5章第13話 敵司令部の消滅
『砲台は機能停止した、地上部隊全軍、行動開始』
「アイサァ!ヨルジア海軍第1海兵師団第2機甲大隊第1中隊、Panzer vor!」
「アイサァ!」
Operation GONGから部隊の配置を変え、海兵隊第2機甲大隊第1中隊へと移動になったマークス・ヴィットマン大尉が号令をかけると共に、操縦手のジャイコブがハンドルを捻る。
ガスタービンエンジンが唸りを上げ、履帯が地面に食い込みながら時速50kmで駆ける。
地面を走るのはM1A2SEPが1個中隊14両、そして同じく1個中隊14両のM2A3ブラッドレー。
諸兵科連合の中隊戦闘群が要塞へと襲いかかる。
海兵隊のM1A2だけではない、陸軍もほぼ同じ編成で、90式戦車、89式装甲戦闘車等の装甲部隊を進める。
支援を行うのは陸軍砲兵連隊の99式自走155mm榴弾砲20門と、M270多目的ロケットシステム自走発射機MLRS16基。
そして海軍海兵隊第1砲兵連隊のM109A6パラディン自走砲20門だ。
空軍機の攻撃と陸軍/海軍海兵隊の砲兵によって要塞内部は爆風に蹂躙される。
砲爆撃は特殊部隊が確保した城門は避け、内部の格納庫や弾薬庫を狙っている。
『こちらムーンライト、砲兵隊は目標変更、山の頂上の観測所を砲撃せよ』
『了解』
砲兵隊の要塞への砲撃が止まり、山頂の観測所へと向けられる。
その火砲が火を吹き始めた頃、装甲部隊は敵の地上部隊を発見した。
「HQ、こちらストーンヘンジ1-1。敵の戦車部隊を発見!要塞まで残り5km、交戦に入る!」
『了解』
既に1発装填されているAPFSDSの照準を敵の戦車部隊先頭を行くT-90に合わせる。
「撃て!」
ヴィットマン大尉がそう叫ぶと、ソリマチ軍曹が引金を引く。
L44 120mm滑腔砲からAPFSDSが1500m/sで飛び出し、T-90の正面装甲へ突き刺さる。
装甲を貫通したAPFSDSはそのまま弾薬庫に到達し、砲弾を誘爆させて砲塔を吹き飛ばした。
「次弾装填!」
「装填完了!」
「撃て!」
装填手が素早く次弾のAPFSDSを装填し、ソリマチ軍曹が再び引金を引く。
空中でサボットが外れたダーツの矢のような弾体はその後方を走るT-90の履帯を完全に破壊する。
第1中隊のM1A2だけで無く、陸軍の90式戦車も高性能FCSで寸分違わずAPFSDSやHEATを叩き込んでいく。
発射後、指定された砲弾を自動装填装置が4秒程で薬室に次弾を送り込み、連続で砲撃していく。
突破まで後少し。
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上空を飛行しているF-15EJ___マスタング01は、タイミングを計っていた。
敵の地下司令部の位置は確認済み、しかしやはり対空砲火が激しい。
『……あのSAMがやれれば、突入出来るんだがな……』
『ええ、高度を上げても悟られます』
F-15EJの機長は左旋回しつつ地上を睨む。
SAMが邪魔でこれ以上進んだ場所への投下が出来ないのだ。
『全く……ここから投下しても届かない、旋回する』
『了解』
マスタング01は右へ旋回、体勢を立て直す。
と、右側に妙なものが見えた。
山の中腹にコンクリート製の扉がポツリ、その手前にはヘリポートがある。
『……妙だな、ブリーフィングには無かった施設がある』
『どこです?』
『機首より0-1-2の岩盤だ、スナイパーXRで観察しろ』
『了解』
ストライクイーグルの後席に座る兵装システムオペレーターがスナイパーXR目標指示ポットを使用して観察する。
『……本当だ……しかもアンテナが立ってる……』
『レーダー施設の様にも見えるな……』
もしかして……要塞地下はダミーか⁉︎
『っ!こちらマスタング01!要塞地下の司令部はダミーだ!本物の地下司令部は山腹の岩盤をくり抜いて作られてる!』
『こちらエターナル、確認した。これは……⁉︎』
エターナルにスナイパーXR目標指示ポッドで捉えた画像をデータリンクを介して送信する。
エターナルのオペレーターも確認したらしい。
『……間違いなさそうだ、マスタング01、攻撃を許可する』
『了解!』
硬い岩盤の下にある司令部は通常のミサイルや爆弾では攻撃不可能。
寄って、F-15EJストライクイーグルだけに搭載されている兵器がある。
GBU-28Bunker Buster。
鉄筋コンクリートなら厚さ6m、粘土質なら30mもの下に隠れる地下司令部を爆撃出来る、所謂"地中貫通爆弾"だ。
『エターナルよりマスタング・リーダー、悪い知らせだ。バンカーバスターを搭載している機が残り3機だ』
『げ』
GBU-28は弾体が大きすぎる為、F-15EJに1発しか搭載出来ない。
