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3章第8話 襲撃事件①

ケノランド空軍基地 16:39


門の前に1台のトラックが停まる。

「ん?」

トラックの運転手が窓を開けて顔を出す。

「すみませーん、基地内のコンビニに納入するんですが……」


門の左右にあるボックスから出た基地警備隊員が顔を見合わせる。

「なぁ、今日荷物の搬入ってあったか?」

「いや、民間からは無いけど……」

「荷物のチェックした方が良いな、『こちら正門、トラックが1台納品と言っている。これからチェックする、どうぞ。』」

『こちら本部、了解』


守衛室に詰めている隊員は常に3人、1人が警備隊本部に無線連絡を入れ、1人が運転手に声をかける。

「不審物警戒の為、荷物をチェックさせていただきます」

「ええ、どうぞ」

と運転手はにこやかに応じ、助手席に座っているもう1人に荷台を開けさせる。


助手だけが降り、荷台に回る。他の警備隊員2人もチェックの為に同行する。


「何かあると思うか?」


助手に荷台を開けさせている間、隊員に話しかける。


「何もなければ良いっスけどねぇ」


肩をすくめながら隊員が言う。

荷台の鍵を開け、ハンドルに手をかける。

観音開きの荷台が開けられる瞬間、助手は大きく仰け反った。


開け放たれた荷台に見えたのは2つの銃口。

消音された銃声と共に、隊員は永遠の眠りにつく。


「⁉︎」

運転席の側にいた隊員が驚き、反射で運転手に銃口を向けるが、その反射が運転手の方が速かった。


パスッ


消音器付きの拳銃から飛び出した弾丸は眉間を貫いた。

トラックの後部に居た助手が門を開ける。


「ジープ、出番だぜ」

無線で呼びかけると、トラックの後方からジープ3台とピックアップトラック3台が来た。

ジープは門を通過し、トラックが後に続く。

難なく基地内へ進入出来た。


ジープとピックアップトラックは途中の道路で左へ曲がる。

向かう先は---


==================================


ケノランド空軍基地 基地警備隊本部

16:40


「正門、応答しろ。こちら本部、正門応答しろ、どうぞ」

正門から「トラックをチェックする」と連絡が来てから一向に報告が無い。

「どうだ?」


隣の隊員が聞いて来る、無線に就いていた隊員はマイクを机に置き、椅子の背もたれに身体を預ける。

「駄目だ、応答が無い」

「一応全員装備を整え集合しろ」

本部の隊長が後ろで声を上げ、全員に装備を整えるよう呼びかける。


手隙の隊員が地下のロッカー室へ走る。

ロッカー室で防弾チョッキとポーチを身に付け、カスタムされたM4A1 BlockⅣを手に取る。

戦闘服は灰色を基調としたデジタル迷彩だ。


ズシィ、ズズン

ロッカー室が揺れる。

そこに居た隊員約40名が動きを止め、耳を澄ます。


ズダダダダダッ!ダダダダダダッ!


重機関銃の様な銃声がそれに加わり、中の隊員の不安を煽る。


一度動きを止めたが、再び準備を進める隊員--タキヤ・ヒロセに部下が話し掛けてくる。


「な、何が起こってるんですかね……」

「さぁな、でも多分、事務所はもう使えないな。戻らない方が良い」


最後にヘルメットとゴーグルを手にロッカーを閉めてロッカー室の奥へ入って行く。

ロッカー室の奥の扉の向こうは弾薬庫に繋がる通路だ。


扉を開けて左に伸びる通路を進み、右へ曲がると左側に弾薬庫のドアがある。

安全対策で二重になっているドアを開け、5.56×45mmや7.62×51mmのNATOライフル弾、9×19mmパラベラム拳銃弾など弾種別に分けられているコンテナを3つ4つ出し、床に置く。


