4章第6話 Operation GONG 〜進撃の戦車隊〜
「突っ走れ!」
「アイサァ」
ヴィットマン大尉は操縦士のジャイコブに喝を入れ、M1A2を走らせる。
周囲を見回しても、殆ど何もない。
機甲部隊は未だ接敵せず、快進撃を続けていた。
と、進行方向に煙が上がっているのを確認する。
「ん?ありゃ何だ?」
『分からん、HQより全車両。サーマルで確認しろ』
ペリスコープの画像が映し出されているディスプレイパネルをサーマルに切り替えると……
「おいおいなんだありゃあ……」
幾つもの熱源体が空中へと飛び、機甲部隊の後方へと着弾する。
『多分、ロマノフのT813だ。ロケット弾は旧式で命中精度は低いが、当たればひとたまりもない』
「越境はバレてるな、まぁ当然と言えば当然だな」
『HQより各車へ、T-80が接近中、14輌だ。交戦し、撃破せよ』
「了解!マックス、装弾筒付翼安定徹甲弾装填!ソリマチは外すなよ!」
「「了解!」」
装填手のマックスが弾薬庫から装弾筒付翼安定徹甲弾を取り出し、装填。
隣を走る90式戦車は自動装填装置を搭載している為、砲手が弾種を選ぶだけで自動的に装填される。
「……撃てぇ!」
ドンッ!
120mm滑腔砲が火を噴き、装弾筒付翼安定徹甲弾が発射された。
「……命中!」
「よっしゃ!」
射撃したソリマチ軍曹がガッツポーズ。
マックスはすぐさま次弾を装填。
隣の90式戦車も、高性能なFCSと自動装填装置で次々と砲弾をT-80に叩き込んでいく。
隊列を組む仲間もまた、同じ様に砲撃していく。
「撃て!」
M1A2は2発目を発射、装弾筒付翼安定徹甲弾はT-80の装甲を貫通して弾薬庫に到達、砲塔を吹き飛ばした。
「また命中!ナイスだソリマチ!」
「光栄です!サー!」
2発目を発射した時点で、T-80は全滅。
90式戦車2輌、M1A2は3輌が被弾したが、作戦継続に支障は無く、全て正常だそうだ。
T813のロケット弾の被害も特に無く、何輌かのM2A3ブラッドレーが至近弾の破片を浴びただけで損傷は無い。
それ以上の敵とは接敵せず、機甲部隊はそのまま前進する。
『HQより各車両、丘の手前で停止。砲撃陣地を潰す』
「了解、マックス、安定翼付対戦車榴弾装填。以降別命あるまで同じ」
「了解」
バスル式弾薬庫から先端の平たい安定翼付対戦車榴弾を取り出し、装填する。
丘の手前で停止、砲兵陣地は稜線を超えて1kmだ。
充分に戦車砲の射程内である。
『……全車、前へ!』
号令と共に、ジャイコブがレバーを捻る。
戦車の操縦はバイクに似ていて、速力はハンドルを回して調整する。
「撃て!」
ドォン!
車体が丘から姿を現した時、ソリマチが引き金を引き、安定翼付対戦車榴弾が発射される。
砲兵陣地の外側を守っていたトーチカ群に砲弾が襲いかかり、幾つかを完全に破壊。
その時。
ガァン!
「いてぇ!クソッ!何だ⁉︎」
「RPG被弾!戦闘に支障なし!」
トーチカから発射されたRPG-7Vが正面装甲に直撃したが、戦闘システムに異常は無い。
90式戦車にも3発が側面装甲に直撃したが、装甲が少し焦げただけで損傷は無い。
「よぉし!潰せ!」
「アイサァ!」
ハンドルを捻り、更にスピードを上げる。
ソリマチがHEAT-FSを発射し、トーチカを破壊。
16輌の戦車はトーチカの残骸を踏み潰し敵の砲兵陣地へ踏み込む。
敵の歩兵が逃げ始めるが、戦車隊はそれを見逃さない。
「やっちまえ!」
タタタタタタタッ!
