1章第5話 あかつきの戦闘
海上戦が長いです。
回収チームを乗せたMV-22Bがやくもに着艦する。
着艦後、隊員はMV-22Bの中で待機し、艦内格納庫に一緒に収容された。
回収チームは格納庫内でMV-22Bから降り、本部でブリーフィング後、解散となった。
その間に護衛の駆逐艦"あかつき"は最大戦速で敵船に向かう、その途中に艦載されている対潜ヘリSH-60Kにて偵察を行い、対艦ミサイルをロックオンする。
"あかつき"CICでは、SH-60Kが敵の情報を送信して来るのを待っている。
戦闘指揮を採るため、艦長もCICに来ていた。
あかつき砲雷長は「漁船を改造した武装船では?」と艦長に問いかける。
艦長は答える。
「いや、漁船改造の武装船なら1隻8発もミサイルを詰めるはずが無い、大型トロール漁船なら可能は可能だが、レーダーに映った船影が小さいからトロール船の可能性も低い」そしてこう結論づける。
「恐らく、正規軍の装備……ミサイル艇だろう、考えたくは無いがな」
「そんな!グルーバキア軍は協力を申し出てくれた筈です!正規軍が攻撃して来るなど…!」
「俺もそう思いたいよ、だけど、そう考えなきゃ辻褄が合わん……だろ?」
と、偵察機から通信が入った。
CIC員が映像を受信し、モニターに写す。
「光学映像出ます」
映っていたのは、主砲1門、後部の甲板に対艦ミサイルのキャニスターを装備し、弾薬が尽きたのか逃走を図るミサイル艇2隻の姿だった。
「ほらな?」と艦長が言う。砲雷長は信じられないと言った表情で画面を見つめていた。
艦長が指示を出す。
「砲雷長、対水上戦闘用意だ」
「……はっ、総員対水上戦闘用意!」
砲雷長も吹っ切れた様で、テキパキと指示を出す。
「SSM-1D、発射用意、目標敵ミサイル艇、発射弾数2発!」
CIC員が指示を復唱し、発射用意良しの報告が来た。
「SSM-1D、発射始め!」
対水上戦闘区画のCIC員がスイッチに手を掛ける。
「SSM-1D、1弾発射用意…てー!」
スイッチを押し、ビーッという警報音がCICに響き渡る。
あかつきの煙突の間に装備されたキャニスターからSSM-1D対艦ミサイルが轟音と共に発射された。
発射してから4秒後
「2弾発射用意……てぇーっ!」
2発目のミサイルがキャニスターから放たれる。
「1弾、命中まで30秒……20秒……10、9……マークロスト!迎撃されました!」
「何⁉︎」
「しかしまだ1発ある、落ち着け。」
取り乱しそうになった砲雷長を艦長が宥める。
「2弾、弾着まで20…10、9、8、7、6、5、4、弾着…今!」
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「1発目、撃墜した!」
「まだだ!まだ来る!撃て!」
ミサイル艇に搭載されている76mm砲が毎分120発の勢いで火を吹き、ミサイルに浴びせかけられるが、なかなか当たらない。
「敵弾来る!」
「衝撃に備え!」
ミサイル艇の艇長が叫ぶ
対艦ミサイルが轟音と共に着弾、派手な爆発を上げて轟沈した。
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「トラックNo.1240、撃沈!」
CIC員が報告する。
艦長は考えた、「あの程度のミサイル艇ならSSMを使うまでも無いのでは?」と。
そして命令する。
「砲雷長、トラックNo.1241に対し、砲撃戦を行う」
「……はっ?」
「砲撃戦だ、12マイルの距離ならSSMを使うまでもなかろう、それに相手はミサイル艇、SSMはオーバーキルだ」
それに、と付け加える。
「高価なSSMが勿体無いしな」
……そういう問題じゃ無いと思う……
「砲雷撃戦用意!」
艦長の命令を砲雷長が復唱する。
砲"雷"撃戦なのは、この距離だと魚雷を使う可能性があるからだ。この艦に搭載されている"91式短魚雷"は、対潜戦の他、極短距離の水上戦にも使用可能だ。
「右砲戦、方位、艦首より0-4-5、目標、敵ミサイル艇!」
砲雷長が砲管制のCIC員へ命令し、艦長が攻撃を指示する。
「右砲戦、CIC指示の目標、撃ちー方始め!」
「トラックNo.1241、主砲、撃ちー方始めー」
「撃ちー方始め!」
CIC員がデスクの下から引き出したトリガーユニットの引鉄を引く。
同時に、前甲板に装備されているOTOブレダ製62口径76mm速射砲(スーパーラピッド砲)が、毎秒120発の勢いで火を吹いた。
バン!バン!バン!バン!バン!という発砲音とともに薬莢が甲板上に転がって行く。
放たれる76mm砲弾は寸分の狂いも無くミサイル艇に吸い込まれて行き、やがて100発程の砲弾の直撃を受けたミサイル艇は上部構造物が炎上を始め、艦橋見張り員が肉眼で目視出来るほどの火炎を放った。
艦橋見張り員からの報告が艦内通信で飛んでくる。
「トラックNo.1241、大破!炎上中」
「目標に全弾が命中、じきに沈むかと思われます。」
それを聞いた艦長が一息つく
「ふぅ……水上戦闘用具収め」
「はっ、水上戦闘用「待ってください、艦長、砲雷長。」何?」
戦闘装備のセーフティを掛けようとした砲雷長の指示をCIC員が遮る
「何があった?」
「これは……方位1-7-3!水上目標探知!」
「島の影でレーダーが届かなかったのか…隠れて居たのか⁉︎」
別のCIC員が声を上げる。
「数と大きさは⁉︎」
砲雷長が目標の詳細情報を問い、CIC員が応えた。
「反射影照合、ガランド級巡洋艦1、バルナウル級駆逐艦1、ハガンダ級駆逐艦1!正規規模の水上戦闘群です!」
「くそッ!奴らめ!」
砲雷長が拳をデスクに叩きつけ、艦長は静かに艦隊の回線を開いた。