4章第3話 Operation GONG 〜動き出す軍〜
「司令、時間です」
「うむ……全艦、攻撃開始」
ヨルジア海軍所属の原子力航空母艦、CVN-22"ずいかく"のブリッジで、司令官が命令を発した。
「全艦、作戦開始時刻だ、攻撃開始。繰り返す、攻撃開始」
一瞬のタイムラグの後、空母を中心に半径10マイルの輪形陣を構築する空母打撃群の各艦からトマホーク巡航ミサイルが発射された。
トマホークを発射したのは空母打撃群の軍艦だけでは無い。
LHA-06"はつかり"を旗艦とする遠征打撃群の各艦からも、トマホークは発射された。
オーレアシア海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を参考に建造したミサイル巡洋艦"バルゴ" "サジタリウス" "ポセイドン"
主砲にOTOブレダの54口径127mm速射砲を採用したイージス艦"たにがわ" "いなば"
アーレイバーク級を参考に建造したイージス艦"オラシオン" "グレムリン"
イージス・システムは搭載していないが、最初からトマホークを運用する事を前提に建造された"つるぎ" "ふじなみ"
の垂直発射システムやボックスランチャーが一斉に火を噴き、遠征打撃群からのトマホークを含めると100発近いトマホークが目標であるグルーバキア海軍_____今では占領され"ドラグーン帝国海軍"の物になっている軍港へと殺到する。
同時に空母の甲板上では、軍港爆撃と上空制圧の為、配備されたばかりのF-35CライトニングⅡステルス戦闘機やF/A-18E/Fが、戦闘装備を終えて発艦準備に入る。
カタパルトにセットされた戦闘機は、リニアの力で2秒間に285km/hまで加速、空へと飛び立って行った。
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12/26 10:30 ガルシア島、空港。
ヨルジア軍の他にラベリア軍やレイレガリア軍、フランデンベルグ軍の戦闘機が、この空港に展開している。
現在応急のブリーフィングルームに集まっているのはパイロットだけでも100名余りで、今回の作戦がどれだけ大規模に行われるかが解るだろう。
今回の作戦は、任務内容毎に必要な航空機が振り分けられる。
まず真っ先に行われるのは航空優勢の確保だ。
出撃するのは、F-15Cを保有する各国飛行隊と、F-22Aを保有するヨルジア空軍。
現時点でここでF-22Aを保有している空軍がヨルジア空軍しか居ない。
10機のF-22Aが制空に投入される事になった。
午後には爆撃機が本国から到着する為、その護衛もあるという。
同じくF-22を擁するオーレアシア空軍は、ガルシア島では無くドラグーン帝国領の反対側の別の基地に展開し、進撃を開始する。
"ドラグーン帝国"は既に4ヶ国を掌握し、空軍力はかなり強い方になる。
しかも掌握したうちの1国"ロマノフスク"では大量の石油が出るらしく、油には困っていない。
整備率や稼働率も、軍をそのまま掌握している為、かなり高い。
そして次に防空網制圧に入る。
ワイルド・ウィーゼル部隊と電子戦部隊によって、敵の先進防空システムを対レーダーミサイル等で叩き、防空網に穴を開ける。
これにはSEAD任務用に改修された、F-2Jを擁するヨルジア空軍が主体となり行う。
SEAD任務は、簡単に言えば逃げる者が懐中電灯を持ち、暗闇で行われる鬼ごっこの様な物だ。
自らは懐中電灯を使って鬼を探す事が出来るが、鬼は懐中電灯の光を頼りに捕まえに来る。
つまり、ワイルド・ウィーゼル機は常に自分が真っ先に撃墜されてしまう危険を自ら買って出ているのだ。
それでも上手く立ち回り、逃げ切り、鬼を無力化する訓練を受けているのがワイルド・ウィーゼル部隊なのだ。
それが終わり防空網に穴が開くと、その穴を広げて内部へと侵攻、空爆任務へと移行する。
この空爆任務には、各国の海空合同で行われる。
空軍目標は敵空軍基地、司令部、その他の軍事拠点である。
この空爆任務は航空優勢が確保出来た後に行われる為、1度基地に帰還する。
空軍全体では今日1日の作戦は以上だ。
また、海軍はこの間に、敵海軍の軍港への空襲、地上への揚陸を開始するらしい。
「敵はドラグーン帝国だ。皆、しっかりやってくれ。以上だ」
おっと、作戦内容を思い返しているうちにブリーフィングは終了した様だ。
各々がブリーフィングルームを出て、出撃準備に取り掛かる。
ヘルメットを持ち司令部から出ると、それぞれの相棒の下へ向かう。
ヘルメットを被り、エンジン始動。
システムの起動、補助翼の作動チェック、酸素マスクのチェック、エンジン回転数、兵装システム等、規定のチェック項目を1つずつクリアしていく。
最後にキャノピーを閉め、離陸許可を待つ。
全部隊へと離陸が許可された。
滑走路へとタキシングする。
F-22Aはメインウェポンベイに6発のAIM-120AMRAAMと、改良されたサブ・ウェポンベイにスペースを作り、片側2発、計4発のAAM-5"ゴールドアロー"を搭載する。
風向きや風力、天候などいつも通りの管制塔との交信を行い、スロットルを押し込む。
背中のエンジン音が徐々に大きくなり、出力も増してくるのを感じる。
ブレーキ解除、Gが身体にのし掛かる。
数秒で離陸速度を超え、操縦桿を引く。
機体はふわりと浮き上がり、空を舞う。
作戦機は、直掩を残して全機が空へと上がった。




