6章第9話 艦砲射撃
1発目が各艦から発射され、それ以降の発砲は無い。
『こちらスラッガー3、弾着まで10秒』
上空を飛行する第2空母航空団のF-35Cが"しおじ"CICへ観測結果を映像で送ってくる。
F-35はこの様に優れたセンサーによって偵察機の真似事も出来るのが強みだ。
『8……7……6……5……4……3……弾着、今!』
次の瞬間に届いたのは、砲弾が一斉に着弾して地面が爆ぜる映像だった。
『初弾命中、効力射、可能です』
「各艦、一斉撃ち方!」
ロケット砲陣地に砲弾が命中した事で破壊されるBM-21、しかし破壊出来たのは僅かに2両で、残った大半のBM-21は陣地転換しようと動き出す。
その前に、再度艦砲射撃が襲う。
"しおじ"の155mmAGSと共に、5インチ砲や76mm砲などが絶え間無く砲弾を撃ち出していく。
艦載砲の役割が対水上から対空へと移り変わり、口径も3インチや5インチなど小口径化が進んでも、"対地艦砲射撃支援"というのは水上艦の大切な役割の1つだ。
イージス艦や他の駆逐艦の5インチ単装砲は砲弾を撃つ度に薬莢を甲板上に吐き出し、"ありあけ"、"あさやけ"に装備されているステルス砲塔の62口径76mm単装速射砲は毎分120発の発射速度で狂った様に砲弾を撃っていく。
"しおじ"の155mmAGSも、1発目を撃つ毎に砲身を垂直にして排莢と再装填を繰り返し、砲撃を繰り返す。
そして砲弾が飛翔する時間をおいて______着弾する。
絶え間無く着弾する76mm、127mm、155mmの砲弾の爆風と破片が、ロケット砲陣地を蹂躙する。
27ktで整列しながら航行する水上艦は、正確に目標に砲弾を送り込む。
そして、スラッガー3の映像の中で、まだまだ砲弾の雨が止まない大半のロケット砲と対空兵器が撃破されたロケット砲陣地______"元"陣地と言った方が良いだろう______が、土煙と黒煙の中から現れた。
「全艦、撃ち方止め、撃ち方止め」
"しおじ"の砲雷長は全艦に射撃中止を伝達すると、各艦からの発砲が止む。
艦砲射撃は十分な戦果を上げたと言えるだろう。
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「航空隊、発艦始め」
強襲揚陸艦"きたかみ"CDCに居る揚陸艦航空団の団長は冷静のままに命じた。
強襲揚陸艦で待機任務中、弾薬燃料の補給作業中だった航空隊に発艦命令が下される。
2機のAV-8BJ+ハリアーⅡが風上へ全力航行する"きたかみ"と"しおじ"の甲板を蹴って飛び立つ。
『バロメ2-1、こちら"きたかみ"CDC。方位3-4-0、敵のロケット砲の残りを仕留めろ』
『バロメ2-1、了解』
発艦した4機のAV-8BJ+ハリアーⅡは指定された方角に向かって飛ぶ。
ハリアーの搭載しているペガサス105エンジンはその構造故、超音速飛行には向かないが、近接航空支援を主とするハリアーはそれは大きな問題では無く、むしろ利点に働く。
海岸線を超える寸前に炎を上げる敵のロケット陣地が見えてきた。
敵の手前で操縦桿を引き、機体をホップアップさせる。
続いて流れる様に若干の降下姿勢を取り、兵装選択スイッチを操作して127mmロケット弾を呼び出してHUDの照準線に敵を合わせる。
『バロメ2-1、ロケット発射!』
操縦桿のボタンを押すと、AV-8BJ+ハリアーⅡの主翼下のロケット弾ポッドから127mmロケット弾が斉射される。
ロケット弾は火を吹きながらグングン加速し、地面に突き刺さるなり爆発を引き起こす。
4機のAV-8BJ+ハリアーⅡによる波状ロケット弾攻撃により、ロケット砲陣地は完全に耕された。
『バロメ各機へ、残党狩りだ。2-3、エレメントで方位2-8-7に向かえ』
『バロメ2-3、Roger』
『バロメ2-4、Roger』
4機編隊のリーダーがそう言うと、編隊が分かれて2つの2機編隊を組んで旋回する。
バロメ2-1のパイロットはスラッガー3からの情報を頼りに高度を上げ、逃げ出したロケット車輌を探す。
『バロメ2-1、目標視認。攻撃する、2-2、着いてこい』
『Roger』
背面で降下しつつ射撃姿勢、若干の機首下げで敵車輌に突進していく。
3輌のロケット弾発射車輌が北西に向かって逃走中だ。
シーカー・オープン。
AGM-65G、スタンバイ。
『バロメ2-1、RIFLE』
『バロメ2-2、RIFLE』
狙うは先頭車輌と最後尾車輌。赤外線画像シーカーが目標を探知し、操縦桿のボタンを押した。
白い煙を曳いて2機の翼下から放たれる2発のミサイルは、徐々に加速していく。
そして狙い通り、先頭車輌と最後尾の車輌に食いついた。
重量136kgの成形炸薬弾頭を搭載したミサイルが突き刺さり、車輌を燃え盛るスクラップに変えるのはまだ良い。
挟まれる様に走っていた車輌には未発射のロケット弾が残されていたらしく、誘爆を引き起こして車列は文字通り全滅した。
『拍子抜けだな……』
『艦砲射撃で対空火器は殲滅しましたからね、2-3と合流して帰投しましょう』
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一方分かれた2-3も、ロケット車輌4両で構成された逃走する車列を捉えていた。
緩い降下姿勢を取り、HUDのガン・レティクルにターゲットを合わせる。
操縦桿についている安全装置を解除すると、操縦桿の上に赤いフラッグが飛び出す。
セーフティ解除の目印だ。
そして狙いを定め、コールと共に引金を引く。
『バロメ2-3、GunsGunsGuns!』
______ブヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!
機体下部に取り付けられたGAU-12U 25mmガトリング機関砲が、地表を舐めるように掃射していく。
一通り掃射すると、操縦桿を引いてフレアを撒きつつ旋回する。
続いて2-4が進入し、同じ様に第2波の機銃掃射を行う。
機銃掃射が終了すると、地面に動ける車輌は存在しなかった。
『バロメ2-3、攻撃完了』
『こちらバロメ2-1、そちらの右側を飛行中』
バロメ2-3のパイロットが振り向くと、2機でエレメントを組んだAV-8BJ+ハリアーⅡが横に並ぶ。
『バロメ2よりナーヴァル・ヘッド、敵ロケット砲陣地の殲滅を確認、帰投する』
『ナーヴァル・ヘッドよりバロメ2、Roger。帰投後は補給を受け、海兵隊の援護に向かえ』
『Roger』
ロケット砲を全て片付けたAV-8BJ+ハリアーⅡは、翼を翻して帰路に着いた。
同じ頃、揚陸艦から2機のMV-22Bオスプレイが発艦した。
MV-22Bオスプレイは垂直に発艦すると、ナセルの角度を変化させて固定翼モードに移行、新たに与えられた任務の為に飛び立った。




