4章第9話 Operation GONG〜艦隊の戦闘〜
今回は海軍艦艇の活躍回です。
少々地味な気がしないでもないですが、対空戦闘の緊迫感を楽しんでいただけたら……
航空隊が発艦し、沿岸10kmの地点で地上への揚陸を行っている海軍第1遠征打撃群と、その沖合をぐるぐると一定の速度を保って旋回航行している第2空母打撃群には、新たな敵影が迫っていた。
イージス駆逐艦DDG-171オラシオンは既にレーダーに敵を捉えていた。
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「ESM探知!対艦ミサイル接近中!」
200nm遠方から放たれた60発もの対艦ミサイルの誘導電波をESMが探知。
続いてイージスの目となるAN/SPY-1Dフェイズドアレイレーダーがミサイルと発射したプラットホーム_____航空機を探知した。
探知した目標はデータリンクを介して全ての艦艇に送信され、全艦が情報を共有する。
「目標、P-270モスキート間違いなし!」
「ECMアクティブ!」
「ECMアクティブ!アイサー!」
砲雷長の指示にECM担当のCIC員に命令し、ECMをパッシブモードからアクティブモードに切り替える。
同時に、空母"ずいかく"のスクランブル機が発艦態勢に入り、カタパルトにセットされる。
電子妨害、アクティブモード。
環境上部のECMから強力な妨害電波がミサイルに浴びせられ、レーダーを目潰しする。
60発の内10発が、あらぬ方向へと飛んで行って墜落した。
しかし、敵機はそれを嘲笑うかの様に追加で30発のミサイルを発射、そのうちECMに4発が潰されたが、第1波と合わせて74発のミサイルが艦隊へ迫ってくる。
しかも大量のミサイルはECMを受けて探知しにくい低高度へと降下し始めた。
「スタンダード対空ミサイル発射始め!同時発射!」
対空ミサイル担当のCIC員が画面をの発射アイコンをタップした。
各艦が迎撃を開始、Mk41VLSの蓋が幾つか開き、艦の前後が火を噴く。
RIM-156 SM-2ERが発射された。
ほぼ1秒間隔で発射されたSM-2は、オラシオンだけで12発。
空母を護衛する他の駆逐艦や巡洋艦もSM-2を発射し、遠征打撃群の防空担当艦もSM-2を打ち上げる。
P-270は音速を超える速度で突進してくる。ミサイル攻撃は3波が限界だろう。
そう判断した各艦の指揮官が、1度目の迎撃で出来るだけ迎撃してしまおうと考えたのだ。
その為、何と100発以上ものSM-2が発射されて宙を舞う。
垂直に発射されたミサイルは空中で急激に向きを変え、誘導レーダー波に乗って敵のミサイルへと突っ込んでいく。
毎秒600m以上もの速度で進むSM-2が命中するまで20秒程、合計32発のSM-2第2波が放たれた。
「インターセプト5秒前、3……2……1……マークインターセプト!」
ミサイル同士が交差、命中。
艦艇からは見えず、レーダーでしか見えない水平線の向こうで幾つもの炎が生まれる。
レーダー画面上で、こちらに向かって来ていたミサイルが大きく減少する。
CIC員が叫ぶ。
「56発命中!残り18発、第2波インターセプトまで10秒!」
大半のミサイルが撃ち落とされ、残りがこちらに向かってくる。
5……4……3……2……1……
「マークインターセプト!」
第2波のミサイルが命中。再び爆炎が広がる。
「敵ミサイル12発命中!残り6発!真っ直ぐ突っ込んでくる!」
砲雷長はスタンダードミサイルでの迎撃は間に合わないと判断、シースパローでの迎撃命令を下す。
「シースパロー発射始め!同時発射!」
担当のCIC員が画面をタップ、今度はESSMシースパローだ。
Mk41VLSの1セルに4発入るシースパローが各艦から2発ずつ、空母のVLSからも発射され、14発のシースパローが敵対艦ミサイルに襲いかかる。
飛び出したシースパローは空中で急激に向きを変え、イルミネーターレーダーの電波に乗って誘導、全弾を迎撃した。
