5章第14話 要塞陥落
『待たせたな!こちらはルーデル飛行隊!航空支援に移る!』
ヴェルナー・ルーデル少佐率いる隊の到着により、E-8 J-STARSのレーダーから車輌の反応が信じられないスピードで消えていく。
今回は前回の様にSFWを積んではいない、AGM-65Hマーベリック対地ミサイル位だ。
しかし、それらを駆使して正確に戦車を射って行く。
A-10がマーベリックを放てば必ず命中し、30mmの復讐の槍を投げれば必ず突き刺さりT-80やT-90をスクラップに変える。
戦車隊のヴィットマン大尉は、前方の敵機甲部隊を蹂躙するルーデル少佐の活躍に頼もしさを感じ、レンジャーが確保した門に入った。
門を潜った直後、激しい銃撃の歓迎会が始まった。
ヴィットマンはシールド付きのM2銃座に着き、撃ち返す。
前方のバリケードを破ると、T-80が出現した。
「ソリマチ!」
「っ!」
ズドム!
轟音と共に滑腔砲が火を噴き、APFSDSがT-80の装甲を食い破る。
そのバリケードを左折、迂回して最深部を目指す。
大尉は構わず狙われている窓や建物の影をブローニングM2重機関銃で撃ちまくる。
重い銃声と共に太い薬莢が下に落ち、カラカラと金属音を立てる。
銃座を旋回させると、広場から8人程の兵士が全員こちらにRPGを向けているのが見えた。
「10時方向!RPG!」
現在、砲塔は2時の方向を向いている。
砲塔の旋回が間に合うか……!
ヴィットマンはM2を撃って12.7×99mmNATO弾を浴びせるが、2名しか殺れなかった。
ダメか、と思った瞬間。
戦車後方から来た散弾に敵歩兵が薙ぎ払われる。
『こちらヘヴィーハンマー1-1、援護する』
「こちらストーンヘンジ1-1、助かった」
『何、試しにキャニスター弾積んでおいて、役に立ったんだから良かったよ』
90式戦車がヴィットマン大尉のエイブラムスに並ぶ。
先程歩兵を薙ぎ払った砲弾は散弾を発射するキャニスター弾だったのだ。
『歩兵を降車させる、援護しよう』
「了解!」
広場を確保、後続の陸軍の89式装甲戦闘車や海兵隊のM2A3ブラッドレーIFVから歩兵を降車させる為の援護に着く。
戦車隊は更に幾つかの広場から敵を掃討、確保し、ヘリから降下する味方や車輌から降車する味方の集結地点とした。
敵の戦力はヨルジア軍が入城した反対側の門から離脱を試みており、陸空の戦力の3分の2が離脱、"ドラグーン帝国"に忠実な兵士は未だ抵抗を続けている。
もはやこの要塞の陥落は時間の問題だ。
そこら中で銃声や砲声が鳴り響き、歩兵の頭上では友軍の戦闘ヘリや航空機が飛び交っている。
歩兵の1隊が要塞内で敵兵士と交戦を開始する。
入城したストライカーICVの銃座に乗せられたブローニングM2重機関銃が火を噴き、壁を打ち砕く。
ストライカーICVの後部ハッチが開いて歩兵分隊8名が降車、周囲に展開する。
「敵をこの要塞から一掃するぞ!続け!」
分隊長がそう号令をかけ、隊員と共に走り出す。
別の分隊も降車し、別方向へと向かう。
敵部隊が正面の主力部隊に集中しているため、迂回してこの2部隊で十字砲火をかけるのだ。
内部が市街地の様になっているのも幸いし、建物の中に入ったり隠れつつ移動が容易になる。
その代わり、屋上の狙撃兵にも気を配らねばならないが、幸い上空を友軍ヘリが飛び交っている為、素早い対処が可能だ。
『こちらカタフラクト1-3、援護する』
射撃地点へ走る隊員の横にM2A3ブラッドレーが並び、援護位置に着く。
『こちら1-2、位置についた』
