5章第10話 目標への侵入
ダム付近の斜面を敵に発見されぬ様に慎重に降りる。
見張り台には敵兵が2人、隊長のハンナが合図を送る。
程なくして。
「ぐっ……」
2発の減音された7.62×51mmNATO弾が飛来、1人の敵の頭を貫く。
もう1人は心臓辺りを撃ち抜かれた様で、完全に死んでいる訳では無い。
リュートが素早く乗り込み、ナイフでトドメを刺す。
見張り台を制圧、見張り台から降りて合流する。
ダムの正門から堂々と入る訳にもいかないので、ペンチで金網を破って侵入を試みる。
コンテナが雑多に置かれ、そのコンテナを遮蔽物に進んでいく。
幾つかのコンテナを掻い潜ると、先頭のハンナが止まれの合図をする。
ハンドサイン、敵の兵士が6人、コンテナで何か作業をしている様だ。
迂回は不可能、コンテナを回り込んで行っても別の兵が居る。
やり過ごす事は不可能だ。
ハンナからハンドサイン、射撃準備だ。
ACRには減音器が取り付けられている為、ある程度は銃声を抑え、消す事が可能だ。
リュート、ロイ、ケントは頷く。
カウント、3……2……1……
ハンナは角から身を乗り出し射線を確保、セミオートマチックで射撃を開始する。
バシバシッ!ババシッ!バシバシッ!
5人を射殺、1人の兵士が逃げ出すが、逃げる途中に頭が弾ける。
グリズの狙撃だ、これでコンテナ周辺の兵士は一掃した。
しかし、気付かれた可能性が高い。
急いで別の遮蔽物を見つけ、移動。
コンテナの角から銃を出し、警戒しつつ移動。殿のリュートは前だけで無く背後にも気を配る。
人の気配、騒めきが大きくなってきた。
気付かれたか!
一気に突破する。
ダムの堤頂付近に到着、コンテナの陰に隠れる。
と、キュルキュルと履帯がコンクリートを踏みしめる音と、バタバタとヘリのローター音が聞こえて来た。
「嘘だろ⁉︎」
ここが航空機の基地として運用されているというのを裏付ける様に、山の稜線を超えてMi-24D 1機が姿を表す。
そしてコンテナの陰から現れたのは、BMP-3歩兵戦闘車だった。
「伏せろっ!」
瞬間、音が消えた。
コンテナに何かが激しくぶつかる思い金属音や爆発音が辺り一面に響き渡り、爆風が頬を叩く。
コンテナが目の前に転がってくる。
リュートは舌打ちをして顔を上げる。
辺り一面にコンテナが転がり、コンクリートからは煙が上がっている。
上空で未だホバリングしているハインドが空挺兵をロープで降ろしていく。
BMP-3はハッチを開け、歩兵を降車させていく。
「くそッ!大丈夫か皆⁉︎」
「あぁ、大丈夫だ……」
「こっちも……」
「平気だ……ゲホッ!」
ロイ、ハンナ、ケントの全員が無事だ。
ハインドとBMPを相手に生き残ったのだから上等だ。
時たまハインドから垂らしたロープをから空挺兵がロープの途中で落ちる。
バズとグリズの狙撃だ、ここで空挺兵が3〜4人程減るが、まだ6人程が残っている。
「RPG!」
空挺兵がこちらにRPGを向ける、近くのコンテナに隠れると、RPGがそのコンテナの2つ位前に突き刺さる。
爆風によってコンテナが破れ、中身が飛んでくる。
タタタタタタッ!とロイのM249が火を噴き、空挺兵を薙ぎ払う。
「4ダウン!まだ居る!」
「ケント!グレネード!」
「了解!」
ポンッという軽い音と共にケントがMk13でグレネードを発射、着弾してBMPから降車した歩兵を巻き込む。
「3ダウン!あと3人!」
「戻っていくぞ!」
残り3人になった空挺兵が不利と見て、ダムの堤へと撤退に走る。
「逃がすか!」
すかさずハンナとリュートがコンテナから身を乗り出して逃げる背中にホロサイトのレティクルで照準を合わせ、2〜3発発砲する。
レミントンACRの銃口から発射された5.56×45mmNATO弾は減音器でガスが拡散され、音速の3倍程の速度で敵にめり込んだ。62グレインのスチール弾芯の弾丸は敵の背中にめり込んで内臓を食い破る。
「ターゲットダウン!」
「敵はまだ来るぞ!」
今度は入り口付近から敵兵が多数接近してくる。
それに上空では未だハインドが旋回しているし、コンテナの間をBMPが駆け回りハンナやリュート達を探している。
敵歩兵はどうにかなるが、ハインドとBMPは現状の火器で対抗するのは難しい。
「……⁉︎ハインドが戻ってきた!」
「隠れろ!伏せろ!」
近くの地面に伏せ、コンテナの近くに隠れた。
再び音が消える。
ロケット弾攻撃を受けたのか、コンテナが吹き飛び中身が目の前に散乱する。
「……」
ハンナの目の前に転がって来たのは____RPG-7V2の発射機と3本の弾頭だ。
ハンナはそのRPGを手に取り、具合を確かめる。
破損している箇所は見当たらず、また弾頭も無事だ。
ハンナはハッと思いつき、6人のチャンネルの無線を点ける。
