4章第7話 Operation GONG 〜軍港空襲〜
注:長めの仕上がりになりました。
ヨルジア海軍第1空母打撃群 旗艦"ずいかく"艦上でも、航空機が発艦準備に入っていた。
これから発艦する機は、空軍と合流し、敵海軍の軍港爆撃に向かう。
カタパルトにセットされたF/A-18Fの機内、コックピット前席に収まっているのは、カンタ・タカハシ中尉である。
後部座席には兵装システムオペレーター(以下WSOとする)のスズネ・シンガイ中尉が座り、発艦前最後の兵装チェックをしている。
「……OKだ、リン、風防を閉めてくれ」
TACネームで呼ばれたスズネは無言でパネルを操作し、キャノピーを閉める。
キャノピーが閉鎖されると、エンジンの音が反響してより大きな音が聞こえる。
「こちらラフライダー2-4、発艦許可を」
『ラフライダー2-4、発艦を許可する。4番目の発艦だ』
「了解」
CVN-22のカタパルトには4機のF/A-18Fがセットされており、制空隊のF-35CとF/A-18Eは既に発艦済みだ。
『ラフライダー2-1、発艦せよ』
『了解、ラフライダー2-1、発艦』
1番カタパルトから隊長機であるF/A-18Fが発艦、その後も順番にF/A-18Fが発艦していく。
任務毎に色違いのベストを着用している通称"レインボー・ギャング"からアフターバーナー点火の指示が出る。
その指示を目視確認し、スロットルをアフターバーナー点火位置へ。
エンジン音が更に激しくなる。
発艦作業員が挙げていた手を下ろし、水平を示す。
その瞬間、40t近い戦闘機が適切な重量を入力した電磁カタパルトによって95mを2.3秒で滑走、パイロットとWSOに凄まじいGをかけて空へと飛び立った。
発艦後は操縦はカンタに一任され、スズネは兵装とレーダーの操作を行う。
カンタは操縦桿を倒して旋回、味方の編隊と合流する。
空爆に向かうのは、編隊護衛のF-35Cが8機、空対空戦闘と対艦攻撃を行うF/A-18Eが12機、空対地爆撃と対艦攻撃を行うF/A-18Fが12機。
途中の合流ポイントで空軍のF-2A 8機とF-15CJ 4機、F-35A 4機が合流する手筈になっている。
ひとまずは合流ポイントまで向かう為、そこを目指して飛び始めた。
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合流ポイントへと到着、海軍戦闘機編隊の右翼側から空軍機が合流する。
制空隊のF-15CJが8機、攻撃隊のF-2Aが8機、F-35Aが4機。
F-2Aは全機、ASM-2対艦ミサイルを4発抱えている為、身重のF-2AをF-15CJが守るような陣形をとり、F-35Aは殿を務めている。
『ドラゴン・リーダーより海軍航空隊へ、一緒に飛べて光栄だ』
『ラフライダー・リーダーよりドラゴン・リーダー、こちらも爆弾抱えて身重だ。攻撃隊を無事に送り届けよう』
『ああ、そうだな』
『こちらライナ・リーダー、早速お客さんみたいだぜ。距離50nm、数18、相対速度2400ktで接近中!』
殿のF-35Aから通信が入る。
敵機が接近中、ステルスでは無いので当たり前に気付かれる。
『敵の軍港まで80nmだ。撃てるミサイルはここからでも撃っちまおう』
『Roger』
空対艦ミサイルを搭載している機体がミサイルの発射準備に入る。
F-35Aは爆装でレーザー誘導爆弾を搭載し、F-35Cは空対空戦闘装備。
F-2Aは前述の通りASM-2シーバスターを4発搭載し、F/A-18Eは2発のハープーンを、カンタ中尉達F/A-18FはハープーンとGBU-24を混載している。
発射するのは対艦ミサイル、シーバスターとハープーンだ。
GPSとリンクさせ、中間誘導を行い、終末誘導はミサイル自身のレーダーによって行う。
『バイパー01、対艦ミサイル発射!』
F-2AがASM-2を発射、ミサイルは暫くは落下するが、ターボジェットエンジンが勢いに乗るとあっという間に音速近くまで加速し、軍港に向かって飛んでいく。
同時にラフライダー隊、F/A-18EとF/A-18FもAGM-84ハープーン対艦ミサイルを発射する。
カンタ中尉もだ。
『リン、頼むぜ』
『了解、ミサイル発射準備完了。ハープーン発射』
大型のミサイルであるAGM-84ハープーンが翼下から切り離され、機体が軽くなる。
ラフライダー隊から発射されたハープーンは48発に上り、F-2Aから発射されたASM-2と合わせると64発にもなる。
大量の対艦ミサイルが軍港へ向かっていった。
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「艦長、作戦時刻です」
空軍が飛行しているルート付近の海域には、作戦に向けて事前にヨルジア海軍潜水艦、SSG-292"すいりゅう"が潜んでいた。
