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《短篇》壊れた世界で君を乞う

作者: 米野雪子
掲載日:2026/02/20

政略結婚で夫婦となった、国王デレムエルと王妃シルヴィア。敵国のマドノカ国との戦で、尊敬していた祖父を失ったデレムエルは、マドノカ国から嫁いで来たシルヴィアに対して冷たく当たる。彼女は一途に王妃として勤めるが、ある日デレムエルの愛人に階段から突き落とされる。国王デレムエルは、今までの彼女への仕打ちを悔いるが───。


※誤字報告ありがとうございました。修正しました。m(_ _)m



「お初にお目にかかります。マドノカ国、第一王女シルヴィアと申します」


「…リサミア国の国王デレムエルだ。所詮表向きの友好の為の政略結婚。

 畏まらなくていい」


「はい、ですが…王妃としての役目は務めさせていただきます」


「はっ、無理をするな。

 本当は敵国などに嫁いで来たくなかったであろう?

 とりあえず王妃として、そなたは存在していればいいのだ。

 余計なことはしなくていい」


「…私がお嫌いですか?」


「好きだとでも?」


「いいえ。愛を乞う気はございません。

 ですが、どのような縁であっても夫婦となったのです。

 お互い何も知らないうちに拒否するのは早々かと…」


「お前の父は俺の祖父を殺した。尊敬していた偉大な名将の祖父をな…

 父上も負傷し、勝機はそちらが優位にみえたが最終的には我が国が勝った。

 戦の要を先に討ったはいいが、圧倒的な戦力差で結局お前は敗戦国。

 所詮、数に勝るものなどない。必死に足掻いたようだが無駄だったな。

 そして、王太子の俺が国王となり、我が国は存続しつつげている」


「それが戦でございます。こちらの兵も多数死に、父も戦死しました」


「本当は屈辱なのだろう?

 敵国に嫁がされ、お前は俺に傅かねば生きていけない。

 さぞ、恨みも深かろう」


「いいえ。我が国の敗戦は、自業自得にございます」


「ふん、いつまでその澄まし顔が持つかな?」


「お怒りは、ごもっともです。

 …ですが私は、もう何処にも行けないのです。

 ここで自分の出来ることをして償います」


「ほう?立派な心がけだ。せいぜい足掻くがいい。

 歓 迎 す る ぞ」



彼女が、敵国である我が国へ嫁いで来た初対面がこれだった。


そして、その1ヶ月後、和平条約を結んだ調印式を盛大に開き、

そのメインイベントのように結婚式が行われた。

これを終えれば、もうこの女に用はない。

俺は初夜に姿を表さず、王妃を無視して毎日を過ごした。


王族の血筋は、眉目秀麗な者が多い。

俺も例外にもれず黒髪に碧眼で、近づいてくる女は無数にいた。

その中でお気に入りの高級娼婦のダリアを寝所に引き入れて過ごす日々。

敵国の王妃などの間に子を儲ける気もなく、彼女には一度も触れず、

世継ぎの為に側妃を国内の高位令嬢から、何人か輿入れさせる計画をしていた。


俺が娼婦を連れ立っている姿を見ても、冷たい態度を取っても、

彼女は何も言わなかった。

シルヴィアはただ耐えて、王妃らしく振る舞っていた。


その澄ました態度に、益々俺は苛立って彼女に冷たく当たった。


この自分の子供じみた振る舞いが、

どんなに彼女の尊厳を傷つけているとも知らずに。




* * * * * * *




「お呼びでしょうか、母上」


「お前、シルヴィア王妃とはどうなっているのだ?」


「どう、とは?」


「上手くいっておるのか?」


「いいえ。敵国の女です。祖父を死に至らせた国の人間なのですよ?」


「お前のその王妃に対する態度が、使用人にまで伝染しているのだ。 

 メイドに邪険に扱われ、持参してきた主にアクセサリー類の宝石が次々

 紛失しているそうだ。把握しているか?」


「は?…いいえ。知りません、でした」


「だろうな。王妃が口止めしているそうだ。

 騒ぎにして陛下に要らぬ迷惑をかけたくないと。

 これは王妃つきの侍女からの訴えだ。

 事実確認をした所、嘆かわしいことに、まごうとなき事実であった。

 メイドが王妃の所持品を盗むなど…なんという失態…いや、王家の恥だ」


「それは、俺の監督不行届きです。申し訳ありませんでした…」


「誰も味方がいない敵国で、

 王妃がどんなに孤独で恐ろしい思いをしているか、分からぬか?」


「いいえ。ですが、あの女は…」


「もし立場が逆ならば、お前の妹が敵国に嫁ぐ羽目になっていたかも知れん。

 お前はそれを想像してもなお、この事実に心が痛まないのか、と聞いている」


「それは痛みます…どんな目に合わされるのか…想像もしたくありません」


「本来ならば、夫であるお前が一番親身になり、守ってやるべきであろう?」


「で、ですが…こちらは戦勝国です。どう扱おうとこちらの自由では?

