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6章第2話 パイロット達

ガルシア島飛行場


ここにいるパイロットは、状況によるが5つの状況をループしている。


まず戦闘(C)空中(A)哨戒(P)、常に滞空して不明機(アンノウン)の早期発見、警戒を務める。

真っ先に接敵する為、最も危険だが重要度の高い任務だ。

常に4〜8機が任務に就く。


続いてスクランブル(アラート)待機、こちらも重要度は高い。

何かあれば常に5分以内に飛行場より離陸する態勢を整え、不明機(アンノウン)に対応する。

CAPの増援として送り出される事もある。

常に4人2組、2機が待機している。


次に待機任務、何か起こった場合の予備として基地に残り、待機。

もし敵の大部隊が国境を越えたり、進軍して来た場合に駆り出される。

こちらは人数の規定が無い為、人数はまちまちだ。


そして怠ってはならないのが訓練、派遣中とはいえ、訓練を怠ると死にかねない。

常に最高のパフォーマンスが出来る様、訓練を行う。

空いた時間に行う為、こちらも人数は決まっていない。


最後に上記の任務に就いていないパイロットは______休暇だ。

いくら軍人とはいえ人の子だ、機械では無い。

疲れも溜まるし、休みは必要になる。


夜、休暇や任務が終わったパイロットや整備士達が決まって集まるのが、基地から歩いて2〜3分の場所にあるバーだ。


バーの店主も空軍に協力的なので、門限過ぎの軍人の入店や飲酒の注意等も行ってくれる。


しかしやはりパイロットは、酒を控える。

体内にアルコールが残ったまま高高度まで飛ぶと、血中アルコール濃度が急激に上昇し、飛行に支障をきたすからだ。


バーの扉が開く。


「いらっしゃい」


「こんちわー」


挨拶を交わして入ってきたのは、4人。

ヒロキ・カザカミ中尉、ケン・クリサワ中尉、ツバサ・ナルミ少尉、ユニス・フレミング少尉だ。


適当な席に着くと、料理や飲み物を注文する。


「やっと纏まった休暇が取れるのかねぇ……」


「まぁ、ここんところ忙しかったし。防衛体制に穴は開けられんから帰国は無理でも街を巡る位は休めるんじゃ無いか?」


ヒロキのため息交じりの言葉にケンがそう返す。

チャスタイズⅡ作戦以降、軍司令部からパイロット達にも休暇を出す様に指示があったのだ。

今まで休みが無かった訳では無いが、これ程纏まった休暇も無かった。


「ま、ここは本国じゃないから、持て余すかもしれませんけどね……ってユニスちゃんだいじょぶ?」


「はわわわ……ら、ラプターパイロット……」


ナルミがユニスに声をかけると、ユニスは少々混乱気味の様子でブツブツと言い出す。


「いやいや、階級は同じなんだからさ、仲良くしようよユニス!」


「はっ、はい!お願いします!」


料理と飲み物が運ばれて来る。

ケンがビールのジョッキを持ち、立ち上がる。


「えー、取り敢えずここまでお疲れ様でした。ここからも撤兵まで多分このメンバーでやっていく事になるかもしれませんがよろしく。頑張っていきましょー」


「「「「かんぱーい」」」」


乾杯の音頭と共にジョッキ同士を力加減に注意してぶつけ合う。

酒が飲めるメンバーはゴクゴクとビールを飲む。

冷たい炭酸とアルコールが喉を通り、刺激を与える。


「っぷはー、うめー」


ケンはそう言ってジョッキから口を離し、料理に手をつけ始める。


「ねぇ、ユニス。この前の要塞攻略戦はどんな感じだったの?」


「えっと……結構夢中で操縦してて……ナルミさん達が来なければ危ないところでしたよ」


ユニスとナルミはそんな会話をし始める。

ナルミは酒は飲めるが、許容量は少ない。

ユニスは日によるが、飲めると言えば飲める方だ。


ヨルジアに居る人種は2種類、ナルミやケン、ヒロキの様な東洋人種と、ユニスやハルトマン、バルクホルンの様な欧州人種だ。


アルコールの分解性質はやはり人種で違うのか、欧州人種の方が良く飲めるらしい。

勿論個人差はある、欧州人種でも弱い人は居るし、東洋人種でも強い欧州人種よりも飲める人も居る。

ケンは東洋人種でもよく飲める方だ。


「にしてもお前はまだ飲めねーのか」


「俺は無理なんだよ」


ケンは飲めないヒロキを揶揄う。

ヒロキのジョッキに入っているのはコーラだ、ヒロキはいつもこういった場ではアルコールの入っていない飲み物を飲む。


「飲んでみろよ、大の男が下戸ぶっても可愛くねえぞ」


「やめろって、本当に無理なんだから」


と言ってヒロキはコーラのつまみに大皿から唐揚げを食べる。


「美味いっ」


「美味いな」


飲む、食べる、飲む、食べるを繰り返す。

唐揚げ、ウインナー、野菜炒め……流石は軍人の集う店だ、どれも美味い。


と言うのも、この店は海軍の息がかかっているらしく、メシがマズいと暴動が起きかねない海軍で美味い飯を教わったらしい。


