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プロローグ 嵌められた俺

「なんで俺が行かなきゃなんねーんだよ!」

 俺は兄たちに羽交い締めにされ、しかも引っ張られながら叫んだ。

「行かねーっつってんだろ!」

「お前がじゃんけんで勝ったからだろーが」

「おめーらがハメたんだろーが!」


 話は少し前までさかのぼる。

 俺たち(といっても、四人の兄と俺だが)は親父に呼び出された。

 悪い予感がした。

 親父に呼び出されるとろくなことがない。

 だが、分かってても行かないと、あとでとんでもなく痛い目にあう。

 それはさすがに嫌だった。

「集まってもらった理由は他でもない。今年も誰か一人に『行って』もらう」

会うなり、開口一番そう言った親父。

『げっ』

兄弟全員の声が見事に唱和した。

「去年で終わりにすると仰ってませんでしたっけ・・・?」

 一番上の兄がおずおずと口を開いた。

「お前たちに任せておくとろくなことがない。とかなんとかおっしゃって・・・」

「んん?」

 ぎろりと息子を睨む。

 いや、怖いから・・・フツーに・・・

「そうだったか?忘れた」

 んなわけあるかー!

 と、叫びたいのを必死で我慢する。

 親父に口答えしようもんなら、何をされるか・・・

 それは兄弟たちも同じようで、皆、ぐっと我慢していた。一様に青筋をたててたりするが・・・

「で、お前たちは一度行ったから免除するとして、残りの三人。お前たちの誰かが行け」

「それじゃあ、ザイツァル。お前が適任だな」

「は?」

 あ、変な声が出た。

 いきなり名を呼ばれた俺は兄を一瞥した。

「なんで俺なんだよ?!」

「めんどくさいのは、一番下のお前の担当だろーが」

「ガキのくせに生意気言うな」

 ~~!あいつら~!!

 ぎりっと奥歯を噛み締める。

 あいつら勝ち誇ったかのように、ふふんと鼻をならしてやがる。

 憎たらしいにもほどがある。

「去年、兄貴が変なやつ連れてきたのが悪いんだろーが!」

「だから今年も候補にあがってるじゃないか。行かないけど」

「行けよ!」

 2つ上の兄を睨む。

 背丈はそう変わらない。ただ、こいつは口が悪い。この俺よりも。

「お前バカか?親父や兄の命令だぞ?それって絶対じゃねーのか?」

「絶対じゃねーし!親父は俺ら三人の誰かって言ったんだ!年功序列なら、次はディルマータだろーが!」

「・・・ま、それも一理あるな・・・」

 等の本人がぼそりと頷いた。

 上の兄二人は、一昨年とその前にそれぞれ『行って』いた。しかもちゃんと『成果』を出している。

「なんだよ、ディルまでザイの肩もつのか?」

 2つ上の兄、バルジーグが食って掛かった。それを受け流すように、ディルが手をヒラヒラさせる。

「じゃ、さ。公平にじゃんけんしない?」

「・・・それなら・・・」

 ということで、俺ら三人は、親父の目の前でじゃんけんをするハメになった。

 俺はじゃんけんに強かった。だから、すげー自信があった。

 それがすべてもの始まりだった・・・


「よっしゃ!俺の勝ち。ざまーみろ!」

 一人勝ちした俺。しかし、喜びも束の間、兄の二人は意地悪い(ほとんど悪魔のような)笑みを浮かべていた。

「勝ったね?」

「ザイ、今、なんて言った?」

「よっしゃ!ざまーみ・・・」

「ザイツァルが勝ったか」

 よく通る凄みのある声が部屋に響き渡った。

 ギギギと親父のほうへ首を回す。

「・・・親父、これって・・・」

「ん?勝ったやつが行くんだよな?そうだったよな?ディルマータ」

「そうだよ、父さん」

 にっこりと、さも嬉しそうな三男。

 長男と次男は「してやられたな」と、くすくす笑ってやがる。

「そーゆーことだから、ザイ。頑張って」

「頑張れるかっ!てめーら、覚えてろよ!」

 俺の叫び声はもはや誰の耳にも入っていなかった。




 かくして、冒頭へと戻る。

 ディルとバルに引っ張られ、俺は『行く』ための準備に取り掛かった。つーか、勝手に兄貴たちが盛り上がってたんだけど・・・


「で、どこがいい?」

「知らねーよ。どっか辺鄙なとこ」

 俺は適当に相づちを打つ。

「じゃ、島国にしよう。ここって、ヒトいると思う?」

「どうかな。ま、こいつならダイジョーブだろ。基本、メスなら良いみたいだし」

「・・・そっくりそのまま兄貴に返すよ」

「ははは。そんなこと言ってたら、どうなるか分かってるのかな?ザイツァルくん」

 四男のバルジーグが薄い唇を三日月型に変えた。

・・・やばい。あいつがコレの機械操縦してんの忘れてた・・・

 ヤツはフッフッフと笑いながら、

「よし。ここら辺にしてやろう。出口も適当でいいかな。出たとこが火事だったら尚良いんだけどな。それとも・・・」

「や、バル、あの、ちょっ」

「えい」

 俺の呼び掛けにも無視しまくり、バルジーグは決定ボタンを押した。

 俺の目の前に揺らいだ幕のような扉が現れる。

「じゃ、ザイツァル。これがメモだから。あとこれは金ね。たぶん一年はもつと思うよ。じゃ、いってら!」

 言うやいなや、俺はディルにドンと背中を押されていた。

「うわわっ!」

 右手にメモ、左手には金袋を持ち、俺は幕に体当たりしていた。

 次に会ったらぜってー仕返ししてやる!と心に決めながら・・・



ちょっとファンタジー寄りの恋愛モノです。

舞台は現代なので、カテゴリーとしては「恋愛」にしました。


「俺様ドラゴン」よろしくお願いします。

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