ヨルジア海軍は潜水艦建造技術は世界でトップクラスであり、ここまで気付かれずに接近出来たのもその技術の賜物だといえる。
"すいりゅう"は、かいりゅう型通常動力潜水艦で、背面のVLSにはトマホーク巡航ミサイルを搭載している。
「トマホーク武器システム起動、座標入力」
「アイサー!」
「発射弾数24発、殆ど吐き出してしまおう」
座標入力が完了、準備が終わったトマホークがVLSの中で目を覚ます。
VLSの蓋がゆっくりと開く。
「第1射、撃て!」
発射管制担当士官がトリガーを引く。
第1射のトマホーク8発が、VLSを飛び出して海面に向かう。
海面に飛び出したトマホークはロケットブースターに点火、固形燃料を燃焼させて初速を稼ぐ。
周囲から見ると海面から飛び出すミサイルが無駄に幻想的だ。
充分に速度を上げたミサイルはターボジェットエンジンでの飛行に切り替わり、主翼を展開してM0.9での飛行にはいった。
続いて潜水艦は、第2射、第3射と、24発のトマホークを発射した。
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対艦ミサイルを発射した航空隊は、攻撃隊護衛の戦闘機が空中戦に入る。
中距離空対空ミサイルを持つF-15CJとF-35A、F-35Cは発射準備を行う。
AWACSのレーダーとリンクさせ、中間誘導をAWACSに移す事で発射後即時離脱出来るのだ。
F-15CJが先陣を切る。
『ドラゴン各機、全兵装使用自由。ドラゴン1、FOX3!』
『ドラゴン2、FOX3』
『ドラゴン3、FOX3、ファイア!』
8機のF-15CJがAAM-4"ダーインスレイブ"中距離空対空ミサイルを2発ずつ発射、50nm先の敵を目掛けてM4で飛んでいく。
『ラフライダー1-1、FOX3』
『ラフライダー1-2、FOX3!』
『ラフライダー1-3、FOX3!』
海軍のF/A-18EもAMRAAMを2発ずつ発射、24発もの中距離空対空ミサイルが宙を舞う。
これで合計のミサイルの数は敵機の機数を上回る。
それに合わせる様に敵機編隊も中距離空対空ミサイルを発射、チャフを撒きながら激しく回避機動をとる。
空軍のF-35Aと海軍のF-35CがAESAレーダーによってミサイルの電子妨害を開始、ミサイル自身にジャミングを掛ける。
ジャミングとチャフによって目を潰されたミサイル___R-77"アッダー"を回避、幾つかの近接信管が作動したが、各機に損傷は無い。
一方こちらのAAM-4とAMRAAMは40発中5発が命中、敵機もAESAレーダーによってミサイルを妨害していた様で、敵機の残りは13機となった。
敵編隊は損害を出したが、撤退しようとはしない。
『こちらドラゴンリーダー、不味いな……敵機の数がまだ多い』
『こちらラフライダー1リーダー、我々も空中戦に参加する』
『助かる、敵を抑えよう』
『全機、A/Bオン、行くぞ!』
両者の距離が徐々に縮まって行く。
そして音速の2倍以上の相対速度で交差する。
『ドラゴン1、交戦!』
『ドラゴン2、交戦!』
『ドラゴン3、交戦!』
『ラフライダー1-1、交戦!』
『ラフライダー1-2、交戦!』
『ラフライダー1-3、交戦!』
F-15CJとF/A-18Eは、敵編隊と交差した瞬間にパイロット達は操縦桿を捻り、旋回。
空中戦へと突入していく。
カンタ中尉は風防から外を見回す。
攻撃隊も自機の周囲の敵に気を配らなければならない。
見た所空域に展開しているのはMig-35とSu-30MK、どちらも空戦能力の高い戦闘機だ。
敵は堕とされた仲間の仇と秤に襲い掛かってくるが、まるで練度が違う。
Su-30はF-15CJが相手し、Mig-35はF/A-18Eが相手して連携をとり、次々と撃墜していく。
F-15CJにSu-30とMig-35が襲いかかるが、旋回して躱す。
バレルロール、シザーズでSu-30がオーバーシュートする。
すかさずFOX2、発射されたAAM-3が敵機を貫いて爆散する。
後方のMig-35が攻撃してくる。
R-73"アーチャー"短距離ミサイルを発射、F-15CJはフレアを撒きながら旋回、回避機動でミサイルを躱す_____躱した。
F-15CJパイロットはスロットルを少しだけ絞り、操縦桿を一瞬だけ左斜め後方に引く。
その瞬間A/B 点火。
操縦桿を右に倒してバレルロールに入る。
対高軌道戦闘機用の戦術だ。
一瞬だけ失速させ、オーバーシュートする寸前にアフターバーナーに点火して速度を回復させ、敵機の後ろに着く。
瞬間的だがワザと機を失速させる為、状況を見極めて発動する必要がある。
背後を取られたMig-35は、F-15CJが放った20mmバルカン砲の砲弾によって穴だらけにされて撃墜。