十字砲火をかけるもう1つの隊が射撃地点に着いた様だ。
こちらも射撃地点に到着し、準備に入る。
ブラッドレーのハッチから機械化歩兵機関銃分隊が降車し、建物の陰に隠れる。
2ブロックほど先の敵を観察する。
歩兵と車輌が複数、そして戦車もいる様だ。
全員の準備が整い、準備完了。
「全員攻撃開始!」
分隊長が無線にそう叫ぶと、一斉に射撃を開始した。
海軍海兵隊の兵士が持つM4A1BlockⅣ、M249MINIMI MkⅡ、Mk13EGLMに加え、機械化歩兵機関銃分隊のM240E6、M2A3ブラッドレーの25mm機関砲が一斉に火を噴く。
十字砲火のお陰で歩兵や軽装甲車輌は一掃、しかしまだ戦車が残っている。
ブラッドレーの砲塔側面の発射機が作動し、TOW2B対戦車ミサイルが発射された。
ワイヤーで誘導された対戦車ミサイルのタンデムHEAT弾頭は、戦車に突き刺さってメタルジェットを発生させ、破壊。
『T-90撃破!進めるぞ!』
「了解!」
ジリジリと分散部隊と主力部隊が押し始め、敵を追いやっていく。
向こうの壁を突き崩し、89式装甲戦闘車が姿を表す。
主砲の35mm機関砲がAPDS弾を次々と吐き出し、車輌を屠り、歩兵を肉塊へと変えていく。
「RPG!」
分隊長はそう叫び、ビルの陰へと隠れる。
ビルの上からRPGが降ってくる。
IFVは素早く後退し、建物の裏へ。
『こちらアサシン3-2、援護する』
そう無線が聞こえると上空から12.7mmの薬莢が降り注いだ。
AOH-1B"アサシン"___OH-1Bの攻撃改造版が援護に入った。
スタブウィングに搭載したGAU-19/A 12.7mmガトリング機関銃がビルの窓を縫う様に射撃を行う。
OH-1の優れた機動力を生かし、ビルとビルの隙間へと入るAOH-1Bアサシンは、器用に機体を横へスライドさせながらビルの1フロアを掃射する。
AOH-1Bアサシンは機体の向きを変え、敵歩兵が密集している場所へと向かう。M260ランチャーからハイドラ70ロケット弾が連続で発射され、歩兵を薙ぎ払っていく。
「敵歩行兵器出現!」
「隠れろ!」
分隊長の号令と共に隊員が一斉に隠れる。
ガスタービンエンジン特有の甲高い音が響き、建物の陰から弾幕が襲いかかる。
タスクフォースから報告のあったあの兵器だ……
「数は⁉︎」
「4……いや、5機!」
機械の猟犬の様な無人兵器が唸りを上げて兵士達を肉塊に変えようと、高性能センサーの鼻で探している。
『援護する』
突然無線が聴こえたかと思うと、バリバリバリ!と目の前が爆ぜる。
音と共に歩行兵器が引き裂かれ、無力化された。
ヴヴヴヴヴヴヴヴ!という発砲音が後から聴こえ、独特のエンジン音を残して飛び去っていく。
A-10の近接航空支援だ。
『アヴェンジャー01、援護に入る』
「了解、助かるぜ」
そこからは無人歩行兵器とは言え、一方的に狩るだけだった。
歩兵部隊が見つけ、上空のCASと歩兵部隊付きのIFV、89式装甲戦闘車とM2A3ブラッドレーが撃破する。
歩兵と車輌、航空機の共闘により、効率的に撃破する。
圧倒的質の航空支援と装甲部隊の支援によって押されたヨルジア軍に、ドラグーン帝国は堪らずこの要塞を放棄した。
放棄されたこの要塞は、陸軍と海軍海兵隊が使用する前線基地となる。
ヨルジア派遣統合軍司令部は、要塞が陥落した事により、敵の越境の可能性は更に低くなったと見た。
その為、今後は順次各部隊の持ち回りで休日が組める様になったのは、彼らが基地へ帰投してから知る事になる。
『……AWACSより全空軍機へ。作戦は成功、帰投する』




