3章第7話 原発危機③
『目標まであと1分!』
ヘリのパイロットから目標まであと1分と知らされた。
「降下準備!」
バリーは多目的ポーチからマガジンを取り出し自分の銃、M4A1Block4に装着。
ストックの根元にあるT型のチャージングハンドルを引いて薬室に1発移動させる。
ブラックホークに搭載されているM134ミニガンのガンナーも装填が終わり、いつでも撃てるようにスタンバイしている。
原発の敷地内の建物配置は、海側から堀外縁、堀内縁、「石棺」、ベント用の鉄塔、庁舎含む建物、そして敷地を区切る塀だ。
ヘリの編隊は原発の敷地内に入る。
まずはリトルバードが幾つかの建物の屋上にタッチダウン、3チームの狙撃手を降ろし、すぐに離脱する。
降下した狙撃手の手にはSR-25やM14SEなどのセミオートマチックライフルが握られている。
ブラックホークは敷地内の道路上に空中停止で機体を安定させる。
襲撃者からは「石棺」が邪魔でヘリが上手く狙えない。
「ロープ!」
バリーが機体の両側を指し、ロープを下ろさせる。
「降下!降下!降下!行け行け!」
バリーの号令と共に隊員が機体両側のロープを伝い、降下する。
CH-47は庁舎前にホバリングし、後部カーゴハッチと機体下部のハッチから兵員と指揮官を降ろしていく。
『タロン31、降下完了。警戒に入る』
『タロン32、降下完了。援護する』
『タロン33、降下完了。警戒に入る』
ブラックホーク全機が兵員を降ろし、地上を援護する為に一旦離脱する。
兵員を降ろし終えたCH-47も、ブラックホークに続いて離脱する。
襲撃者はまだ堀の内縁で抑えてあるらしく、「石棺」まで出てきてはいない。
ただ「石棺」内部への進入を避ける為か、ビル3階辺りにある入口への外階段は自爆し崩れていた。
バリーはPMCの前線指揮官と合流する。
「陸軍だ、撃つな」
「早かったな、助かったよ」
「状況はどんな状態だ?」
「酷いね、11番塔で死者1名、10番塔で死者3名、12番塔で死者4名、負傷者4名を回収した。堀の内縁で敵は食い止めてるけど、いつまで持つか……外縁からの狙撃手も来てるから負傷者も増えてる。幸い監視塔までには入られていないようだけど」
「そうか、了解した」
堀を上がってくる敵に牽制で数発の弾丸を叩き込みながら、負傷者を後退させる。
その間にブラックホークがミニガンで堀外縁を舐める様に機銃掃射し、石棺の屋上に展開した狙撃手の1人が狙撃返しで敵狙撃手を撃破していく。
しかし、そろそろ堀から這い上がってくる敵を抑えてきれなくなってきた。
タイミング悪く数人が同時に弾切れ、再装填の間に敵が雪崩れ込む。
「石棺後方まで後退!庁舎周辺に貼り付け!」
了解、と返答すると、隊員が後退を始める。バリーはその殿を務めた。
石棺に取り付いた敵は内部への進入を試みていたが、10mはありそうな高さと2重の防護扉に阻まれた入口へ歩兵は到底入れそうに無い。
よしんば入れたとしても、内部にもPMCの警備員が居るから制御室を乗っ取るのはほぼ不可能だ。
階段が潰された今、庁舎から地下通路で入るしか無いがそこにはPMCの警備員はおろか陸軍の兵士でガチガチに守りを固めている。
壁を破って進入しようとRPGを壁に撃ち込んでいる兵士が居るが無駄な努力だ。
石棺の壁は厚さ6mあり、外側と内側は鉄筋コンクリート、内部は分厚い鉄板とセラミックとコンクリートがミルフィーユ状に重ねられて出来ている。
RPGごときで破壊される程ヤワじゃない。
本気で穴を開けたければ、爆撃か巡航ミサイルで石棺の土手っ腹をブチ抜くしか無いだろう。
石棺に展開していた狙撃手も効果が無くなってきたのか、ベント用の鉄塔の外階段を辿って降り、庁舎の屋上へ登って狙撃ポイントを確保する。
バリーはセミオートマチックで敵に5.56×45mmNATO弾を数発叩き込むと、隠れていない敵から血が跳ねる。
ようやく庁舎の影に隠れる事に成功した。今の所狙撃によって敵がこちら側へ出てくる事はおろか顔を出す事すらままならない。
下手に動くと狙撃手の狙撃とチームにいる分隊支援火器手の猛射が襲撃者を襲うのだ。
「こちらバリー、車両部隊はどの位で到着する?」
バリーはヘリ部隊に遅れて基地を発進した車両部隊へ連絡を入れた。
==================================
「ああ、今向かってる。そこへの到着は、5分後だ。準備しておけ!」
『了解!』
コンボイの先頭車両--82式指揮通信車の車内でオリバー・メイトランドが返信する。
コンボイの編成は
82式指揮通信車 1両
