1章第4話 撤退開始
すみません、今回の話長いかも……
海岸線に出ると、MV-22Bが丁度降下してくるところだった。
接地後、カーゴドアが開き我々を迎え入れる。遺体と負傷兵を収容し、エリス達も乗る、が、グルーバキアの兵士2人はなかなか乗ろうとしない。
エドワーズが声をかける。
「何をしているんだ、早く乗れ!」
「いいや、我々はここで奴らを食い止める」
「あんた方は重要参考人だ、連れて帰らない訳にはいかない!」
「我々には奴らの攻撃を許してしまった責任と、それを阻止する義務がある」
ぐわぁ!と話していた年配の隊員が被弾する。エドワーズはコックピットへ叫んだ。
「グルーバキア隊員1名負傷!収容する!」
無事な隊員と共にグルーバキア陸軍の隊員をMV-22の機内へ引き上げる。
「あんたも早く来い!」
しかし、隊員は首を振る。その時、銃弾が頭部に命中した。
エドワーズは息を飲む、が、幸いな事に銃弾は直撃せず、ヘルメットを弾いただけだった。安堵したが、今度は別の意味で驚いた。
ヘルメットから溢れる長髪の-----
「女⁉︎」
隊員は叫ぶ
「早く離陸しろ!」
「あんた残して行けるか!」
「私が女だと信用出来ないのか⁉︎」
「違う‼︎早く乗れ!あんたで最後だ!」
「グルーバキア陸軍のプライドにかけて、ここは死守する!」
「いいから早く!死んじまう!」
「私はもうここでいい!諦め「アホかあんたは!」っ⁉︎」
「責任だ⁉︎どうでもいい!そんなもん追求する奴なんかもう居ない!プライドだ⁉︎んなモン捨てちまえ!良いから早く!」
女性隊員は泣きそうな顔で振り向き、何かを呟く、唇の動きから「いいのか?」と言っている様だ。
「早く!」エドワーズは手を伸ばす、女性隊員も手を伸ばし、その手を取る。
取った。
エドワーズは素早くその手を引き、女性隊員をキャビンへ引き込んだ。
「全員収容!離陸しろ!」と叫び、MV-22が浮き上がり、離陸した。
離陸した直後、藪から敵兵が現れた。マズルフラッシュからこちらに発砲している様だったが、ハリアーの機銃掃射が横から敵兵数名を薙ぎ払った。
脅威が去ると、キャビンは安堵に包まれる。
エドワーズは、知らぬ間に女性隊員を抱きとめていた様だ。
女性隊員は顔を上げて向き合い礼を言った。
「ありがとうございました、軍曹」
エドワーズは照れ隠しか、「礼はいい、もうあんな無茶するなよ」とややぶっきらぼうに言った。
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任務艦隊、LPDDH-201"やくも" CIC
このLPDDH"やくも"は、キエフ級重航空巡洋艦の様に艦首側の甲板に武装を施し、アングルドデッキの飛行甲板を備え、ドック型揚陸艦の様な運用方法をする艦で、他国ではヘリ空母若しくは揚陸指揮艦に分類されている。
幅広い運用を前提に、垂直発射装置や先進砲システムを搭載し、司令部機能を付与した。
今回の作戦では旗艦として指揮を採り、回収チームの本部もこの艦にある。
現在、データリンクを通じてイージス艦のAN/SPY-1Dレーダーとリンクしている。
そのレーダーに不明船の反応があったのは15分前ーーーーーーーーーーーー
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「ん?」
CIC員が湾口から直進してくる不明船をレーダーで捉えた
「砲雷長」砲雷長を呼び、報告する。
「何だ?」
CIC員が応える
「水上レーダー探知、方位1-8-6、距離98000、数2、かなり小さい反応です」
右舷側からの反応だ。
「漁船か?しかしこの海域は封鎖中、周辺の漁協にも勧告したはずだが…」
「進路変更が無い場合、約100分後に本艦と衝突するコースをとっています」
砲雷長は顎に手を当て「ふぅむ……」と考え、言った。
「一先ず、警告しておいてくれ」