「目標、全弾消滅。迎撃成功です」
『こちらアウル01、脅威の航空機編隊を発見した、これより攻撃に移る』
「了解」
緊急発進した艦載機F/A-18Eが対艦ミサイルを発射した機を発見、100nm以上先の上空で航空戦に入る。
とその時、新たにソーナーCICからの無線が入る。
『ソーナーCIC、目標探知!潜水艦4隻!』
「それはDD-135に回せ!」
『アイサー!』
ソーナーCICから敵潜水艦出現の報告が上がり、艦長が対潜水艦担当の駆逐艦、DD-135ヴァルキリーに回す。
対空戦闘の次は対潜戦闘が始まる。
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DD-135"ヴァルキリー"CIC
『ソーナーCIC、敵潜水艦を探知、4隻、魚雷発射管に注水している模様!』
「全艦に通達!自走破壊デコイ投下始め!プレーリー・マスカー発動!」
「アイサー!」
その命令が全艦に通達されると、喫水線下から気泡が吹き出す。
全艦が気泡を吹き、主機の雑音をカットする。
プレーリー・マスカー防御装置は、この様に細かい気泡を発生させて主機の雑音をカットし、魚雷の探知を出来るだけ避ける為の対魚雷防御システムだ。
同時に艦の側面にある即応発射装置から自走破壊デコイが3発、1隻につき6発 発射。
ヨルジア軍が独自開発した魚雷に対する迎撃用の魚雷の様な物だ。
自走破壊デコイの投下が終わると、曳航デコイが艦の後部から吐き出され、魚雷防御網が出来上がる。
CICでは、対潜戦闘の指示が飛び交う。
「対潜戦闘用意!」
「対潜戦闘、VLA、座標設定始め!」
垂直発射装置のVLAに目標の正確な座標を割り出して設定し、攻撃準備。
更に後部短魚雷発射管に短魚雷を装填し、短距離まで潜水艦が接近した場合に備える。
「魚雷音聴知!方位0-1-0、0-2-0、1-4-3、2-7-6!、距離、20、25、17、22!数は各4発!」
『各艦、回避運動、面舵一杯!』
艦隊が一斉に回頭を始め、回避運動を始める。
魚雷が接近、自走破壊デコイがそれぞれの魚雷に向かって海中を走る。
魚雷のソナーはデコイを捕捉し、釣られて向かっていく。
水中でデコイと魚雷が正面から衝突。
魚雷の炸薬が爆発して海水を膨張させ、艦隊の外縁の水面では凄まじい水柱が上がる。
水柱の数は15、1発がすり抜けた。
CIC員が叫ぶ。
「方位1-4-3の魚雷、一発すり抜けた!」
「DDG-166に魚雷接近!」
DDG-166は素早く反応、後部格納庫の上に装備されているMk15 CIWSを発砲。
毎分4000発の勢いで20mm機関砲弾が海面に向かって吐き出される。
やがて、大きな水柱が1つ上がり、DDG-166から魚雷迎撃成功の通信が来る。
息つく間もなく、DD-135の砲雷長の命令が飛ぶ。
「VLA発射始め!同時発射!」
対潜火器担当のCIC員が画面をタップ。
前部甲板から4発のVLAが発射され、方位0-1-0と0-2-0の潜水艦へと飛んでいく。
VLAの射程距離は20km以上あり、遠方の潜水艦にも十分対応できる。
方位1-4-3に近いDDG-166と、2-7-6に近いCG-145も2発ずつのVLAを発射した。
暫く慣性誘導によって飛翔したアスロックミサイルは、途中でロケットモーターと魚雷を切り離し、魚雷からパラシュートが開く。
パラシュートで降下した魚雷は着水するとパラシュートを切り離し、アクティブソナーで目標を探して海中を高速で走って食らいつく。
海中に走るノイズ、圧壊音。
対潜担当のCIC員が報告する。
「敵潜水艦の圧壊音を確認、目標撃沈」
『こちらも潜水艦を、撃沈した』
『こちら"つるぎ"!敵潜水艦を撃沈!』
「了解、対潜及び対空哨戒を厳に!」
「アイサー!」
ヨルジア海軍の艦艇は、こうして作戦中に迫る脅威を排除し続けた。
各艦については資料集を参照して頂ければ幸いです。




