジャー連隊だ。


OPERATION GONG以降特殊戦の重要度が増し、特殊戦と通常戦に切り替えられる柔軟な運用が可能なレンジャー部隊の需要が増した為、部隊規模が拡張されたのだ。


エドワーズ軍曹は、そうしたレンジャーの1人、だが、本当は違う。

エドワーズ、デリック、エイミーの3人は、陸軍特殊部隊"シルバー・アローズ"から出向している身なのだ。


陸軍特殊部隊からレンジャー部隊に出向するのは珍しくは無いが、基本的にそれは教官や指揮官としてが多い。

こうしてレンジャーの戦闘員としての出向は稀だという。


エドワーズ軍曹は低空を高速で飛ぶMH-60Mブラックホークの安全ワイヤーに捕まってキャビンの縁に腰掛けており、外を見つめている。


……あの先に、テロ組織の兵器製造工場がある、奴らはあそこを失えば、更に勢力は衰えるだろう。


そう思い、切り揃えた銀髪の隙間から兵器製造工場の方面を睨みつけた。


===========================


『敵機接近、攻撃隊に向かって進行中』


AWACSであるE-767(エターナル)からの通信が入る。

どうやら敵さんが気付き、迎撃機を飛ばしたらしい。


F-35Aの先進アビオニクスの1つに組み込まれている合成開口レーダーで敵機を調べる。

F-35Aに搭載されているAESAレーダーは更に進化しており、正面を向いていない機首の判別も可能だ。


『敵機機数4、類似機、Su-33』


『了解、この距離から撃ちましょう』


『そうだな、AMRAAM発射準備』


アルヴィン大尉はそう言うと、レーダー上の敵機を"マーク"、データリンクを通じて、敵機を効率良く撃破出来る様に味方機と照準を被らせない様にする。


『ジャスティス01、FOX3!』


『ジャスティス02、FOX3ぃ!』


『ジャスティス03、FOX3!』


『ジャスティス04、FOX3!』


4機のF-35Aが2発ずつ、計8発のAIM-120D AMRAAMを発射。

機体から下に打ち出されたミサイルは空中でロケットモーターに点火、あっという間に加速して見えなくなる。


接近を感知したのか、4機のSu-33とみられる迎撃機は散開して回避行動をとる。


そして40km以上の距離を詰め______マーク・インターセプト。

AMRAAMの命中弾は、"無し"


『全弾回避しやがったのか……⁉︎』


『敵機来ます!』


クラーラ……"ライズ"がそう言う。

4機のF-35Aが雲の層を抜けると、敵機がはっきりと見えた。


水平尾翼、主翼、カナード翼の3サーフェイスだが、何かがおかしい、アルヴィンは違和感を感じた。


Su-33より若干テールブームが長く、垂直尾翼の先端が水平。

そしてSu-33の様に洋上での活動を主眼とした洋上迷彩では無く、地上用の迷彩を纏っている。


Su-33(フランカーD)じゃない!Su-37(ターミネーター)だ!各機注意を払え!』


Su-37、フランカーE2やフランカーFなどとも呼ばれるが、"ターミネーター"との呼ばれる方が多い。


マリナロス連邦でT-50 PAK FAの計画の前に開発が進められていた機体で、クルビットを初めて可能にした機体でもある。


実戦配備される事なく、計画はPAK FAの為に凍結されたが、今目の前にいる戦闘機は間違いなくSu-37ターミネーターだ。


高度を下げるアルヴィン達と、高度を上げようと上昇するSu-37ターミネーターとすれ違う。


大型機には信じられない様な鋭い機動を行い、後ろに喰らいつこうとしてくる。カナード翼が追加され、推力偏向ノズルが装備された事で、今までの航空機では考えられない機動が可能となっている。