主砲同軸のM240 7.62mm機銃が火を噴き、逃げる敵と向かってくる敵を薙ぎ払う。
「BMPだ、2時方向!」
「了解!」
主砲が火を噴き、HEAT-FSを発射。
命中したHEAT-FSは特殊な形状の炸薬が爆発する事によって発生するモンロー効果と炸薬に張り付けられている金属製の内張りが爆発の圧力によって流体金属が発生するノイマン効果が重なり、発生した流体金属は3000〜4000℃、マッハ20以上のスピードで装甲を貫通する。
主力戦車なら兎も角、歩兵戦闘車であるBMPがこれに敵うはずも無く、あっさりと撃破された。
海兵隊のM1A2、陸軍の90式戦車の次に砲兵陣地に乗り込んで来たのは、腹の中に歩兵を抱えたM2A3ブラッドレーと89式装甲戦闘車のIFV4個小隊だ。
搭載された25mm機関砲や35mm機関砲から装弾筒付徹甲弾が、通常のマシンガンなどより遅めの間隔で発射されて敵の軽装甲車等を食い破り、TOW対戦車ミサイルでトーチカや重装甲車両を攻撃する。
続いて10輌のAAVP7A1が侵入し、砲塔に装備されているブローニングM2 12.7mm重機関銃やMk19 40mmグレネードランチャーの連射と、車輛から降ろした歩兵によって砲兵陣地の制圧にかかる。
戦車隊の先頭を走っていたストーンヘンジ1-1とヘヴィーハンマー1-1(90式戦車)は砲撃中のロケット砲を発見。
既に撤収作業に入っている車輛もあれば、攻撃された時の誘爆のダメージを抑えようと慌ててロケット弾を発射している車輛もある。
『逃がすな!全部残さず潰せ!』
ヘヴィーハンマー1-1の車長がそう叫ぶと、HEATを撃ち込む。
ロケット弾を発射中だった1台に命中、すると、残っていたロケット弾に誘爆、他の車輛のロケット弾も次々と誘爆していき、とんでもない規模の爆発になった。
「どぅぇい⁉︎誘爆したぞ!」
『全部食い尽くせ!』
残っている車輛にHEATを叩き込み、敵歩兵には同軸機銃の弾幕を浴びせる。
戦車隊は砲撃陣地を5分で殲滅した。
作戦を予定通りこなし、次の目標、5マイル先の通信基地へと向かう為、走り出した。
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「あれで間違い無いか?」
『あぁ、間違い無い』
90式戦車1輌と89式装甲戦闘車2輌が丘の稜線の手前から偵察を行う。
既にこの辺りの航空優勢はエリーザ空軍の手によって確保されて居る為、上空からの脅威は無い。
後方からの作戦の為、隠密性を考えて居るが、恐らく既にバレている筈だ。
だから、あの通信基地を早めに潰し、敵の情報を出来るだけ遅らせる事が重要だ。
敵の配置を全て掴んだ偵察は、本部に戻る。
本部では、後から来た部隊から燃料と弾薬の補給を受けていた。
15分で弾薬と燃料の補給も満タンの状態で、全ての車輌が出発する。
「こちらヘヴィーハンマー1-1、作戦開始、繰り返す、作戦開始!」
稜線の影に沿って並んだ戦車が、一斉に砲撃を開始し、トーチカを潰す。
続いてIFV部隊が稜線から姿を現し、TOW対戦車ミサイルと国産の97式対舟艇対戦車ミサイルが敵のT-80に突き刺さり、タンデムHEAT弾頭が爆発反応装甲を無力化して正面装甲や上部装甲を突き破って次々と撃破していく。
トーチカを潰した戦車隊は標的をT-80へと変更、戦車狩りが加速していく。
戦車隊は丘から出て、通信基地へと向かって走る。
その間にも砲撃を止めない。
特に90式戦車のFCSはほぼ百発百中の精度でT-80を仕留め、逆にT-80が発射したAPFSDSは装甲に直撃するも、90式の装甲に跳ね返される。
西側と東側の質の差がここで出た。
戦車隊は敵の戦車を殲滅し、フェンスを破壊して一気に通信基地へ乗り込む。
ドンッ!
