3章第5話 原発危機①
ガリズ島、ガリズ原子力発電所。
16:30
ヨルジア最大のガリズ原子力発電所は、(と言うかヨルジア国内どこの原発でもそうだが)海側は海抜30mの堤防、その背後には海抜-40m、幅450mの溝、通称「堀」が掘られており、津波の際に水がここに落ち込み時間稼ぎになる他、海側からやって来る襲撃者の対策にもなっている。
異様な外観も目を引き、建屋ごとに建っているのではなく、長方形の巨大な鉄筋コンクリートの建造物で全ての原子炉建屋、タービン建屋が覆われており、聳え立つ6本の高さ50mの塔は換気塔だ。(よく批判的な議員や不勉強な市民に冷却塔と間違われる)
原子力発電所の警備は民間軍事会社"J・Defense corps"に委託しており、"堀"外縁の監視塔に常駐しているのもJDCの隊員である。
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「おい、さっきラグランデに弾道ミサイルが落ちたって」
監視塔の1つの見張りが同僚に話しかける。
「ああ、らしいな。さっき襲撃警戒レベルが2段階引き上げられたよ」
「2段階⁉︎レッド・アラートじゃないか!」
原発の襲撃警戒レベルはブルー・イエロー・レッドの3種類に分けられる。
平時で何事も無ければブルー・アラートだ、現に先程までそうだった。
しかし突然レッドに引き上げられるのは穏やかじゃない。時勢的に考えられるのは---
「テロか」
「テロだな」
「銃にマガジンを装填しておけ、機銃にもだ」
監視塔には4人の隊員が詰めており、それぞれがその号令を聞き準備にかかる。
各員が手に持つブルパップアサルトライフルのF2000にM16/M4と共有出来るSTANAGマガジンを装填、コッキングハンドルを1度引き、離す。
ホルスターに入っているグロック17にもマガジンを差し込んでスライドを引いて離し、装填する。
それが終わった隊員は監視塔に備えられている機銃--ブローニングM2重機関銃--に駆け寄り上部のカバーを開け、ベルトリンクの12.7×99mmNATO弾を流しんでカバーを閉める。あとは横についているコッキングレバーを2回引けば装填完了だ。
プルルルル、プルルルル、と監視塔の内線電話が鳴る。
「はい、こちら11番塔。はい……はい、完了しております、ええ。……本当ですか⁉︎ 了解しました」
ガチャリ、と受話器を置く。
「本部か?何だって?」
同僚が受話器を取った隊員に聞く。
「更にテロだってさ、空港で占拠、サンライズ号のシージャックだと」
同僚は立て続けに起こったテロに驚愕する。
「マジかよ……っつー事は此処も」
「変なフラグ立てんじゃねェよ!」
隊員はフラグを立てた同僚を注意する。
「本当に来たらどうすんだよ」
「班長、班長もフラグ立ててます」
隊員も部下に注意され、片手で詫びる。
「悪い、皆警戒を厳に……ん?」
「どうしたんスか?」
班長、と言われていた隊員が何かに気づく。
「漁船か?こっちに向かってくるぞ」
監視塔に居る全員が海に目を向けると、2隻の漁船がこちらに近づいて来る。
「……総員、警戒」
班長が低く呟くと、3人がF2000の銃口を向け、標準装備のカバー付き1.6倍ショートスコープのレティクルを漁船に合わせる。
もう1人はM2の銃座に付き、いつでも撃てる様にする。
「……追い込み漁か?」
「そうみたいだな」
2隻の間には網が張られており、網の手前で魚が逃げようと跳ねているのが確認出来た。
「ここでは勘弁して欲しいなぁ〜…」
漁は終盤なのか、漁師が漁船の甲板に出てきて網の巻いてある棒を担ぎ、巻き取り始める。
「フゥ、驚いたぜ」
「まったくだ」
3人の隊員は銃を下ろし、銃座から離れる。
その中でも、1人だけ銃を下ろさない隊員が居た。
漁船をスコープで観察し続けている。
何で網を巻き上げるのにこっちに向いているんだ?
網が上がってくる様子が無い、ならあれは何だ?
そもそもあれは本当に漁船か?
様々が疑問が湧き出てくる中観察を続けていると、巻き上げの棒が火を噴いた。
「⁉︎RーPーGー!」
驚いて目を向き、叫ぶ。
3人の隊員も驚き、床に伏せる。
その瞬間、監視塔の見張り台を爆炎が包み込んだ。
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ガリズ原子力発電所、警備指揮所
16:34
轟音と共に報告が飛び交い、指揮所は一気に混乱する。
「第11番塔、被弾!」
「左右の10、12番塔も攻撃を受けています!」
「死傷者不明!」
指揮官が混乱する隊員を命令する。
「狼狽えるな!襲撃警報を発令しろ!塔の警備を続行!手隙の隊員は全員、装備を整え出動せよ!」
了解、と指揮所の全員が返答し、各部署に指示を出し始める。
指揮官は通信コンソールに座る1人の隊員に声を掛ける。
「陸軍に出動要請、警護出動でだ。それから沿岸警備隊にも出動要請を」
「了解」
隊員は返事をすると、すぐさま出動要請をかける。
こういった非常時の場合、出来る限り早急に最寄りの駐屯地の陸軍に指揮をバトンタッチするシステムになっている。
なるべく早く陸軍が到着する事を祈りつつ、指揮官は指揮を執る。
FN F2000
FNハースタル社製のブルパップアサルトライフル。
のっぺりした独特なシルエットから、ゲームやアニメなどにも登場する為、それなりに知名度は高い。
薬莢排出口が銃口付近にあり、排出される空薬莢は排出口までの間で適度に冷却される為、薬莢による火傷の心配が無い。
スコープカバーも特徴的で、これは将来的にFCS(火器管制システム)を搭載を予定している為と推測される。
ブローニングM2重機関銃
口径12.7mm
恐らく、世界で最も有名な重機関銃。
設計されて80年以上も経つが、費用を考慮しての基本構造・性能トータル面でこの重機関銃を凌駕するものは、現在においても現れていない。




