6章第4話 "オルカ"
あぶねぇ……滑り込みで完成しました。
まだ日の登らない時間。
16人の海軍特殊部隊のユニットは4つに分かれ、散開する。
場所は、南側にあるICBM発射基地の防空陣地だ。
航空機の進入を容易くする為、防空陣地に存在する対空兵器を破壊し、手助けをする必要がある。
しかし当然ながら、全ての対空兵器を破壊……停止させる事は無理だ。
精々防空網に針穴の様な穴を開ける位だろう。
しかし、その「針穴の様な穴」を開けるのが特殊部隊の仕事だ、大穴を開ける必要は無い。
針穴の様な穴を大穴に変えるのは、後続部隊の仕事だ。
誰もが寝静まった夜中、ジェンキンス准尉は静かに防空陣地に侵入。
4人の班は全周囲警戒の体制を取りつつ、敵の歩哨に見つからぬ様に素早く対空兵器に忍び寄る。
目星をつけていたのは、9K37M1-2 ブーク地対空ミサイル。
バックパックからワイヤレス・遠隔起爆式のC4爆薬を取り出し、電源を入れる。
設置場所は、見つけにくい車体下部、そして燃料タンクだ。
設置が完了すると、次のターゲットへと素早く移動する。
次は2K22ツングースカ自走対空砲の近くに隠れる。
爆薬をセットしたのは、砲塔、弾薬庫付近だ。
ジェンキンス准尉率いる班は、全6つのC4を対空兵器に仕掛ける。
勿論敵はやり過ごし、発砲は一切しなかった。
仕掛け終わり、集合地点に向かうと、ジェンキンス准尉の班が1番乗り。
1分以内に残り3班が全員集合、後は核弾頭解除の知らせを待つだけだ。
===========================
明け方、対人警報システムを避け、ミサイルの発射管制室へと向かう。
持っていたC4爆薬を、分厚いドアに取り付けた。
最も破壊力の出る設置方法、電気信管を取り付け、コードを発射スイッチに繋ぐ。
スイッチ・オン。
ドゴン!
凄まじい音と共に壁が吹き飛ばされる。
それと共に施設全体に警報が発せられ、警備に当たっていた兵士が慌ただしく動き出す。
ここの兵士の武装は強力だ、なので出来るだけ早くコントロールを潰す必要がある。
コントロールを潰した後は、敵の増援が来る為即座に離脱、航空部隊と巡航ミサイル、艦砲射撃、海兵隊を誘導して敵の部隊を叩く。
その第1段階が、海軍特殊部隊"オルカ"に与えられた任務だ。
素早く内部へと侵入、コーナーをクリアリングする。
敵が電力を遮断したのか、照明が落ちて真っ暗になる。
廊下のあらゆる方向からの攻撃を警戒しながら、敵が出て気次第、撃つ。
階段下へピンを抜いたM67破片手榴弾を投げ込み、制圧。
突入し、敵の銃口炎を頼りに敵の位置を特定、小銃を射撃する。
機関部上部に搭載していたEOTech EXPS-3ホロサイトやAimpoint COMP M2のレティクルの中心に敵を捉え、引き金を引く。
マイキー大尉の肩に、銃床を通じて5.56×45mmNATO弾を発射した反動が鋭く食い込むが、訓練を重ねて磨かれた彼にとって、そんなものは大して堪えない。
セミオートマチックで2発、3発と、62グレインのスチール製弾芯に死を乗せて撃ち出す。
その弾芯は、無慈悲に敵の頭や心臓を破壊し、生命活動を強制停止させる。
床に空薬莢が落ち、真鍮で出来た薬莢は澄んだ金属音を奏でる。
「クリア!」
「クリア!」
「クリア!」
「オールクリア!」
敵の死体を蹴り飛ばしながら、油断なくM4を構えて廊下を進んでいく。
すると……
『Не пропустите!』
『Шпион』
そんな声が奥の方から聞こえて来た。
何だ何だ……?
