鏡写しの私
自分の家の鏡に向かって、「お前は誰だ」と言い続けると、精神が崩壊するという都市伝説を知っていますか?
実際に今、やってみて下さい。
外出中の人はトイレの鏡でも構いません。
周りが気になる人は小声でも構いません。
手鏡でも、ガラスの反射でも、或いはスマホのインカメラでも構いません。
しかし、しっかりと発音してください。
大丈夫。誰にも聞こえないほどの小さな声でも、貴方が聞くことが出来れば問題はありません。
やってみましたか?ほら、特に何ともないでしょう?こんなのただの都市伝説ですから。
無駄な行動でしたか?そんな事はありませんよね。だって確かに、貴方に声は届いたのですから。
死ねば良いのに
またミスをした。何度も何度も何度も何度も、同じミスをした。
また叱られた。何度目かの説教を受けている。
死ねば良いのに
どれだけ叱られても、学習できない。
どうせこの説教もまともに聞いてないんだろうな。だってまた同じミスをするんだもん。
死ねば良いのに
周りの目が怖いなぁ。そりゃこんな人間居たら、気持ち悪いもんね。明らかに劣ってて、いつも皆んなに迷惑をかける。
死ねば良いのに
帰り道、下ばっかり向いてるなぁ。
こんな人間になるつもり無かったのに。
下ばかり向いてるから転んじゃった。
新しいスーツのズボンが破ける。
あーあ。高かったのになぁ。裁縫も出来ないのに。
死ねば良いのに
お会計、お金足りないじゃん。
スマホにも入ってないよ。
後ろの人もつっかえてる。
わざわざ店員さんがレジ通してくれたのに。
死ねば良いのに
電車の席、譲れなかったなぁ。
譲るつもりだったのに、気がついたら別の人が譲ってて、
老人に席を譲る事も出来ない程、心が狭いんだろうなぁ。
死ねば良いのに
また忘れ物してる。わざわざ取りに戻るの?
せっかく帰ってきたのに?
本当にミスばっかり。
死ねば良いのに
こんな人間、死ねばいいのに
あの子が羨ましいよ。
私に出来ることは、なんでも出来る。
あの子に出来る事を、私は出来ない。
私があの子になれたら、どれだけ幸せなんだろう。
あーあ。死ねば良いのに
鏡に向かって、「お前は誰だ」と言ってみる。
私が私に、「お前は誰だ」と問いかける。
私の声だ。私の声で聞いた私の声で聞かれた。
いいや、違う。
私が言ってるんだ。私じゃなくて、私が私に「お前は誰だ」と聞いてるんだ。
でも、私が「お前は誰だ」と聞かれて、私に「お前は誰だ」と聞いて。
あれ、私って誰だっけ?
そうだ。私は私だ。私が私で私なんだ。
お腹すいたなぁ。
ご飯を食べよう。
キッチンの場所も、食材の量も知ってる。
だって私が見てたんだもん。
私が私の体から、私を見ていて、
私が私だから、今私の為にご飯を作ってる。
こんな簡単な事だったんだ。
私は紛れもない私なんだ。
今なら、なんだって出来る気がする。
あの子に出来る事でも、なんだって。
この作品を読んで頂いた方へ
貴方は今、本当に貴方ですか?
▫︎はい ▫︎はい