『くっそ……』


アルヴィンの機体は早速食い付かれ、既に1機、背後にSu-37がいる状況だ。


早速背面で降下、スパイラル・ダイブをかける。

状況不利をひっくり返す事が出来るが、機体にもパイロットにも大きな負荷のかかる諸刃の剣だ。


何とかといった風に背後を取り返し、サイドスティックになっている操縦桿の引き金を引く。

GAU-22/A 25mmガトリング機関砲が火を吹き、高威力の25mm機関砲弾を吐き出していく。


機関砲の砲弾は左翼からエンジンにかけて命中し、左の主翼を噛み砕いてエンジンを吹き飛ばした。


一方、クラーラ少尉はと言えば、後ろをとったSu-37に対して、後ろを取り返そうとはしていない。


何故なら、このF-35Aの先進アビオニクスを駆使すれば、Su-37から後ろを取り返す必要すらないからだ。


クラーラはJHMCSのシステムを活用、ミサイルの照準をHMDバイザーに連動させる。


機体を左に旋回させ、後ろを向いてSu-37を視界に収める。

HMDバイザーでは、Su-37を囲むボックスを視界の中心の大きなサークルに入れ、2秒その状態を維持する。


ピープ音が鳴り響き、中の小さなサークルがボックスに重なる。


『FOX2!』


ウェポン・ベイからAIM-9Xサイドワインダーが飛び出し、前方に向かって飛翔……と思った矢先に急激に上昇して向きを変え、そのまま"F-35Aの背後にいるSu-37"に突き刺さって爆散させた。


F-35に備えられた最新のアビオニクスを駆使すれば、敵の背後を取る事無く、敵を撃墜する事も出来るのだ。

ジャスティス03と04も同様に、この最新アビオニクスとF-16並みの高い機動性を駆使してSu-37を全機撃墜した。


その隙間を縫って、F-2Jが兵器製造工場へと低空で接近していた。


===========================



兵器製造工場は、強固な防空陣地が構成されている。

そこにヘリで突っ込むのは自殺行為なので、事前に対空火器を掃除しておく必要がある。


弾道ミサイル基地を攻撃した時は対空ミサイルによって攻撃出来ない特殊部隊が対空火器を掃除したが、今回は違う。


F-2Jは、ヨルジアが開発したF-2Aの機材をSEAD任務に対応させた新型機で、搭載量と機動力を生かした"対空ミサイル狩り"に特化したタイプだ。


今回の任務に合わせて、AGM-88E AARGMとAGM-65H マーベリック空対地ミサイル、そして自衛用にAIM-120DとAAM-3を各2発ずつ搭載している。


そのF-2Jが4機、"ブリッツ隊"が、地形追従飛行で兵器製造工場に接近していた。

渓谷の先に広がる盆地に、その工場は存在する。


先頭を飛ぶのは、アツシ・カワシマ大尉だ。

開戦の際にも、数多の防空陣地を無力化する戦果を挙げたベテランである。


『さぁ敵地だ!気合い入れろ!』


『Roger』

『Roger』

『Roger』


『マスターアーム・オン、異常無し!』


マスターアーム・スイッチを入れ、兵装に異常が無いか確認、ここからが戦場だ。


風防(キャノピー)の外を猛スピードで流れていく崖、だがそれももう直ぐ終わりが近付いている。


目の前が開ける、同時にコックピットに飛び込んで来たのは、ミサイル警報だった。


2機1組(エレメント)になれ!ブレイク!』


『Roger』


命令とほぼ同時に4機のF-2Jが散開、2機1組になってSAMの照準から回避する。


『SAMは情報通り8基、残りはAAA(対空機関砲)だ!ヘリ部隊の為に狩り尽くすぞ!』


『Roger』


左翼側を飛ぶ2番機にそう声をかけ、右旋回から操縦桿を捻って左旋回へ。

発射される対空ミサイルを躱し、機首をそちらへと向ける。


9K37M1-2(SA-17)ブーク(グリズリー)地対空ミサイルシステムだ。


この最新のミサイルシステムに挑む4機のF-2J、通常の航空機であれば回避機動を取った後で後退するかとっとと通過するかの対応をとるが、F-2Jは凶暴なイタチ(ワイルド・ウィーゼル)、迷う事無くSAMに向かって突っ込んでいく。


H(HARM)T(ターゲティング)S(システム)を使ってミサイルの照準レーダーを捉える……捕捉した。


ミサイルの照準レーダーが作動している内に……!