それを後から来た隊員がバケツリレー方式で弾薬庫から出し、運んでいく。

タキヤは粗方弾薬を出し終えた後、自らもコンテナをロッカー室に運ぶ。


ロッカー室に戻ると、普段隊員達の休憩ベンチとなっているロッカー室の端のスペースに弾薬が種類別に山の様に積まれていた。


「事務所からのドアは封鎖したか?」

部下の1人に話し掛ける。


「地上からの封鎖は完了しました、外から入っては来られません。来れるとしても司令部側からでしょうが、そっちは早く準備の終わった隊員を貼り付けています」

「そうか、良くやった」

短く答え、自分も補給を始める。


クリップで纏められた5.56×45mmNATO弾をマガジンに押し込み、ポーチに放り込む。

サブアームの拳銃には面倒だが、1発ずつ押し込めるしかない。


準備が整ったところで、弾薬庫側のドアが開く。

思わず銃を向けかけてしまったが、出てきたのは基地の隊員と数人のパイロットと整備士だった。


「どうしたんだ?」

タキヤが先頭のパイロットに声を掛ける。

「俺たちにも銃を貸してくれ、格納庫の航空機の警備に就く」

「俺たちも戦闘に参加したい、余ってる銃は無いか?」

パイロットが口を開き、続いてその後ろの整備員達も意見する。

タキヤは少し考えて最初に発言したパイロットに聞く。

「志願者……有志はどれ位居る?」

「70人位かな、司令部側でも待ってる奴らもいるから」

「分かった」

そう言うとタキヤはパイロットや整備員達を弾薬庫の向かいにある武器庫へ連れて行く。

武器庫の電気を点け、1つのロッカーを開ける。


中に入っていたのは--P90だ。

タキヤはP90を取り、パイロット達に手渡す。

「パイロットは自衛火器の射撃訓練もやるはずだからそれがちょうど良いだろう。整備班はそっちのロッカーに予備のM4が入ってるからそれ使え、拳銃はその隣にPx4があるからそれを。P90が足りなかったらこっちにある」


今度は違うロッカーを開けると、MP5が入っていた。

「足りなかったらこれを使ってくれ、弾薬は自分で弾薬庫から出す事、以上」

タキヤは隊員達に武器を渡し、武器庫を後にした。


==================================


ロッカー室で仲間と合流したタキヤは8人の分隊を5つ作り、4つの分隊を司令部側から上げ、タキヤの分隊は事務所側から上がる。

有志も装備を整えた後、航空機格納庫の警備に就くようだ。


タキヤの分隊が事務所へ繋がるドアへ辿り着いた。

隊員の1人がドアノブをゆっくりと回し、外へと開けようとするが。


ガタンッ


「ん?」

敵かと思ったがそうではないらしい。

「どうした?」

「いえ、ドアが……」

どうやらドアが開かなくなっている様だ。

「フレームが歪んでんのか、どいてみろ」

部下をドアの正面から退かす。

「ノブだけ捻っててくれ、蹴破る」

3…2…1…


バンッ!


事務室内側に吹き飛んだドアからタキヤの分隊が雪崩れ込む。


「なっ……くそっ……」

タキヤ達がドアを開けて事務所に入ると、惨状が広がっていた。

棚や机がひっくり返って黒焦げになり、事務室内に残った隊員の遺体が転がっている。

ある遺体は上半身が無く黒焦げになっていたり、ある遺体は身体中に弾丸を浴びて蜂の巣になっている。


当然の様に電気は全て消えていて、ポツポツと火種が落ちている。

想像はしていたが、実際に見ると酷いな……


足元にある遺体に跪いて合唱し、無線を入れる。

「司令部側の隊員、もし人手が余っている様なら警備隊事務所に寄越してくれ、生存者の捜索に当たって欲しい」

『了解した』

それだけ伝えると、タキヤ達は銃を構えて室内をクリアリングしていく。


どうやら室内に侵入者は居ないようだ。

割れた窓からそっと顔を覗かせ、様子を伺う。


窓の外には数人の襲撃者とジープが1台、襲撃者は全員武装している。


「見た感じ、G3A3とAK74……ジープに乗ってるのはDShk(デュシーカ)だな……」

ここまで事務所をボコボコにするとは……RPGでも叩き込んだか、無反動砲積んだジープが撤退したかどっちかだな……

窓から見えない様に屈みながら飛び出し位置まで移動、隊員に合図する。


「俺はジープの機関銃手を殺る。3カウントで行くぞ」

左手でカウントを取る。


3……2……1……


GO!


