表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/81

3章第6話 原発危機②

14:36

陸軍ガリズ駐屯地、隊員待機室

「了解しました」

ガリズ原子力発電所から電話を受けていた隊員が受話器を置く。

「原発か?」

隣にの隊員が問いかける。

「ああ、原発だ。襲撃受けてるらしい。司令に報告してくる」

電話を受けていた隊員がメモ帳を取り司令室へ向かう。


===========司令室===========


コンコン、とドアをノックする。

「入れ」

中に居る人物の許可を得、ドアを開ける。

「失礼します」

この隊員はあまりこの部屋には来ない。

「おぉ、どうした」

椅子に座って居る人物は、50を過ぎても頭にあまり白髪の目立たない。

この駐屯地の司令だ。

「原発が襲撃され、出動要請がきました」

回りくどいのが嫌いなので、スパッと要件だけを言う。

「本当か?」

「ええ、さっき緊急電話が来ました。沿岸警備隊にも要請しているようです」

「よし、わかった。直ぐに待機中の隊員に招集をかける、装備が整い次第向かってくれ」

「了解しました」

それだけを聞くと、隊員は部屋を出た。


まずはロッカー室に向かって歩みを早める。

途中で招集の館内放送がかかり、そこら中で慌ただしい足音が聞こえる。

「招集掛かったな」

ロッカー室に入ると先程まで隣に座っていた隊員が隣のロッカーからプレートキャリアと銃を出す。

「オリバーか、後発隊任せたぞ」

「おう任された。バリー、そっちも上手くやれよ」

彼、バリー・フレスはプレートキャリアを身につけ、銃を持って小走りで待機場所へ向かい、後発隊を任されたオリバー・メイトランドは車両格納庫へ向かった。


待機場所に着いたバリーは積んである装備品の中から必要な物を取る。マガジンにクリップで弾薬を押し込み、プレートキャリアのポーチに次々と放り込んで行く。

ポーチに6つマガジンを入れ、銃につける分のマガジンはまだ多目的(ユーティリティ)ポーチに入れておく。


バリーは今回のような緊急時、先発隊の指揮を執る。

執ると言っても他の隊員達と共に交戦し、全体指揮は別の指揮官が担当するが。

無線のバックパックを調整し、アンテナを取り付けて背負う。

手榴弾(グレネード)ポーチに最後の手榴弾を入れ、先発隊の隊員達に集合をかける。

「原発が襲撃を受けているという話は皆聞いたな、これより襲撃者撃退に出動する」

バリーは隊員達に作戦を説明する。


作戦はこうだ。

まず先発隊はこの駐屯地からヘリで原発に向かう、指揮官から指揮をバトンタッチし襲撃者と交戦、後発隊を待つ。

後発隊到着後、本格的な反撃に出て襲撃者を撃退する。

という算段である。


「説明は以上だ、質問は?……無いならヘリに分乗しろ、以上解散!」

隊員達は銃ーーM4A1Block4やM249MINIMI MkⅡ、M240E4を手にし、駐機場で待機しているUH-60Mブラックホーク3機とCH-47Dチヌーク1機、MH-6Mリトルバード3機に分乗する。

リトルバードに乗るのは選抜狙撃手(マークスマン)だ。

バリーはブラックホークに乗る、分隊12名全員の搭乗を確認すると、パイロットに搭乗完了のサインを送る。

管制塔からの指示を受け、各種ヘリが駐屯地から発進する。

ヒュィィイイ……というタービンの音は次第にバラバラとメインローターが空気を叩く音に掻き消され、床下から地面の感覚が消える。

離陸後、リトルバードを先頭にブラックホーク、チヌークの順に上空で編隊を組む。

原発まで20km、爆発によって生じた黒い煙が数本立ち上るのが見える。

バリーは、間に合ってくれ……と声に出さず呟いた。


===========================


ガリズ原子力発電所、11番監視塔


頭がクラクラする、視界がボヤける。

痛い……熱い……

「……水……ごほっ」

水を求めて呟いた口から咳が出る。

「くそッ……なんだこれ……」

11番塔内部は煤だらけで所々に火種が落ちている。

太い窓枠も完全に破壊されており、狭い室内に4人全員が倒れていた。

「おい……おいっ……大丈夫か?しっかりしろ!」

フラグを指摘した女性隊員に呼びかけると、目を覚ました。

「う……う…ん……ごほっ……水……」

「大丈夫か?自分で歩けるか?」

女性隊員に自分の水筒を渡して水を飲ませる。

「ええ、大丈夫です。歩けます」

「そうか、わかった」

生存者を確認する。1人は脈と呼吸が無く、破片を食らったのか流血が酷く既に死亡している。

もう1人は倒れた機材に片足を挟まれているが、擦り傷以外に出血は無い。

「おいっ、おいっ。しっかりしろ!」

揺すると、「う……あ……」と呻き声を上げる。

「よし、機材を持ち上げるからこいつを引っ張り出してくれ」

「わかりました」

女性隊員に指示をすると、倒れている隊員の肩から脇の下に手を突っ込み固定する。

「1、2、3!」

機材を持ち上げ、女性隊員が倒れている隊員を引っこ抜く。

そのまま機材を戻し、倒れていた隊員を担ぐ。

「このまま堀を抜けて脱出する。こいつは俺が担ぐから援護してくれ」

「了解しました」

塔の窓から顔を覗かせ外を伺うと、堤防の淵にアンカーを引っ掛けよじ登ろうとする襲撃者の姿が見える。

10番塔、12番塔は既に陥落したらしい。

女性隊員は襲撃者に発砲し、弾丸を食らった襲撃者はロープを離し後続を巻き込みながら海に落ちる。

「行け行けっ!」

階段で塔を降り、

堀から発電所内部までの塀の上を走る。

堀外縁から内縁までの450mの道のりがいつもより長く感じられた。


UH-60Mブラックホーク

ヨルジア陸軍の主力汎用ヘリコプター。

両サイドに増槽の付いていないタイプ。

乗員12名


MH-6Mリトルバード

小型観測ヘリコプターの改良型。

両側のベンチシートシステムに4〜6人の兵員を乗せることが出来る。


CH-47Dチヌーク

ヨルジア陸軍の主力輸送ヘリコプター。

乗員55名。

上部の2つのメインローターを回転させて揚力を得るタンデムローター方式を採用している。


次回の更新は1/22 18時です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