通信アンテナと思われる鉄塔の基部を砲撃して倒し、衛星通信用のパラボラアンテナの搭載された車輌も砲撃して無力化、地対空ミサイルの誘導車輌や発射機等も潰し、基地の機能を奪っていく。
恐らく航空攻撃に備えていたであろうこの基地の地上戦力は多くは無く、ロケット砲陣地よりもあっさりと制圧された。
敵の戦闘車両を完全に破壊したら、ブービートラップが無いか気をつけつつ歩兵を降車させ、建物内部を制圧する。
分隊に2人の戦闘工兵が付き、IEDやドアに仕掛けてある爆弾を解除する。
危険を冒してまで建物内部へと潜入するのは、持ち帰る事の出来る機密情報を探すためだ。
「各員周囲を警戒、敵の車輌とトラップに注意せよ」
『了解』
『了解』
ゴォォォォォ……と遠くから戦闘機のジェット音が聞こえてくる。
「上は任せたぜ」
エリーザ空軍のF-16CとF-15Cがエアカバーに入る。
機甲部隊はこの後、上陸した陸軍と海兵隊合同部隊に合流する事になっている。
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ヨルジア海軍 第1遠征打撃群 旗艦はつかり
第1遠征打撃群には陸軍の地上戦力が満載され、時間を合わせて後続の第3遠征打撃群の海兵隊と共に一斉にリドリス本土への揚陸作戦を開始する。
海兵隊は"レッド・ビーチ"と名付けられた海岸へ揚陸、同時に陸軍は"ブルー・ビーチ"への揚陸を開始する。
『ウェルドッグ、注水、ハッチ開放!』
LHA-06"はつかり"後部のウェルドッグハッチが開き、中から戦闘車輌を積んだLCACが出てくる。
同時にLPDDH-201"やくも"の155mmAGSが火を噴き、海岸への艦砲射撃を開始する。
AGSは1発撃つ毎に上を向いて再装填を行い、155mm砲弾を海岸へ叩き込んでいく。
砲弾は飛翔し、海岸の空中で炸裂した。
発砲したのは通常の榴弾では無く榴散弾で、時限信管を用いて空中で炸裂、細かな金属球を海岸へと降らせる。
すると、海岸に埋めてあった対戦車地雷が次々と爆発、砲撃を繰り返して対戦車地雷を無力化していく。
同時にLHA-06"はつかり"とLPDDH-201"やくも"からAV-8BJ+ハリアーⅡやF-35Bが発艦、誘導爆弾と空対地ミサイルで敵の対艦ミサイルが配備されているトーチカを潰していく。
航空攻撃と艦砲射撃によって海岸の防御を薄くし、いよいよ上陸を開始。
先陣を切るのはLCUだ。
陸軍の90式戦車を3輌搭載したLCU3隻と、その後ろに同じく90式戦車1輌を搭載したLCACが続く。
防御力・攻撃力の高い主力戦車を先頭にする事で、敵の攻撃を防ぎ、こちらの攻撃によって敵の打撃力を削ぐ。
「敵は海岸沿いにトーチカを配備している!各個に攻撃し、敵を撃破せよ!」
『了解』
『了解』
LCUの上で90式戦車がエンジンスタート、上陸に備える。
LCUが着底、正面扉が開いた瞬間、先頭の90式戦車が火を噴いた。
120mm滑腔砲から発射されたAPFSDSは、コンクリート製のトーチカを食い破って内部まで到達、破片によって内部の敵兵を殺傷していく。
着岸した揚陸艇から続々と戦車が降ろされ、各車両砲撃を開始。
揚陸艇が下がると、次の揚陸艇が接岸する。
14艇のLCACが載せていたのは、89式装甲戦闘車だ。
歩兵を腹に抱えたIFVはLCACから降ろされると、35mm機関砲で射撃を開始、敵の軽装甲車両とトーチカを叩く。
上陸した装甲車両は橋頭堡を築くスペースを確保しつつ前進、"レッド・ビーチ"から上陸した海兵隊が敵群に十字砲火を浴びせて殲滅する。
更に最初に攻撃を行い、弾薬と燃料を補給して戻ってきた航空部隊や、陸軍のヘリ部隊も攻撃を開始。
陸軍第1任務師団と海軍海兵隊第1海兵師団の連合部隊は強力な火力を以って、その日のうちに橋頭堡を確保した。
90式戦車:ヨルジア陸軍の誇る第3世代MBT。
現実の90式戦車と大きく違うところは、2010年からシステムのアップグレードが行われて優秀なC4ISRが搭載されている事と自動装填装置の信頼性が大きく向上している点、主砲がラインメタル製L44のライセンス生産型M256では無く、国産のヨルジア製鋼所(日本製鋼所にあたる企業)製の120mm滑腔砲を搭載している点、M2重機関銃が車体上部の固定式では無く車長ハッチにリングマウント式で取り付けられている点。




