6章第8話 突然の反攻
海軍航空隊の攻撃を担うF/A-18Fは、まだ翼の下に2発のGBU-16ペイブウェイレーザー誘導爆弾を残していた。
こちらは制圧出来ていない施設に投下する用である。
ラフライダー2-4は海軍海兵隊がICBMの発射施設に到着したのとほぼ時を同じくして、高度を上げる。
そして前席のカンタ中尉は操縦桿を操って機を旋回、司令施設へと機首を向ける。
ICBMの発射を管制、そして守備隊の司令部でもある施設をHUDに捉えた。
後席ではスズネ中尉がスナイパーXRポッドを用いてその施設に照準を合わせていた。
『レーザー・オン』
『了解、ラフライダー2-4、Bombs away!』
F/A-18Fの翼の下から、2発のGBU-16ペイブウェイ、1000ポンドの爆弾が切り離される。
スナイパーXR目標指示ポッドは、スズネ中尉の操作を受けて目標施設にレーザーを照射し続ける。
そして空中を滑空し、ペイブウェイは目標施設に命中した。
目標に吸い込まれた2発の1000ポンド爆弾は、コンクリートを貫通した後に火の玉が膨れ上がり、建物を突き崩した。
『命中した』
『ナイスキルだ!』
残りのF/A-18Fも、地上のミサイル発射機やバンカーにGBU-16ペイブウェイを投下し、放たれた弾体は寸分の狂いもなく目標に命中、手持ちの爆弾の全てを投下して目標に損害を与え続けた。
『全ての目標の撃破を確認、ラフライダー2-1より全機へ、これより帰投する』
『Roger』
『Roger』
攻撃の為に展開していた8機のF/A-18Fは翼を翻して空母へと還っていく。
F-35Cは海軍海兵隊の直掩の為に暫くこの場に留まった。
===========================
航空攻撃を終えた海軍航空隊が還っていく。
北側の対空陣地を背後から強襲したM1A2SEP V2エイブラムスとM2A3ブラッドレーを主力とする海兵隊の機甲部隊は、ICBM奪還の為に襲来する敵の機甲部隊に備え、迎撃態勢を整えていた。
その時だった。
地面が爆ぜる。
爆音と共に、地表が捲れ上がったのでは無いかと錯覚する程の爆発が起きた。
「くそッ!」
「IEDか⁉︎」
『各車輌警戒を厳に!HQへ!攻撃を受けて……』
瞬間、戦車兵はシュッシュッと何かが空気を裂く音を感じた。
気がつくと、轟音と共にM1A2SEPエイブラムスが炎に包まれ潰されていた。
『中隊長車被弾炎上!生存者は確認出来ない!』
『畜生!砲撃だ!』
『了解した、これより中隊副官車輌が指揮を執る。皆手近な隠れ場所に身を隠すんだ』
すると、一斉に戦車、IFV、APC、AAVP7A1が移動を開始、歩兵も隠れ場所を探す。
『スラッガー1より海兵隊各員へ、自走榴弾砲に砲撃されている。第2第3中隊も、沿岸付近からロケット弾による攻撃を受けている事が確認された。各隊が撃滅に動いている、持ち堪えるんだ』
「了解!持ち堪えられるように祈ってろよ!」
航空部隊が爆弾を全て投下してしまい、攻撃に回って貰えないのが辛い。
海兵隊の攻撃ヘリ部隊も、時間がかかる。
戦車兵は無線にそう怒鳴り返し、その"各隊"の行動に頼る他無かった。
===========================
HQより第2、第3中隊へ通信が入る。
『CP2へ、第1中隊が敵自走砲から砲撃を受けている。中隊長戦死、そちらから砲兵陣地を制圧する部隊を出してくれ。どうぞ』
「了解、方位は?どうぞ」
『方位3-1-0、距離4800だ。どうぞ』
「3-1-0、4800、了解。部隊を分けて向かわせる、終わり」
第2中隊の中隊長はそう通信を受けると、別の戦車に通信を繋ぐ。
「スコーピオ1よりスコーピオ1-1へ。敵の砲兵部隊を潰して第1中隊への攻撃を阻止しろ、どうぞ」
『スコーピオ1-1了解、アイアンホースも連れて行くが良いな?どうぞ』
「そうしてくれ、どうぞ」
スコーピオ1のコールサインを持つ中隊長車がそう言うと、スコーピオ1-1のコールサインを持つ第1小隊4輌のM1A2エイブラムスと、それに追従する機械化歩兵のM2A3ブラッドレーが右翼側に展開する。
『こちらロックハート1、スコーピオ1へ、聞こえるか?どうぞ』
ロックハート1、第3中隊のコールサインだ。
第2中隊と同じく、14輌のM1A2エイブラムスとM2A3ブラッドレーを率いている部隊である。
「ロックハート1へ、こちらスコーピオ1。聞こえてるぞ、何か問題が?どうぞ」
『いや、こちらからも機甲1個小隊を回したい、良いか?』
第3中隊より、1個小隊……M1A2エイブラムスとM2A3ブラッドレーの4輌ずつを回したいと言う進言だ。
「大丈夫だ、問題無い。助かる」
『了解、直ぐに向かわせる』