隊員が一斉に窓から飛び出し、植え込みに隠れながら射撃。


タキヤは飛び出す瞬間、レシーバー上部レールに取り付けてあるEOTech553ホロサイトで機関銃手の胸元に照準を合わせ、指切りバーストをお見舞いする。


タタタァン


3発放たれた弾丸は胸と首に命中、機関銃手がジープから転げ落ちる。

他の隊員も各自発砲、全員を始末した様だ。


「クリア!」

植え込みに隠れながら移動、反対側の部隊と合流する。


=================================


「警備隊事務所を落としました!半数は死亡したと思われます!」

基地入り口の広場に展開した襲撃者達。

武装はかなり強力な様で、AK74やG3A3を使用している上で全員が拳銃を装備している。

中にはRPG-7を所持している者も居るし、ジープには12.7mmDShkデュシーカ重機関銃や無反動砲が積まれている。


彼らの目的は、このケノランド空軍基地を陥落させ、報復に来るであろう航空戦力の弱体化である。


ここにある航空機を破壊し、可能であればここに配備されている最新鋭戦闘機、F-35Aのデータを持ち帰る。


弱体化の為の襲撃は他の場所でも同時に行われている筈だ。

どれだけ戦果を上げるかわからないが……


「隊長、航空機の発着能力を剥奪する為、管制塔を落したほうが良いと思われます」

襲撃者達の中で「隊長」と呼ばれた男は、少し考える。

「必要性を認める。無反動砲のジープで砲撃も良いだろう」

「了解しました!」

襲撃者の1人が敬礼をし、装備を整え始める。


さて、後は格納庫をどう攻めるかだな……


==================================


「どんな感じだ?向こう」

主力部隊と合流したタキヤは部隊長に報告する。

「事務所は壊滅、すぐ近くに敵が張っていたので殲滅しました。多分広場に集まってますね」

「なるほど、向こうは敵に抑えられている訳だな」


一応、全ブロックの建物の封鎖は完了している。

屋上に狙撃手も配備しているらしい。


「救援要請は?」

「さっきやったばかりだ。まだわからん」


その時。


ドンッ!


爆音が響き渡る。

「何だ⁉︎どうなっている⁉︎」

隊長が無線に問いかける。

『か、管制塔がやられました!無反動砲の砲撃です!』

タキヤは歯噛みする。これで航空機の発着が難しくなる。


向こうもやり手だな……と声に出さずに呟く。


「司令部より飛行場側へ敵を入れるな!格納庫を守るんだ!」

隊長の命令一下、隊長がそれぞれの配置につき、襲撃者の迎撃を始めた。

P90:ベルギーFNハースタル社製のPDW

5.8×28mm小口径高速弾を使用する。

ボディーアーマーを貫通する癖に弾丸の重心が後ろにある為、体内に入ると180度回転し弾丸が停止する。

在ペルー日本大使公邸占拠事件で特殊部隊が使用したのは有名。

独特なデザインなので、漫画やアニメにもよく登場する。


Px4:イタリア、ベレッタ社製の自動拳銃。

M8000クーガー等と同じく、バレルが回転してスライドとの噛み合わせを解く「ロータリーバレル方式」を採用している。

バレル、マガジン、スライドを交換する事で9x19mmパラベラム弾、9x21mm IMI弾、.40S&W弾及び.45ACP弾の4種の弾薬に対応できるというコンセプトを持つ。これが「Px4」という名の由来にもなっている。


MP5:ドイツH&K社製のサブマシンガン。

ここではA5が登場する。

クローズドボルト方式での撃発、ローラー遅延式ブローバックにより、サブマシンガンでは驚異的な命中精度を誇り、サブマシンガンに革命を起こした銃とも言われる。


G3A3:H&K社製、口径7.62mmのバトルライフル。


AK74:言わずと知れたAKシリーズの小口径モデル。5.45×39mm弾を使用。

作動信頼性も高い。


DShk重機関銃:旧東側を代表する重機関銃。

12.7×108mm弾を使用。

ニュースで民兵のピックアップトラックに乗っているのは大体これ。


SPG-9無反動砲

口径73mm

ポーランド軍やルーマニア軍が使用。

映画「ブラックホーク・ダウン」で民兵が米軍に砲撃していた物。


次回の更新は2/19 18時です!お楽しみに!

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