「了解しました」
CIC員はチャンネルを開き、警告を開始した。
『警告、警告、方位1-8-6の不明船に告ぐ、貴船は我々の作戦海域への接近を試みている、直ちに進路を反転し、離脱せよ、作戦の場合は作戦内容を明らかにせよ、応じない場合、貴船の安全は保証しない。繰り返す……』
3回程繰り返した後、不明船は停止した
砲雷長「止まったのか…?」
その時、電子戦員が叫んだ。
「ESM探知!対艦ミサイル接近中!」
不明船から、対艦ミサイルが発射されたようだ。
砲雷長が驚く「間違い無いのか⁉︎」
「間違いありません!対艦ミサイル更に接近!」
CIC員は「砲雷長…!」と引きつった顔を向ける。
砲雷長は決断する
「総員、対空戦闘用意‼︎」
CICの中に居る総員が弾かれた様に動き出す。
「対空戦闘よーい!」
艦内にカーン、カーン、カーンと警報が鳴り響く。
「トラックNo.1305、シースパロー、イルミネータースタンバイ!ミサイルを捉え次第発射しろ!」
レーダー上では、不明船は敵性と判断され、不明船を示すカーソルが赤く[ENEMY]と表示され、既に2発目の対艦ミサイルが発射された所だった。
対空戦区画に居るCIC員が「イルミネータースタンバイ完了!シースパロー発射始め!サルボー!」
タッチパネルの[Launch]をタップし、アイコンが黄色く光った。
同時に、武装甲板上のMk41Mod15垂直発射装置から、RIM-142 ESSMシースパローが2発、発射された。
シースパローは上昇した後急激に向きを変え、対艦ミサイルの発射された方角へ音速の3倍で向かう。
イージス艦である"ノア""いなば"もシースパローを打ち上げ、迎撃を行う。
そしてシースパローは対艦ミサイルにぐんぐん接近して行き……
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「インターセプトまで15……10、9、8、7、6、5、4…スタンバイ!」
CIC員がカウントする。
レーダー画面上の対艦ミサイルにシースパローの表示が重なった。
「マークインターセプト!」
レーダーから対艦ミサイルが消える、対艦ミサイル1発目を撃墜した。
その間に、敵船2隻は計15発のミサイルを発射していた。
CIC員が撃墜報告と更なる目標の報告する。
「トラックNo.1305、撃墜!」
「トラックNo.1306から1317、ノア、いなばにより撃墜!」
「トラックNo.1318から1321、真っ直ぐ突っ込んで来る!」
砲雷長が叫ぶ
「シースパロー次弾発射!間に合わない場合は護衛の艦砲とRAMで対処!」
「シースパロー照準、間に合いません!」
「目標との距離、18000を割り込みました!」と、ここで12発目が"いなば"の127mm砲によって撃墜された。
「トラックNo.1318、撃墜!」
「トラックNo.1319、1320、RAMの射程に入ります!」
砲雷長が更に指示する。
「RAM、CIWS、AAWオート!」
右弦側1番、2番の張り出しに装備されているMk15 mod31SeaRAM11連装発射機からRIM-116RAMが発射された。RAMは発射された後、マッハ2.5まで加速し、対艦ミサイルを撃墜した。
「トラックNo.1319、1320、撃墜!」
砲雷長はRAMの次弾発射を指示する。
同じスポンソンのRAMから2発目のミサイルが発射、先程と同様に対艦ミサイルを撃墜した。
「目標、全弾消滅」
砲雷長は水上戦の指示を出す。
「了解、全艦、対水上戦闘!」
随伴艦の"ノア""いなば""あかつき"にも発令された。
「トラックNo.1240!」
目標を設定した所で、回収チームの本部へ連絡を入れた。
「全く…何処のどいつだ?こんな…」
砲雷長は呟き、スクリーンに向き直る。
揚陸艦の戦闘指揮所ってCICで合ってますかね?それともCDC?
7/27 登場人物の名前を修正しました。