第3中隊の中隊長はそう言うと、右翼側に第1小隊を展開させると、対砲兵破砕部隊の編成が完結する。
『こちらスコーピオ1-1、敵砲兵撃滅の為に一時離脱する、どうぞ』
「了解、武運を祈ってるぞ。終わり」
そう言うと1-1の戦車長はハッチから身を乗り出し、此方に敬礼。
8輌のM1A2エイブラムスと8輌のM2A3ブラッドレーは、中隊の本隊を離れていく。
これで中隊の本隊には1個中隊辺り10輌ずつの戦車とIFVになった。
しかし、電撃戦は継続出来るだけの戦力は残してある。
しかし、それを削っていく様な攻撃があった。
突如として上空から降り注ぐロケット弾。
驚いた中隊各車は急回頭や停車でその場を凌ごうとする。
「ロケット弾攻撃だ!」
大雑把に面を制圧するロケット弾攻撃は、こう言った広く展開している敵の攻撃に向いている。
「各車両止まるな!車輌の間隔を広く取れ。BM-21だ、旧式で命中精度は高く無いが威力が高い!注意しろ!」
第2中隊の中隊長がそう指示を出すと、各車両が間隔を開き始める。
こうする事で、ロケット弾攻撃の被害を最小限に抑えるのだ。
『ロックハート3-3が殺られた!』
『タイガー2-2被弾!走行不能!』
しかし、出る被害は出るらしい。
M1A2エイブラムスが破壊され、M2A3ブラッドレーが履帯をやられて走行不能に陥る。
敵の本隊を叩くまでにどれ程の戦力が残っているか、残っていてくれと祈る中隊長だった。
===========================
ヨルジア海軍第3遠征打撃群
旗艦である強襲揚陸艦LHA-08"きたかみ"は動き出す。
第3遠征打撃群は回頭して上陸地点より少し離れた、敵がロケット弾攻撃を行っている地点へと艦を走らせる。
F-35Cの偵察によれば、敵は海岸付近にロケット砲陣地を構築しており、地対艦ミサイルなどは無いと言う。
だが対空兵器の数が多く、攻撃ヘリなどでの接近は難しい。
トマホーク巡航ミサイルを使う様な高価値目標でも無く、車輌1輌に対してトマホークを使うの費用対効果の面から見て賢い選択とは言えない。
そこで艦隊司令官は、洋上から艦砲射撃を行い、ロケット砲陣地を叩く事を選んだ。
"やくも級"ヘリ揚陸駆逐艦には155mmAGSが2門搭載されており、揚陸艦の機能も持ちながら艦砲射撃も行える様になっている。
遠征打撃群の艦隊は波を割って洋上を突き進む。
艦内では乗組員によって、速射砲や単装砲に砲弾の装填作業が行われていた。
時を同じくして、艦砲射撃後の空爆を行う為、"しおじ"の艦内航空機格納庫では、F-35BJライトニングⅡとAV-8BJ+ハリアーⅡに武装を搭載する準備が進められていた。
GBU-31 2000ポンドJDAMとAGM-65Hマーベリック空対地ミサイル、5インチロケット弾がこれでもかと積まれていく。
自動装填装置に砲弾が装填され、砲塔に収められていく。
今回は通常弾による艦砲射撃、GPS誘導砲弾は使用しない。
"点"では無く、"面"で攻撃するからだ。
第3遠征打撃群の司令官は、艦砲射撃に関する指揮を"しおじ"の艦長に一任、直接的な戦闘能力を持たないLHA-08、LPD-53、LSD-404は複縦陣の沖側へ、それ以外の戦闘艦は海岸側へと展開する。
LPDDH-204の艦長は、艦橋から中央戦闘指揮所に移動していた。
「"かぶら"、"かんな"、"カプリコン"より、砲撃準備完了の報告です」
遠征打撃群を護るイージス艦各艦から、Mk45 mod4 5インチ単装砲による艦砲射撃準備の報告が入る。
「続いて"たかやま"、"ロキ、"ホンドー"、ありあけ"、"あさやけ"より、砲撃準備完了の報告です」
砲雷長がそう報告を上げる。
DDG-161"たかやま"、DD-190"ホンドー"のMk45 mod4 5インチ単装砲。
DD-133"ロキ"のOTOブレダ 127mm速射砲。
DD-154"ありあけ"、DD-156"あさやけ"の62口径76mm速射砲にも砲弾が装填され、準備が整う。
「艦砲射撃があるなら、本国から戦艦でも引っ張ってくるんだったかな?」
艦長は腕を組み、笑いながらそんな事を言う。
砲雷長もそれにつられて笑った。
しかし、戦闘配備のベルが鳴った瞬間、その2人も真面目な表情を浮かべる。
「右砲戦用意!」
「右砲戦用意!」
"しおじ"の前甲板に装備されている台形のブロックが割れ、中から長い砲身が姿を現す。
本級の特徴である、ステルスシールドを備えた62口径155mmAGSである。
「撃ちー方始めー!」
「撃ちー方始めー!」
艦長の命令を砲雷長が復唱、それを聞いたCIC員がコンソール上の操縦桿の引き金を引く。
甲板上の155mmAGSが火を吹き、榴弾が発射された。




