5章第5話 空中哨戒待機
ガルシア島飛行場。
今日の空中哨戒待機は、F-15CJ 4機にF-22Aが2機付くという。
その事を聞いて、ユニス・フレミング少尉はそわそわしていた。
「フレミング少尉、大丈夫か?」
「だって!F-22と一緒に飛べるんですよ⁉︎はぁ〜、私、空軍に入って良かった……」
一緒に飛ぶF-15CJの仲間が爆笑する。
「まぁほら、CAPだからさ。緊張感は保ちつつ、気楽にいこうぜ」
「あれ……?あの人達今日のCAPで上がるラプターパイロットかな?」
ユニス少尉はバッと振り向くと、背の高い金髪の男性パイロットと、黒髪のパイロットが話しながら部屋に入ってきた。
「今日一緒に飛ぶのってエルヴィン大尉とレオンハルト大尉か……」
「一安心だな、ユニス少尉……って聞いてねぇし……」
ユニスは目を輝かせ、2人を見つめる。
「おっ、君達が今日のCAPに一緒に行くイーグルドライバーかな?」
「「「「はっ!」」」」
4人のイーグルドライバーは立ち上がり、敬礼をする。
「ハルトマン大尉とバルクホルン大尉と共に飛べるとは、光栄の極みであります!」
「爺さん達みたいに呼ばないでくれ、俺達はあんな英雄でも無いし何かこそばゆい」
そうは言っても、ラプターパイロットは戦闘機パイロットの憧れだ。
機体の性能を最大限に引き出す為、それ相応の技術が必要になる。
『4番CAP、出撃準備に入れ』
「ほら、準備だ。行こう」
「「「了解」」」
既に駐機場に機体が準備されている。
増槽を3本、AAM-3を4発、AAM-4を4発搭載したF-15CJと、増槽を2本、AAM-5を2発、AIM-120D-6 AMRAAMを6発搭載したF-22Aへと乗り込む。
地上整備員の助けを借りて、エンジンスタート、計器をチェックして機体各部に異常が無いか調べる。
操縦桿を動かし補助翼をチェック、問題無し。
整備員がミサイルの安全装置を解除、これでミサイルはホットな状態となる。
リドリス国境付近まで飛び、空中哨戒を行って帰投するのが今回の任務だ。
ここ数日、国境付近までクーデター軍は後退し、再反撃の準備に取り掛かっているという。
現在のCAPは、エリーザ、フランデンベルク、レイレガリアとヨルジアの4ヶ国が交代で受け持っており、3番CAPはレイレガリアの隊が上がっている。
誘導路をタキシング、離陸に到着、管制塔からの指示を待つ。
『こちらガルシア・タワー、4番CAP、離陸を許可する。上空の天候は晴れ、方位2-1-0の微風あり』
「了解、ブルームーン01、ランウェイイズ・クリアー。テイクオフ』
『02、テイクオフ』
エルヴィン・ハルトマン_____ライガー
レオンハルト・バルクホルン_____レオン
2機のラプターが先立って離陸する。
『スワロー01、テイクオフ』
『スワロー02、テイクオフ』
ラプターに続き、イーグルが離陸していく。
アフターバーナーを全開にし、凄まじい推力で、スマートなラプターとはまた違った力強い離陸を見せる。
ユニス・フレミング少尉のコールサインは"スワロー03、TACネームは"レフティ"だ。
由来は彼女の姓、"フレミング左手の法則"からだ。
特に彼女が左利きだという事はない。
『スワロー03、テイクオフ!』
アフターバーナーを開き、推力を増しながら滑走路に機体を走らせる。
徐々に速度が上がっていき、V1、VR、V2。
ギア・アップ、着陸脚を格納する。
油圧によって3本の脚が跳ね上がり、機体内部に格納されて空気抵抗が小さくなる。
空気抵抗によって生じていた揺れが収まり、ユニスはイーグルの機体の全てを握った感覚に陥る。
上空で編隊を組み直し、6機のCAP機が集まる。
約3時間のCAPが始まった。
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現在では、グルーバキアが使用している爆撃機着陸可能な滑走路を持つ飛行場は1つだけ。
国境から程近いため、そこの監視が主な任務だ。
今は戦力を温存しているためか、越境してちょっかいを出してくる事は少なくなった。
しかし、そういう時だからこそ、油断は出来ない。
だからこうして、空中哨戒待機を行っているのだ。
中高度を飛ぶイーグル4機の編隊の遥か上空をラプターが監視する。
AWACSの支援の下、ここ一帯を飛ぶ国籍不明機を見つけて退去、もしくは撃墜する。
『こちらブルームーン01、現在レーダーはクリア』
『スワロー01、了解。こちらも今の所クリア』
国境に沿うように飛行し、敵の警戒監視に勤める。
風防から下を見下ろすと、地上は砂漠と山しか見えない。
『そろそろポイントだ、ターン・ヘディング0-0-5』
『ラジャ、ヘディング0-0-5』
編隊長の号令と共に操縦桿を捻って順に旋回していく。
旋回が終わると、先程の編隊を維持しつつ0-0-5目指して飛ぶ。
AWACSのリンク画面を見ると、F-22は確実についてきている。
その時、AWACSからの通信が入る。
『こちらエターナル、方位3-4-0に0-1-0へ向かって飛行する不明機をキャッチ。インターセプトしろ』
『Roger、向かいます』
ほぼ同方向に向かう不明機の反応を捉えたAWACSから通信が入る。
向こうも当然ながらレーダーが使える、気付いているか、気付いていなければ気付くのは時間の問題だろう。
AWACSからの誘導を受け、4機のイーグルは進路を変える。
操縦桿を倒し手前に引くと、身体にのしかかるGが追加され、視界が傾いて影が動く。
旋回しているのがわかる。
敵の方へ進路を固定すると、機体を操って不明機を追う態勢に入る。
スロットルを開けて推力を増し、相対速度約80ノットで追跡を開始した。
アフターバーナーを焚き、接近していく。
10分もしないうちに敵機を発見した。
スワロー01がAWACSに報告を入れる。
『スワロー・リーダーよりAWACSへ、不明機を目視確認。Su-34 2機とSu-30MK 4機。国籍マークはグルーバキアの物だ』
『エターナルよりスワロー・リーダー、インターセプトしろ、直ちに退去させ、命令に従わない場合は撃墜を許可する』
『Roger、スワロー01と02が前へ出る。他は後方で待機しろ』
『Roger』
方位0-0-5に目標を視認し、後方上空からゆっくり接近する。
スワロー各機が赤外線パッシブ誘導ミサイルの射程に目標を捉え、スワロー01、02が降下して前へ出る。
敵が撃とうとすれば直ぐに撃墜される可能性のある危険なポジションだ。
ユニス少尉の額を一筋の汗が流れる。
こちらも撃とうと思えば直ぐに撃墜出来るポジションを取った、AAMでも機関砲でも、指先を動かすだけで敵機を撃墜出来る。
『不明機へ告ぐ、我々はヨルジア空軍機である。ここは有志連合軍の制限空域である、直ちに転針し空域を退去せよ。従わない場合は軍の基地へ強制的に着陸させるか、貴機を撃墜する』
スワロー01が警告を開始、国際無線チャンネルでSu-34とSu-30に呼びかける。
1度の警告をすんなり受け入れたのか、空域からの離脱を図る目標機。
旋回し、スワロー隊から離れていく。
拍子抜けするほど早く片付いた為、操縦桿を握る力を少しだけ抜く。
だが。
『ミサイル警報!ブレイク!ブレイク!』
空対空ミサイルが、スワロー隊を襲った。




