稲妻の導く方へ
「うああああああッッ!!!」
叫ぶのは力が欲しいから。全身全霊を振り絞り絶叫する。身体の芯にもう一度だけ火を入れるんだ。指先がガリガリと泥を掻いた。叩きつけた踵が枯れ枝を踏み砕く。
「ぐうああああッッ!!」
上半身を強引に引き起こす。全身の筋肉と骨が軋みをあげる。だが今のわたしならそれを無視出来る。痛みから撃たれた箇所を探す。左上腕に灼熱が走る。そうか、なら大丈夫だ! 腕なら進める!
「波ッ!!!」
まだだ。まだ間に合うはずだ。必ず波を取り戻すんだ。銃は? まだ足元に、そこにあるじゃないか。拾え、構えろ。死んでもいいなんて、誰が許した? わたしの命はもうわたしのものじゃないんだ。それを思い出したらこんなところで寝てられるか。痛みと引き替えにアドレナリンが絶望を蹴散らしていく。心なんて所詮電気信号? それならそれで構わない。稲妻の導く方へ向かうだけだ。歯を食いしばり大地を蹴り上げる。立てる! 歩ける! いや走れるッ!!
ノーマと約束した! フェイと約束した! 優作と約束した!!
姉さん、あなたの娘をわたしは護る! フェイ、あなたのプライドをわたしは護る! 優作、あなたが愛したわたしを見てなさい!




