プロローグ
暗い夜空に浮かぶ星々は輝き周りを照らす。
けどそんな星々よりもこれでもかってくらい輝いている赤い月。
それは俺の流している血液より赤々としていた。
「クソッ、しくったな……あんな低級悪鬼にここまでされちまうなんてな」
俺は腹部にある大量の血液を出している傷を手で抑える。
いや、もう無駄か、長いことアレをしていなかったツケが回っただけの事か。
いいさ死ぬのだって別に怖くないしな、うんざりしていたんだよ、この世界にも半端モノの自分にもな。
薄れていく意識の中視界に一人の少女が目に映る。
「あなた、けがしてるの?」
その少女は長い黒い髪を髪留めで止めていて、それでも前に来ているもみあげを気品を感じさせる仕草で耳に引っ掛ける。
「うるさい、放っておけ、構うな小娘」
俺はキツイ口調で言うと少女はどこかに走って行った。
ったく、やっと眠れる。
空に浮かぶ赤い月を眺めながらゆっくりと目を閉じる。
感覚がマヒしているのか口に違和感を感じたがそんなのを気にしないでいると身体がだんだん楽になっていく。
ああ、やっと死ねる。
もうこんな現実から逃げられる。
「……きて、……ぇ。…………てよ」
なんだ、うるさいな、やっと眠れるのに。
もう、誰も俺のせいで……。
「ねぇ、起きてよ!!目を覚ましてお願い……死なないで!!!」
「ッ!!?」
俺は目を開いて声の主を見る。
俺はその人物を見て驚く。
さっき俺を見てどこかに行ってしまった少女だ。
泣いて俺の顔を下から覗くように見上げている。
やめてくれよ、俺はさ……誰かが泣いてるのなんか見たくない。
だから、あっちに行けよ。
「良かった目を、覚ました。死んじゃったらどうするの!!死ぬって解ってるの?冷たくなって動かなくなっちゃうってことなんだよ。お願いだから死なないでよ」
少女は俺に抱き付いて離れようとしない。
ったく困ったもんだな。
俺に生きろってもうどうしようも……。
俺は自然な動作で傷に手をやるがそこには痛みがない。
「私が持って来た霊薬。死んじゃったお母様がくれたの」
「バカかよ、お前……そんな大切なもん、俺なんかに……俺は化物なんだぞ」
「知ってる、だって私は巫女だもの。それと私のファーストの責任取ってね、薬を飲ませるとは言っても女の子には緊張するものなんだよ」
それがその少女との奇妙な出会いだった。