5章第7話 ひっくり返る戦況
増槽を落としたF-22Aは、その機体を捻り、手近なSu-35に狙いを定める。
F-15と互角以上に戦えていたSu-35を軽々と落とす。
機体性能の差もあるが、パイロットの腕の差が顕著に出る。
何しろ、エルヴィン・ハルトマンとレオンハルト・バルクホルンは、教導訓練時、F-15のアグレッサー12機を同じF-15 2機で相手取り、全てを"撃墜"。
訓練終了後、アグレッサーにスカウトされた程の腕前の持ち主だ。
そんなパイロットがF-22を手に入れたら、まさに水を得た魚だ。
レオンハルト・バルクホルン大尉・レオンは、後ろに付いたSu-35に対して旋回、推力を絞りつつローリングで相手を惑わせ、後ろをとる。
AAM-5を発射し、撃墜する。
エルヴィン・ハルトマン大尉・ライガーは、フランカーのお家芸である"コブラ"の発展型、"クルビット"を披露してあっという間に後ろに回る。
戸惑っている敵機に機関砲を浴びせ、ガンキルした。
戦況はひっくり返る。
F-22Aが到着してから1分もしないうちに、3機のSu-35が撃墜されたのだ。
F-15もボーっとしている訳では無く、F-22出現に驚いているSu-30MKやMig-29に狙いを定め、攻撃を始めた。
動揺から立ち直れない敵機は簡単に背後を取られ、堕ちていく。
何とか離脱出来た機は離脱していく。
ハルトマンは3機目の獲物を見つけ、喰らい付く
ライガーに目をつけられた哀れなSu-30MKは、フレアを散らしながら機体を振り回すが、F-22は見つけた獲物を離さない。
『FOX1!』
サイドスティック式操縦桿の引鉄を引くと、右翼付け根の機関砲カバーが開き、M61A2が火を噴いた。
曳光弾が伸びていき、Su-30MKの主翼とエンジンに穴を空けまくる。
機関砲弾がエンジンにまで到達した事により機体が爆発、煙と炎を引きながら墜落。
残りの機体はばらけ、戦闘空域を離脱していく。
『こちらエターナル、半径200マイルに敵影は無い。戦闘終了、帰投しろ』
『Roger、4番CAP帰投します』
CAP隊は編隊を組み直し、マスターアームを切って基地へと帰投した。
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基地へと帰投すると、予備の誘導路にF-15CJイーグルが消火剤まみれになっていた。
周りには複数の航空消防隊の消防車が見える。
『こちらガルシア・タワー、クリアード・トゥ・ランド、Wind2-2-5at3』
『Roger、オーバーヘッド・アプローチ、カウント3』
そう無線に呼びかけたF-22ライガー機が滑走路を1度通過した後左に旋回。
3秒の間隔を開けて次々と旋回している。
ユニスも旋回、新米パイロットだとタイミングがズレたり、尾翼がバタついたりとみっともない事になるが、ユニスはもうそんな事になるパイロットでは無い。
ギアダウン、フラップス・15。
スロットルを少しずつ絞り減速、ゆっくりと高度を下げる。
180度回頭、飛行場上空を1周旋回して滑走路へ進入する。
13度の機首上げを保ちつつ降下……ランディング。
メイン・ギアが地面を捉えたした衝撃がコックピットに響き、エアブレーキを全開にする。
空気抵抗で少しずつ滑走中に減速し、ノーズ・ギアも接地。
充分減速したらラダー・ペダルを踏んで誘導路に入る。
駐機の位置に機体を進ませ、ステアリング・ブレーキで機体を完全に停止させる。
エンジンカット、火を落とす。
任務完了、ユニスは自分の酸素マスクを外し、ヘルメットを取って風防を開けた。
整備士がラッタルをコックピットに掛け、それを伝って下りる。
「お疲れ様です、ユニス少尉」
「ありがとう、機体をお願い」
ユニスは駆け寄ってきた整備士に敬礼をし、消火剤まみれのF-15CJのパイロットの無事を祈りながらブリーフィングルームへと戻る。
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戻るなり、ユニスは溜息をついた。
「中尉……大丈夫だったんですか⁉︎」
「おう、おかえりフレミング少尉」
被弾した機のパイロットの中尉が普通に座っていたからだ。
「心配しましたよ……」
もう一度大きな溜息を吐くユニス。
話によれば、破片が機体に食い込んだが飛行には支障は無く、着陸しようとしたらエンジンから火を吹いたそうだ。
緊急事態をコールしていたので消防車が待機、火災は間も無く消し止められ、パイロットも自力で脱出出来て無事だった。
しかし、F-15CJは被弾している為、本国へと輸送機で運ばれ修理される。
その間は本国から予備機が運ばれてくる。
「ま、無事で良かったじゃないですか」
「だろ?と言う訳で食事に行こうぜユニスs」
「お断りします」