『ブリッツ01、MUGNUM(マグナム)


宣言(コール)し、操縦桿のミサイル発射ボタンを押した。

翼の下から、AGM-88E AARGM対レーダー高速ミサイルが発射された。


SEAD任務ではもっと遠距離から地対空ミサイルのレーダーを捉えてHARMやAARGMの様な対レーダーミサイルを叩き込むが、今回の防空網は想像以上に近い。射程距離で言うならばAGM-45シュライクでも足りるくらいだ。


しかしそれでもAARGMは正確に作動し、9K37M1-2(SA-17)|"ブーク"《グリズリー》のミサイル誘導車輌に突き刺さり、66kg以上の弾頭を炸裂させて完全に破壊する。


そしてトドメに、レーダーという"目"を失ったミサイル発射機に接近して機銃掃射をかける。


失明したミサイルは近付いてもピクリとも反応しない。

操縦桿のトリガーを引き、コックピット後方左弦にある20mm M61A2機関砲(バルカン砲)を地上に向かって射撃、発射機に搭載されていたミサイルの弾体をズタズタに引き裂いた。


弾頭に命中したのか、ミサイルが地上で爆発する。


低空を右に旋回、見回してみると、ウィングマンもAGM-88を発射し、地対空ミサイル(SAM)サイトを潰していた。


作戦がもっと大規模になれば、ここにEA-18GJやEP-1などの電子戦機が加わるのだが、今回は作戦自体の規模は小さい。


F-2Jの4機編隊だけで、可能な限り潰していくのだ。


少し遠くに見える兵器製造工場の高い煙突。

あの工場に進入するヘリ部隊の為に、その付近の邪魔になるSAMサイトをミサイルで爆撃、徹底的に破壊する。


コックピットの中を満たすミサイル警報、チャフとフレアを撒いて回避機動を取る。


ミサイルを躱している内にウィングマン機がAGM-88Eを発射、ミサイル警報が止み、ミサイルは目標を見失ってあらぬ方向へと飛んでいき自爆した。


『助かった!』


『そりゃ良かったです』


低空を旋回、再びHTSがレーダー波を捉える。

重なるようにレーダー警報、ミサイルに照準されているのだ。


操縦桿を操り、HTSで目標を捉える。


MUGNUM(マグナム)!』


操縦桿のボタンを押し、2発目のAGM-88Eが翼下から発射された。

ミサイルはあっという間にマッハ4に達し、ミサイルのレーダーに到達、射撃指揮車両を爆散させる。


同時にあれだけけたたましく鳴り響いていた警報が鳴り止み、ミサイルの弾体は目標を見失って自爆した。


『こちらブリッツ01(ワン)、ターゲット沈黙!』


『こちら02(ツー)、同じく』


03(スリー)、全てのターゲットを破壊した!』


04(フォー)、こちらもだ』


どうやら、この地区のSAMを狩り尽くしたらしい。

次の獲物はAAガン______対空機関砲と、近距離の防空を担うミサイルシステムだ。


『こちらメイス01(ワン)、俺達も加わろう』


編隊を組み直すと、4機のA-10Cが後方から接近して来た。

世界最強の攻撃機と名高いA-10Cが加われば、地上部隊も安心して戦闘を行える。


『Roger、目標は近SAMとAAガンだ。全部潰してヘリが安全に降下出来る様にしよう』


『Roger、やってやる。行くぞお前ら!』


『応!』


右旋回で降下して行く4機のA-10C。

狙いは近距離防空を担う9K35ストレラ-10______NATOコードは、SA-13"ゴファー"______と、2K22ツングースカ自走高射砲。


『メイス01(ワン)Rifle(ライフル)!』


コールと同時に操縦桿の赤いボタンを押す。

主翼の下の3連レールランチャーに装備されているAGM-65Hマーベリック空対地ミサイルが発射された。


20kmもの射程を持つこの空対地ミサイルは、近SAMや対空機関砲程度なら、その射程外から攻撃が可能だ。


他の4機もAGM-65Hを発射し、基地の守備を固めている高射部隊を続々と潰していく。


もはやA-10に喰らい付こうとする敵機の存在は無い。

A-10は存分に"狩り"を楽しみ、そして破壊した。


1機のA-10Cが近SAMに機首を向ける。

その直後、機体が煙に包まれ、近SAMの車輌が蜂の巣になった。


A-10Cが誇る最強の機関砲、GAU-8が火を噴いたのだ。

4km先から戦車を引き裂く砲弾を撃ち出すこの機関砲の前に、近SAM車輌程度の装甲など紙に等しい。


全ての対空兵器が掃除されるまで時間は掛からず、兵器製造工場の防空網にヘリ部隊が侵入するのには十分過ぎる程の大穴が空いた。

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