そう思っていると、3人の銃___AN-94アバカンを持った人物が、1人の血塗れの人物がを抱えてこちらに来る。
反射的にM4を構え、引き金に指をかけるが、こちらに銃を向けていないし、何かがおかしい。
仲間に「武器を下せ」と命令して止めさせた。
銃を持った人物の1人が叫ぶ。
「Вы, ребята Хорхе Армия?」
突然マリナロス語でそう話し掛けられた。
グルーバキア連邦は遥か昔からマリナロス連邦と政治体制や経済体制で協力関係にあり、マリナロス語が公用語となっている。
「Да」
少し戸惑いつつも、マイキー大尉はそう答える。
特殊部隊の隊員は、戦闘に秀でているだけでは無く、敵地での活動も行う為、語学も堪能だ。
彼らは更にマリナロス語を捲したてる。
要約すると、血を流している彼は、 現在搭載されているICBMの核についての情報を持つ人物で、軍部……というかドラグーン帝国の目的にたった今離反、スパイとして処刑されそうになったところを脱出したらしい。
「Комната управления Где?」
マイキー大尉は銃を持った護衛者にそう聞く。
すると、3人の護衛者の内1人が答えた。
「За большую дверь прямо вокруг проходах!Следуй за мной!」
どうやら、通路を曲がった右側の大きな扉の奥で、ついて来い、と言ってる様だ。
「ロン、外の部隊に連絡、要救助者含め3人を保護する様に伝えろ」
「了解!」
マイキー大尉にロンと呼ばれた隊員が無線を使い交信を始める。
それが終わると、武装した2人の護衛者と血塗れの要救助者は外へ向かう。
「さて、案内してくれ。行くぞ!」
マイキー隊員が先頭に立ち、通路をクリアリングしていく。
曲がり角では素早くカッティング・パイで通り抜け、敵は見つけ次第撃つ。
着いてきた護衛者の1人も、"オルカ"隊員には及ばないものの、しっかりと着いて来て"敵"を射撃する。
つい数分前までは"味方"だったが、彼にとってそんな事は関係無いと言うかの様に敵を撃ち抜いていく。
制御室の扉のパスコードは、その護衛者が知っているらしい。
しかし、パスコードは既に変更されている。
聞く所によると、彼は元々この中のスタッフだった様だ。
仕事の早い奴だ……そう感心しながら壁にC4を仕掛ける。
恐らく敵は待ち伏せをしている筈、つまり、敵の待ち伏せ攻撃範囲を避ける為、壁を爆破して突入する。
壁から離れ……3カウントで爆破。
煙が晴れると……壁が少し抉れただけだった。
「流石弾道ミサイルの基地だ、壁の硬さが違う」
しかし、諦める訳にはいかない。
持って来たありったけの爆薬を、そしてその爆力が一点に集中する様に爆薬を仕掛ける。
再び壁から離れ、3カウントで爆破をかける。
凄まじい爆音と爆風と共に、今度こそ壁に穴が空いた。
一気にそこから突入、制圧していく。
恐らく発射スイッチに指をかけているであろう奴は、最重要目標だ。
1発、2発、3発とセミオートマチックの射撃を繰り返し、確実に殺す。
制御室に入って仕舞えばもう簡単なものだった。呆気なく全員が射殺され、制御室を制圧、支配下に置く。
「クリア!」
「クリア!」
「クリア!」
「ルームクリア!」
制圧したマイキー大尉達は素早く次の行動に移る。
発射ボタンにカバーをかけ、発射キーを2本引き抜く。
阻止の為の化学兵器充満システムも切った。
そして書類と情報端末も全て回収、キーボードを叩いて核兵器を遠隔操作で停止させる。
マイキー大尉は、こうしたハッキングはそれなりに得意だ。
今回の作戦に投入されたのは、その特技もあるからだ。
案の定、モニターに出されたMIRV弾頭の全てが核弾頭だった。
その数、9発。
何処から流れたのか、外部から持ち込まれたミニットマンⅢ弾道ミサイルが3発、そのMIRV弾頭全てに核が積まれていた。
次々と核弾頭にセーフティを掛けていくマイキー大尉。
しかし、そう時間は無い。
警報システムをダウンさせた為、閉じ込められて毒ガスが出る事は無かったが、敵の増援が迫って来ている。
既にマイキー大尉は8つにセーフティを掛けた。
残り1発……!
最後の1発にセーフティを掛ける為に、エンターキーを押す、その瞬間。
敵が空けた穴から飛び出し、撃ってきた。
撃った弾丸はマイキー大尉の胸に突き刺さり、マイキー大尉は倒れる。
「大尉!」
敵は飛び出した瞬間に"オルカ"隊員に射殺され、残りも"オルカ"隊員が投げ込んだM67手榴弾の破片の餌食になった。
「大尉!大尉……⁉︎」
マイキー大尉は胸に手を当て、息を荒くしている。
弾丸は……貫通していない。
LBT-6094Aプレート・キャリアに入れていた防弾プレートのお陰か、弾丸は皮膚を貫かず、プレートで止まっていた。
「良かった……大尉、大丈夫ですか?」
「あぁ、死んだかと思ったぜ、頭じゃなくて良かった」
防弾プレートの存在に感謝しつつ、セーフティに最後のロックを掛ける。
これで間違ってもミサイルが発射される事も、核弾頭が起爆する事も無くなった。
護衛者と共に空けた穴から通路へ出て、外へ。
外へ出た瞬間、通信が飛び込んで来た。
『マイキー大尉、南東の方角より敵の大部隊が接近中。そちらに30分で到着する』
30分、脱出には充分な時間だ。
「了解した、工作部隊と合流後、対空兵器を破壊、速やかに回収地点に向かう、オーバー」
そう無線を返すと、マイキー大尉は走った。
迎えには、陸軍特殊航空支援大隊のMH-47Gが来る予定だ。
「ジェンキンス!」
無事に工作部隊と合流。
工作部隊は、先程脱出していった護衛者と要人を無事に保護していたようだ。
ジェンキンス准尉は合流した瞬間、ラジオの様な機材のスイッチを押した。
すると、仕掛けた全てのC4爆薬に電波が飛び、通電。
ジェンキンス准尉ら16人が仕掛けた幾つものC4爆薬が爆発し、対空兵器が次々と破壊される。
爆破したのは2K22ツングースカ自走対空砲5輌と、9K37M1-2 ブーク地対空ミサイル4基。
これで、防空網に小さな穴が空いた。