『ドラゴン1、スプラッシュ・ツー』
F-35AやCは、搭載されている電子式光学照準システムによって、後方から近づく敵機に対してAIM-9Xを発射。
発射されたAIM-9Xは直後に急旋回し、"後方の"敵機に直撃した。
F/A-18も負けてはいない。
機関砲と空対空ミサイルを駆使して次々とMig-35を撃墜していく。
カンタ中尉のF/A-18Fにも敵機が襲いかかったが、すぐに味方機が撃墜してくれた。
ハンドサインを出すと、翼を振る。
ヨルジア軍機は1機の損害も出さずに敵機を全機撃墜した。
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空中戦が終わった頃、軍港には対艦ミサイルと巡航ミサイルが着弾していった。
敵艦のレーダーにミサイルが映った時にはもう遅く、出港直後の軍艦は迎撃に入ったが、長距離ミサイルの射程は既に割っており、辛うじて照準出来た短SAMや速射砲、近接防空システムの散発的な対空砲火が上がるだけだった。
迎撃が間に合わない艦は係留中であろうと出港直後であろうとハープーンやシーバスターの対艦ミサイルが突っ込み、施設に次々とトマホークが命中して破壊されていく。
被害を全く受けていない艦など居なかった。
空母、駆逐艦、巡洋艦、揚陸艦、輸送艦、補給艦、潜水艦……どの艦も損害を受けて良くて小破、最悪の場合は港の浅い海で沈んで着底する。
艦隊はその状態で、第2波の対艦ミサイル攻撃を迎え入れる事になった。
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『目標視認!』
第2波の対艦ミサイル攻撃から10分程で軍港上空へと到達した。
眼下には黒々とした煙を上げて傾斜する巡洋艦や、炎上しつつも雄々しくこちらに速射砲を発砲する駆逐艦、傾斜した飛行甲板から艦載機が滑り落ちていく航空母艦など、惨状が広がっている。
『こちらドラゴン・リーダー、これより空中哨戒待機に入る』
『Roger、こちらライナ・リーダー、施設の爆撃に入る』
『こちらスラッガー1、敵艦の攻撃に入る』
『ラフライダー1-1よりラフライダー2-1、爆撃開始、繰り返す、爆撃開始!』
『Roger』
F/A-18Fは3機ずつ4つの編隊に分かれ、爆撃に入る。
カンタ中尉のラフライダー2-4は、2-5、2-6と共に爆撃を行う。
『こちらラフライダー2-4、沈みかけの空母を攻撃する、全機続け!』
『Roger!』
『リン、目標を指示してくれ、港に最も近い空母だ』
『了解、指示する』
スズネ中尉が兵装を選択、ペイブウェイと目標指示ポッドが起動する。
『上昇する、着いてこい』
空母の甲板は装甲化されている為、上空から投下する事によって爆弾の弾体に追加のエネルギーを加え、装甲を貫通させる腹だ。
カンタ中尉は操縦桿を引き、機体を上昇、2機もそれに追従する。
高度20000ftまで上昇、水平飛行に入る間も無く降下し、真っ直ぐ空母へと向かう。
投下には、パイロットと兵装システムオペレーターの呼吸を合わせる必要がある。
スズネ中尉はレーザー照射を開始、誘導用のレーダーが空母を捉える。
高度がどんどん落ちていき、3000ftを示す瞬間をスズネ中尉は見逃さなかった。
『ラフライダー2-4、ボムズアウェイ!』
刹那、翼下から1発のGBU-24が切り離される。
爆弾が切り離されたのを確認すると、カンタ中尉は操縦桿を引いて上昇に転じる。
他の2機も1発ずつ投下して上昇、合計3発のペイブウェイが空母へと降り注ぐ。
寸分違わず命中した3発の2000ポンド爆弾は空母の装甲甲板に大穴を空け、艦内のジェット燃料と航空機用兵装が誘爆、真っ二つに裂けて軍港の浅い海に沈んでいく。
『命中、次の目標、敵駆逐艦!』
『了解、レーザー照射する』
『ラフライダー2-6、ボムズアウェイ』
黒煙を上げつつ対空砲火を放つ駆逐艦にラフライダー2-6がペイブウェイを投下。
レーザーに乗って降下していく爆弾……直後、5インチ砲弾がラフライダー2-6を捉え、爆発する。
『⁉︎ ラフライダー2-6が殺られた!』
『Fuck!』
2-6が投下したペイブウェイはそのまま敵駆逐艦に吸い込まれて爆発。
弾体が駆逐艦を内側から破裂させた。
10分の内に攻撃隊は全ての爆弾を投下、敵の軍港と海軍に大ダメージを与えて帰投した。
以下は空襲開始から撃破した敵一覧である。
撃沈
空母1
巡洋艦7
駆逐艦12
輸送艦4
揚陸艦3
潜水艦5
補給艦6
大破
空母1
巡洋艦9
駆逐艦8
輸送艦2
揚陸艦1
潜水艦6
補給艦2
撃墜
Su-27 2機
Mig-29 4機
被撃墜
F/A-18F"ラフライダー2-6"
開戦初日の大戦果であった。