展開しているマスタング隊は8機、5機がダミーの地下司令部にバンカーバスターを落とし、残りは3発となってしまったようだ。
『バンカーバスターの残りがある奴はマスタング・リーダーのところへ』
『Roger』
『Roger』
マスタング01の隣に02、03が並ぶ。
1度旋回して編隊を組み、戻って投下ポイントに到着。
『マスタング01、Bombs away』
『レーザー・オン!』
GBU-28を投下、後部座席に座るWSOがレーザーを目標に照射する。
先端部分に取り付けられたシーカーが不可視のレーザーを捉え、誘導翼を動かし目標へピンポイントで落下していく。
着弾、大きな炎は上がらない。
その代わり、大量の土煙が空高く舞う。
結果は____命中したが、致命傷には至らなかったようだ。
『マスタング02、次弾投下!Bombs away!』
『レーザー・オン!』
2機目のストライクイーグルがバンカーバスターを投下する。
照射されたレーザーの反射波を弾体先端のシーカーが捉え、誘導翼が空中で姿勢を制御して目標へ向かう。
7cmの誤差で命中したバンカーバスターは隔壁を突き破り、内部へと達した。
『命中!』
『了解!マスタング03、次弾。Bombs away!』
『レーザー・オン』
3発目のGBU-28がF-15EJの機体下部から離れ、暫く機体と併走してから落ちていく。
先程と同じ様に、爆弾はレーザーを捉えて反応、誘導翼を動かし目標に向かう。
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要塞地下司令部
ゴゴゴゴ……と先程から凄まじい衝撃が部屋の中に疾る。
モニターもノイズを発し、天井からはパラパラと細かい砂の様な物も降って来る。
司令部にいる将兵が動揺するが、それを抑えるのが指揮官だ。
「狼狽えるな!各部隊へ応援要請!要塞の防衛線を立て直せ!」
「は、はっ!」
部下の1人が返事をし、コンソールを叩き出す。
別の部下は無線を使い、各方面の部隊に応援要請を出し始めた。
対空兵器は既に50%を喪失、滑走路は無事とはいえ、要塞配備の航空隊は25%を失っている。
圧倒的質を見せつける多国籍空軍に、ドラグーン帝国はなす術は無かった。
「……くそッ!どうするんだ!こんな状態に……!」
振り向いた指揮官は絶句する。
何故なら、先程までいた"ドラグーン帝国"の幹部が、既にそこにいないからだ。
「ま、まさか……!」
自分だけ逃げたというのか……
ここにいる数多の将兵を置いて……?
その時、指揮官は思い出した。
俺は何のために軍隊に入った……?国を護るためだ。
決して、テロ組織に加担するためじゃない。
気づかないうちにマインドコントロールされていたのか……。
それを自覚し、虚しさがいっぱいにこみ上げてきた瞬間、天井が崩落した。
6mもの厚さを誇る鉄筋コンクリートの地下司令部の屋根が崩壊し、塊が将兵やコンソールを押し潰す。
それは、指揮官の男も例外では無かった。
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着弾、土煙が上がった後、凄まじい爆炎が上がった。
どうやら敵の地下司令部と一緒に弾薬や燃料が集まっている区画を吹き飛ばしたらしい。
『命中!』
『マスタング隊、良くやった、後は地上部隊に任せよう。援護に入ってくれ』
『Roger!』
3機は山肌にぶつからぬ様に左に旋回、要塞上空へと戻っていった。
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「もう直ぐ陸軍の本隊と海兵隊がこの門に到着する!ここは死守するぞ!」
「「「了解!」」」
城壁内部に展開したレンジャー、R2-5は、ブル中尉の指揮の下、逃げる兵と外からの増援のシャットアウトを行っていた。
外からは敵が入ってくる事は少なかったが、中から城門を奪還しようと目論む敵も排除する。
タタタタタッ!タタタタタッ!
デリックとエイミーがM249MINIMIを構え、迫り来る敵兵を掃射、M240E6を構えるトオル・カタヤマ兵長もそれには加わる。
そこへ擲弾兵のエメリア・ホーキンスとノア・クリストフの射撃を行う。
M4A1をよく狙って撃ち、時には銃身下に取り付けられているFN Mk13EGLMから40mmグレネードを発射、銃弾とは比べ物にならない破壊力を持つ擲弾が敵を巻き込んで爆発する。
エドワーズも見ているだけではない、ACOGスコープを覗き、建物の陰から顔を出した敵を正確に狙い撃ちつつブル中尉のサポートを行う。
展開している城門付近は、銃声と空薬莢が落ちて床で音を立てる金属音に包まれる。
門の外を見れば、土煙を上げてこちらに向かってくる味方機甲部隊が見えた。
要塞内部侵入まで、もう少しだ。
次で要塞攻略戦は終わらせたい……