「RPGを拾った、これからハインドを撃墜する、全員はエンジンとコックピットに火力を集中させろ、BMPに見つかるなよ!いいな⁉︎」
『了解』
『了解!』
ハンナは起き上がり、迫り来る敵歩兵を撃つ。
隙を見てRPG-7V2に弾頭を挿し込み、発射準備を整える。
あとはハインドが戻って来るまでに歩兵を一掃出来ればいい。
ハンナのライフルが弾切れを起こす、すかさず再装填。
マグキャッチを押して空のマガジンを外してダンプポーチへ放り込む。
腰のロープロファイルブラストベルトの左側にあるFASTマグポーチからP-MAGを1本取り出し、ライフルに差し込んでボルトストップを押す。
再装填完了、再び射撃開始。
「ハンナ!ハインドが戻ってきた!」
「よし!やれ!」
ハインドが戻って来ると同時に敵歩兵を全員射殺、火線はハインドのコックピットとエンジンに集中する。
特に激しく銃撃を浴びせているのは狙撃のグリズとタクマ、そしてM249を持つロイだ。
ハインドは激しく銃撃を振りほどこうと機体を振り回して逃れようとするが、それを逃さない。
ケントがグレネードを発射、機体の近くで爆発が起こり、ハインドの機体から黒い煙が上がり始める。
ハンナがその瞬間、RPG-7V2を持ってコンテナから飛び出し、照準。
引金を、引く。
バヒュッ!と弾頭が飛び、真っ直ぐハインドへ突っ込む。
エンジンへ命中、爆発により火の手が上がったハインドはそのままダムの壁に機体を擦り付けながら谷底へと墜落していく。
「ハインド撃墜!」
「不味い!BMPに気付かれた!」
BMP-3がコンテナの陰から姿を現し、100mm低圧砲を撃って来る。
「ぐぅわっ!」
「ロイ!」
ロイが爆風に煽られ、ダムから落ちそうになる。
咄嗟に折れて飛び出ていた金網の支柱に捕まってぶら下がる。
手を離せば100mも下の谷底に真っ逆さま、命はない。
かと言ってよじ登ればBMP-3の砲火の餌食になる。
BMP-3が履帯を踏み鳴らし、縁へと近づく。
既にハンナ達は行動を開始していた。
コンテナに隠れながらRPGに新たな弾頭を差し込む。
もっとも装甲の薄い背面までゆっくりと近づく。
BMP-3が縁に到着、ロイを始末しようとするが、主砲も同軸機銃も、上部の機関銃も射線が取れずにふらついている。
諦めて自分の手で殺害しようとしたのか、車長が降車。
トカレフ拳銃をホルスターから抜き、引き金に指をかけた。
その瞬間、車長の後頭部に銃弾がめり込んだ。リュートのACRが放った5.56mm弾が脳みそをかき回し、車長を機能停止させる。
そのまま力を失った車長が谷底に吸い込まれていく。
気がついたBMPの砲手が砲塔を旋回させるが、もう遅い。
50m後方から放たれたRPG-7V2の弾頭がハンナの手によって発射され、成形炸薬弾がBMPに突き刺さり破壊した。
ハンナはRPGの発射機を棄て、燃えるBMPを尻目に周囲を警戒する。
リュートがロイに手を伸ばす。
「大丈夫か⁉︎」
「ああ、大丈夫だ。危なかったがな」
ロイはリュートの手を掴み、引き上げられる。
「よし、任務続行だ、行くぞ!」
「了解!」
4人がハンナに着いてダムの中程まで進む。
途中で飛び出して来た兵士には全員弾丸を叩き込み、滑走路となっている堤の上に横たわるか、ダムから落ちて谷底へと呑み込まれていく。
ダムの外側の階段を下り、中へと侵入。
「こちら1-1、内部に侵入、どうぞ」
『了解、気をつけて』
外の狙撃隊に通信を送り、脱出まで監視を行ってもらう。
中は少し入り組んでいる為、慎重に進む必要がある。
階段を下り、廊下を走ってダムの中心部へ。
まず1つ目、設置型のC4爆薬を仕掛ける。
2つ目を仕掛ける為に階段を下り更に深部の中心へと向かう。
「敵だ!」
敵は発見次第、撃つ。
「仕掛けろ!」
「分かった」
リュートが設置型のC4爆薬を仕掛け、スイッチを押す。
「完了!」
「戻るぞ!」
階段を登り、上へと戻る。
3つ目、4つ目、5つ目は堤頂付近の中心に3箇所、そして撤退の最中、廊下の途中にもう1箇所を仕掛ける。
「後ろから敵歩兵!」
殿のリュートが後方から接近する敵兵に弾丸を浴びせ、後ろのベルトからM67手榴弾を取り出す。
遮蔽物が多い為、こう言った場所でM67破片手榴弾は効果を発揮する。
ピンを抜き、レバーを飛ばして投げ返されないタイミングを見計らって投擲。
床で1度跳ねたのを確認して角を曲がる。
ドカン!と派手な音を響かせて手榴弾が爆発、破片を撒き散らして敵兵を圧倒する。
元来たルートを戻り、敵を容赦無く射殺しつつグリズとタクマと合流する。
そしてバックパック式の無線を入れ、空軍のパイロットに無線を入れる。
「こちらS・C、爆薬設置完了どうぞ」
『こちらミーティア・リーダー、了解、侵入する』
「おいハンナ、ヤバいぜ、移動しよう」
「OK、敵にバレるからね、移動しよう」
6人はその位置から移動を開始した。




