外伝 壱 竜を駆る一族の伝説
Record of Legendra Warの世界での竜を駆る一族の物語
遠い遠いはるか昔
とてもとても大きく
長い長い時を生きる
竜という生き物がいました
竜は人を大層大事にし
人は竜に敬意を払って
互いを思いやる時代
――山で細々と生きる民を見ていいました
「なぜもっと良い所で暮らさないのか」
「貴方がたの声を聞くには地上は五月蝿すぎるのです
もっと静かな所であれば、雲の上でも行きたいくらいです」
翼を持つ竜は彼等の望みどおり、遥か山の上に彼等を招きました
そして空を舞う生き物の声を聞く力を与えてほんの少し、地上の声を届けさせました
どうせすぐに山を降りるだろうと思っていた竜でしたが
赤い髪の山の民は竜の声がよく聞こえると喜び、
山を降りることはありませんでした
彼等の喜び様に竜は嬉しくなり
お詫びに彼等を背に乗せて飛ぶ事を約束しました
――海辺に暮らす海女が言いました
「海のそこにはどんな石があってどんな音が聞こえるの?」
蛇のような竜は言いました
「それは自分の目で耳で確かめるといいだろう」
竜は透明な箱に海女を入れて海の底を泳ぎました
折角なので海の生き物の言葉がわかるように海女に力を分け与えました
青い髪の海女達は見た事のない世界に
そこで暮らしたいと言い出し
興味と好奇心に感化された竜は
体に家を打ち付けて海女と共に海の底で暮らし始めました
――ある日狩りをする民が言いました
「動物達の声を聞いてみたい」
巨大なトカゲの様な竜は言いました
「お前達のように戦ってみたいものだ」
竜は自分の望みが叶うように、古い古い過去の技術と知識を与えました
人は竜の体に鎧を植え付け、巨大な剣を作りました
巨大な竜は二本の足で立ち、鎧を纏い剣を手に入れました
お礼に竜は人に生き物の声を聞く力を与えました
動物の声を聞いて緑の髪の民は
さらに謙虚に生きるようになりました
穏やかな彼等の心に、竜は剣と鎧を使う事が無いよう願いました
――ある日、地上は大陸を巻き込んだ戦になりました
罪を犯した人類が滅びねばならなくなったのです
竜も勿論戦に参加しました
竜と生きる民も竜と共に戦に参加しました
沢山の沢山の人が死に
沢山の人を殺した民は
人知れず生きる事を選び
今でもひっそりと、人知れず生きているそうです
――レジェンドラ大陸記外伝『竜騎士伝説』より
最後までありがとうございました
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