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5章第11話 崩れ落ちるダム

『こちらミーティア・リーダー、グローバルホークから目標のGPS座標と渓谷のデータが来た、転送する』


『サンキュー、ミーティア・リーダー』


渓谷の飛行ルートのデータがAWACS(エターナル)から来たので全機に転送する。

兵装選択スイッチを操作し、GBU-39を呼び出してGPS座標を設定、完了。

マスターアーム・オン、異常無し。


渓谷を縫って飛び、まずはダムを破壊し、決壊したダム湖から流れ出る水によって下流の対空陣地を押し流す。


その後再び渓谷に飛び込み遡上、砲台を叩く。


8機のF-22はスーパークルーズで音速まで加速し、渓谷に入る。

データを参照しつつ、渓谷を縫う様に飛ぶ。

実は「F-22は低空飛行が出来ない」と言うのはデマだ。確かに空中戦に特化している為、マルチロール機のF-15EやF-16、F-35に比べれば低空飛行能力は劣ると言わざるを得ない。

しかし、GPSデータリンクやレーダーモードの切り替えにより、谷攻めが出来る程には低く飛べるのだ。


一歩間違えれば崖と合体して遺体も残らず散るが、8機は慎重に、正確に飛行していた。

身体にキツくGがのしかかる、旋回時の最大で9Gだ。

ベルトが食い込み、身体が軋む。


対Gスーツで常に下半身が圧迫され、スーツはパンパンに膨れている。


『対空陣地通過する!気を引き締めろ!』


一瞬で対空陣地を通過、音速で飛行していた為、敵防空部隊は対空砲火を上げることも出来なかった。


『こちらS・C(シエラ・チャーリー)、目標をマーク』


特殊部隊からレーザー照射完了の通信が入る。

ダムまで残り3000m、ウェイポイント通過!


ポイントとなっている橋の下を通過し、8機が一斉にポップアップする。

引いた操縦桿のボタンをコールしながら押した。


『ミーティア01(ワン)Bombs away(爆弾投下)!』


『ミーティア02(ツー)Bombs away(爆弾投下)!』


『ミーティア03(スリー)Bombs away(爆弾投下)!』


『ミーティア04(フォー)Bombs away(爆弾投下)


『ブルームーン01(ワン)Bombs away(爆弾投下)!』


『ブルームーン02(ツー)Bombs away(爆弾投下)


『ブルームーン03(スリー)Bombs away(爆弾投下)


『ブルームーン04(フォー)Bombs away(爆弾投下)!』


各2発ずつ、合計16発のLJDAMが投下された。

レーザー誘導とGPSの複合誘導によってより正確さを増した小直径爆弾(SDB)は、寸分の違いもなくダムに吸い込まれる。


命中したダムの上空を低空で通過(ローパス)する。


しかし、爆弾は1発も爆発せず、何の変化もない。



その頃、位置に着いて待機していた陸軍特殊部隊、ハンナ・オークスがガジェットのスイッチを入れた。


内部で6発のC4爆薬、そして遅延信管をセットしてあった16発のGBU-39がほぼ一斉に爆発した。


ダムの堤が跳ね、堤を構成していたコンクリートが崩れ落ちる。

同時にそのコンクリートの隙間から濁流が押し寄せ、コンクリート塊を呑み込んで膨大な量の瓦礫となって流れ出る。

ダム湖側では、決壊した堤防の隙間に水が押し寄せ、衝撃によって沿岸に津波が発生していた。


「っぶね……」


「間一髪……」


大量の水が流出したためそれに伴い周囲の山が崩れ始めるが、移動した陸軍特殊部隊を巻き込むギリギリだった。


しかしダムの破壊には成功、決壊したダムから流れ出た大量の水がその堤を構成していたコンクリートを大量の瓦礫として対空陣地諸共押し流す。


丸ごと呑み込まれた対空陣地から爆発が上がる、おそらく対空ミサイルや他の砲弾に瓦礫がぶち当たったのだろう。

被害を受けたのは対空陣地だけでは無い、ダムの堤を破壊した事によって滑走路として使えなくなり、敵の航空機が発進できなくなる。

既に発進した機もある為、その機は帰投出来なくなったのだ。


戦闘機の機内にも轟々と音を響かせ、ダムの水位はドンドン下がって行く。


『こちらS・C(シエラ・チャーリー)、ダムの破壊を確認』


Roger(了解)、我々はこれより砲台へ向かう、オーバー』


『了解、お気をつけて』


8機のF-22Aラプターは、低くなりつつある湖面を低空で飛行しつつ、今度は上流の渓谷へと飛び込んでいった。


===========================


特殊部隊がダムを強襲する少し前の事。


『フレーイ01(ワン)、FOX3!』


『フレーイ02(ツー)、FOX3!』


野戦滑走路を攻撃に向かった連合編隊も交戦に入った。

先行するユーロファイターから、AIM-120C-7 AMRAAMが発射される。

同時に敵機も中距離AAMを放ってくるが、近代化改修によって搭載されたAESAレーダーで電子妨害、ヨルジア空軍のEA-18Gやフランデンベルク空軍のトーネードECRも妨害電波を発しながら回避行動に移る。


AA-12"アッダー"中距離空対空ミサイルを回避、全力の電子妨害と回避機動のお陰で味方の被撃墜は免れる。


『敵機を識別!Mig-35が16機!』


『こちらも確認!野戦滑走路からMig-35 8機が出撃した!』


『ダム方面よりSu-27 8機!』


大混戦だ、空中接触に注意しつつ、格闘戦に持ち込む。

ユーロファイターが中心線下に装備されていた増槽を投棄、ダム方面より接近中のSu-27へ向かっていく。


ヘッドオン、旋回。

ドッグファイトに突入する、旋回を繰り返し、双方とも敵の背後に就こうとする。


ユーロファイターはカナード・デルタの構成で高い機動性を誇り、その格闘戦能力はF-22Aに次ぐとも言われている。


鋭い機動でSu-27の背後をとる。


『FOX2!』


パイロットはFOX2をコールし、IRIS-T短距離空対空ミサイルを発射。


ロケットモーターに点火してマッハ3にまで加速したIRIS-Tは命中したSu-27を粉砕した。


別のユーロファイターはマウザーBK-27 27mmリボルバーカノンでSu-27の主翼を噛み砕き、敵機は火を吹いて墜ちていく。


ラベリア空軍のF-15Eと、レイレガリア空軍やフランデンベルク空軍のトーネードIDSが同空軍のユーロファイターやF-15Cの援護を受けて敵野戦滑走路へと進入、トーネードが上空を通過すると、ハードポイントから幾つもの弾体が投下される。


投下された弾体は空中でパラシュートを開き、暫く空中を漂うが次々とロケットモーターが点火、滑走路へと突き刺さって爆発、クレーターを作り出す。


使用した爆弾は、BLU-107デュランダル。

複数投下された滑走路破壊爆弾によって滑走路にぽっかりと幾つもの大穴が空き、滑走路は使用不能になった。

対空砲火も上がるが、ラベリア空軍のF-15Eのレーザー誘導爆弾、レイレガリア空軍ユーロファイターのブリムストーン空対地ミサイルによって沈黙させられる。

空爆目標は庁舎や格納庫にも設定された為、空爆の激しさは増す。


野戦滑走路は完全に破壊され、連合編隊は要塞及び砲台へと機首を向けた。

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