87式偵察警戒車 2両
96式装輪装甲車 3両
M1043HMMWV4両
で編成されている。
避難しようとしている民間人の車でぎっちり渋滞している上り車線を横目に見ながらコンボイは原発に向けて速度を上げる。
「先発隊と守備部隊が交戦中、現在襲撃者を押し留めている模様」
後方に居る通信士官が状況を伝えてくる。
「了解、各員銃砲に装填しておけ。正門から進入する!」
「「「了解!」」」
全車両からの返答を聞き、オリバーも自分の持つM4に弾薬を装填する。
「見えた!」
暫く走ると、原発入口のゲートが見えてきた。
警備員にゲートを開けさせ、コンボイを入れる。
原発本部庁舎の前に車両部隊を停車させ本部指揮官と合流、その後必要な場所に必要な車両を派遣する。
事件は終息に向かいつつあった。
===========================
「撃て撃て!撃ちまくれ!盲撃ちでもいいから引鉄を引け!」
「そこ!弾幕薄いぞ!何やってんの!」
車両部隊が合流した事によって弾薬の補給が可能になり、息を吹き返した守備部隊は襲撃者に猛射を浴びせる。
PMC隊員の持つF2000や陸軍兵士の持つM4A1が火を噴き、襲撃者を撃ち倒していく。
そこへMINIMIとM240、装甲車に搭載しているM2の銃声が新たに加わる。
「敵は怯んでるぞ!押し返すんだ!装甲車を前へ!前進!」
各道路を埋める様に装甲車が前進、歩兵の盾となって進んで行く。
襲撃者は偶に車両に向けてRPGを発射するが、装甲車の周囲をぐるりと覆うスラット装甲に遮られる。
車両部隊を投入してから数分、襲撃者達は敵わないと判断したのか堀の方へ逃走を始める。
堀を下り、外縁までの間にも狙撃とヘリからの射撃が襲い、その数を減らしていく。
狙撃手は襲撃者を捕らえる為にわざと急所を外し、足や手などを撃ち抜いていく。
襲撃者の1人が堀外縁を登りきり船に戻ろうと縁ふちから顔を覗かせるのと、沿岸警備隊が到着したのは丁度同時だった。
沿岸警備隊の巡視艇"あかや" "うすい"の甲板に隊員がフル装備で臨検態勢、後部飛行甲板ではHH-60が隊員を乗せて発艦、堀外縁へと隊員を下ろしていく。
ヘトヘトになった襲撃者は呆気なく逮捕されていった。
===========================
バリーは別の方向で襲撃者を追い詰めていった。
バリーの追っている襲撃者は6人、1人はPKM汎用機関銃を持っている。
通路でそいつが振り向き、こちらに向かって射撃してくる。
「うぉっ!なんであんなに重武装なんだよっ!」
曲がろうとした角に身を隠す。
ビシッ!ピシッ!と銃弾が角で弾ける。
「喰らえっ!」
胸のポーチからM84スタングレネードを取り出し、投擲。弾体は一度壁にぶつかって襲撃者の足元へ転がる。
バリーは耳を塞ぎ、口を開ける。
バァン!と普通の手榴弾より高めの音がヘッドセットで塞いだ耳越しでもはっきり聞こえた。
角から恐る恐る顔を出すと、襲撃者2人がム○カ大佐状態で悶えていた。
「こいつらを縛っておけ、6人は俺とこい!」
分隊を半分に分け、半分に襲撃者を本部へ戻させ、半分で残り4人の襲撃者を追う。
行き止まりへ迷い込んだ襲撃者を発見、向こうはこちらを見つけるなり容赦無く撃ってきた。
素早く角に身を隠し、一応交渉を行う。
「全員武器を棄てて投降しろ!さもなくば撃つ!」
まだ撃ってくる。交渉の余地は無いという事か?
「5つ数える間に武器を棄てないと撃つ!」
大声で5カウントするが、0になっても射撃を止めない。
「警告終了!撃て!」
仲間の全員が角から飛び出し、射撃を開始する。狙うのは一応足だ。
撃たれた最初の1人がぎゃぁっと声を上げ、倒れる。
残り3人も、10秒と経たない内に倒れるか射殺された。
「クリア!」
「ターゲットオールダウン!」
バリーは制圧を確認すると、装甲車を1台呼ぶ。負傷者と遺体を運ぶ為だ。
程なくして96式装輪装甲車が1台やってくる。
バリー達は負傷者と遺体を乗せ、自分達は装甲車の屋根に乗って本部へと戻った。
===========================
原発の襲撃事件はその日の17:30には全ての襲撃者を逮捕若しくは射殺した。
襲撃者は合計で103人、最初の工作船に乗っていた以外にも後から2隻が合流していた。
射殺されたのは91人、逮捕は12人となった。
こちら側の損害は、死者8名、負傷者43名、死者は全員PMCの隊員だった。
陸軍の投入した人数はヘリの先発隊が78人、車両部隊の後発隊が123人となった。
次回の更新は2/5 18時です。