「ナルミ少尉はその……好きなタイプって居るんですか?」


「うーん……今は特にいないかな」


ナルミはそう言って笑い、焼き鳥に齧り付く。

鶏肉を咀嚼し、呑み込んでからナルミは聞き返す。


「そう言うユニスはどうなの?どんなタイプが良いの?」


「わっ、私ですか⁉︎え……っと、優しくて、私の事を護ってくそうな人が良いかな……って思ってますね」


ユニスは驚くが、しっかりと答えを返した。


「ほほーう……だそうですよ?ヒロキ中尉!」


「何故俺に振る」


ヒロキは若干眉を顰め、苦笑いで振ってきたナルミに言う。


「だって部隊1の優男じゃないですか!」


「はァ?何言ってんの」


「それにコイツ、今は本土に居るミサワ大尉と付き合ってるんだぜ」


「「ええっ⁉︎」」


ナルミとユニスは知らなかったらしく、驚きの声を上げるが、ヒロキはそれを鎮めた。


「いつの話してんだよ、もう別れたぜ」


「あ、そうだったの?」


今度はケンがそう言う。ケンはケンでヒロキが別れた事を知らなかったらしい。


「いつよ」


「だいぶ前、ここに派遣される前かな、入院中の彼女をお見舞いに行った時だ」


「振ったんですか?振られたんですか?」


「俺は振られた方。よく分からん振られ方したわ」


「よく分からんってどう言う?」


「あー……何かな、『これ以上は付き合えない、別れよう』だってさ」


ケン、ユニス、ナルミの質問に1つずつ答えるヒロキ。どうやら傷は浅いらしい。


因みに、第202戦闘飛行隊で結婚しているのはサガワ大尉とオルコット少尉、レイ少尉だけだ。


こんな話をしていく内に酒も進み、夜も更けていく。


遂にはナルミとユニスは潰れて寝落ちしてしまった。


それを横目に、未だ飲食を続けているケンとヒロキ。


「あ〜ぁ、寝ちまったか」


「ナルミはナルミで今日は回るの早かったな」


「確かに、いつもはもっと飲むけどな」


と言って2人は笑いあう。


「……こうしてると、何か学生時代思い出すな」


「うん、当時はカラオケとかもよく行ったよな、モトキとタカクラだ一緒だったっけ」


「そうそう、あいつら今何してんかな」


「モトキは銀行入ったみたいだしな、タカクラは……分かんね」


「また集まりたいよなぁ……あの4人で」


「だよなぁ」


暫く、2人の間には沈黙が流れる。

すると、ケン呟くようにこんな事を言った。


「そろそろ身を堅める時期かねぇ……」


そのケンにヒロキはこう声をかけた。


「お前、どうすんの?サクラ中尉とは」


「どうもこうも……わっかんねーから悩んでんだ。向こうが俺に好意持ってんのは知ってんだよ……だから失敗が怖いんだ」


「……なるほどな……」


「そう言うお前はどうなんだよ?」


「俺もわかんね、好きな奴も居ないし、もうどうにでもなれって感じかな」


「俺も実際、そんな感じに近いけどなぁ……」


そう言うとケンは酒を煽った。


時計を見れば、既に11時近くになっている。


「おい、ユニス少尉、ナルミ!起きてくれ」


「zzzz……」


「ンン……」


「ダメだ起きねぇ」


「マスター!勘定お願いします!」


ヒロキが2人に声をかけている間、3人から回収した金で勘定をするケン。


「潰れるまで呑みゃこうなるわな……」


「ケン、ナルミ頼む。俺はユニス少尉背負う(おぶる)わ」


「だな」


2人はそれぞれユニスとナルミを背負い、店を出た。


「吐くなよ……絶対に吐いてくれるなよ……」


「背中に吐かれると最悪だよな」


「違いない、2人が吐かない事を祈るか……」


冷たい夜風を頬に感じながら、基地への営門をくぐる。

門限の延長届けは既に出していた為、お咎めは無しだ。


「……この戦争が終わるまで、絶対に生き延びような」


「……だな」


そんな言葉を交わしながら、宿舎へと到着する。


女性宿舎に到着、ユニスとナルミを下す為にミラー少佐を呼んだ。


「あらー、大分飲んだわね」


「少佐、頼んで良いですか?ユニス少尉意外と豊満で背中に当たるんです」


「分かった、その子起きたら言っとくわ」


「冗談です、止めといてください」


ケンはケンで既に玄関にナルミを下ろしている。


ヒロキもユニスを下ろす。

2人はミラー少佐に身柄を任せ、とっとと男性宿舎に戻る事とした。


「……ユニス少尉マジで豊満?」


「……あぁ、意外と……って止めろ」


良いの回ったケンは変な事を聞く。

まぁいいや、と、2人は別々の部屋に戻る事にした。

明日からまた、日常業務に戻る。


もう寝よう、そう思ったケンもヒロキも、布団に潜るとすぐに眠りについてしまった。

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