 それに、数と兵力差で負け戦が分かっていながら、

 あの国が降伏せず、悪足掻きをしたせいで、

 こちらも多大な犠牲を払ったではないですかっ」


「それはどちらも同じだ!負けるつもりで戦う奴がどこにいる?

 今回は、たまたま我が国が勝利しただけ。

 先王は死に、陛下は負傷して国王を退位するしかなかった。

 これで勝ったなどと笑止‼︎ 戦など、どちらも同罪だ!」


「……は…い、おっしゃる、通りです」


「敵国といえど、お前の王妃だ。いつまで王太子気分でいる気だ。

 いい加減に国王らしく、国の為を考えて行動せぬか。      

 あの娼婦は出入り禁止だ。側妃制度も認めん。いいな?」


「はい…善処、いたします」


「もっと大人になれ、我が息子…いや、デレムエル国王陛下」




* * * * * * *




「…王妃が?」


「はい、あの…ダリア様に階段から突き落とされて…お怪我を」


「あいつ何をっ…王妃は無事なんだな?」


「はい。右足を骨折されていますが、命に別状はないそうです」


「そう、か…」



ダリアに、もう王宮入りはさせられないと伝えた直後に、

この事件が起きた。


周囲の王妃への扱いは、想像以上に酷いモノだった。

昨日母上に注意を受けたばかりなのに…このザマだ。

俺は急ぎ、王妃の寝室へ向かった。



「何の御用でしょうか?」



王妃の寝室を訪ねると、ドアの前で侍女が立ち塞がっていた。

こちらを見る目は、敵意が見える。

今まで訪ねてこなかった国王が急に来たのだ。

それは、そうだろう。



「王妃が怪我をしたと聞いた。面会したい」


「痛みが酷く、鎮静剤でお眠りになっています。ご遠慮願います」


「…っ、…眠ったままでいい。無事な姿を一目見せてくれ」


「お断りましす。絶対安静と宮廷医師より賜っております。

 状態をお知りになりたければ、担当医師までご確認ください」


「……分かった。後で見舞いの花でも贈る」


「……………」



王妃つきの侍女は、完全に俺を敵認定していた。

当然だ。彼女を突き落としたのは、俺が懇意にしていた娼婦なのだから。

それにしてもアイツ…なんて事をしてくれたのだ…




* * * * * * *




ダリアは王妃に無体を働いた罪人として、修道院に送られた。

そして、王妃に面会できたのは、3週間後だった。



「足の具合はどうだ?」


「少し痛いくらいです。歩けないので執務のみで、

 満足に公務をこなせず、申し訳ありません」


「いや、いい。怪我をしているのだ。公務など気にするな」


「ありがとう、ございます」


「……………」



彼女は、一度も目を合わせてくれない。

車椅子に座り、右足は添え木の上から包帯でグルグル巻きで、

ただでさえ細い体が更に痛々しかった。


蜂蜜のような金髪に、角度によって色が変わる青色と緑色の瞳。

美しい娘だった。

俺は、その彼女の外見さえよく把握していなかった。



「その、迷惑をかけた。

 君に怪我を負わせたのは…私が懇意にしていた女性で…

 もう王宮に出入りしないよう言った後に、あのような凶行を…

 君に…何と言って詫びればいいのか…」


「私がお嫌いなのは…分かっています」


「…え?」


「ならば、一思いに殺していただけませんか?」


「何を、言っている?」


「存在を無視され、邪険に扱われても国のために…

 この1年の間、王妃として恥じぬ働きをしてきたつもりでした。

 ですが…もう、耐えられないのです」


「……っ、……」


「私は何をして…こんなに…嫌われて……いるのでしょうか?」


「嫌ってなどいない…すまなかった…

 俺は、君を敵国の人間だと…

 君という人となりを見ずに、勝手に殺された者達への

 恨みと憎しみを向けていたのだ。それは、王妃の国も同じだというのに…

 だから、これからは改めようと…」


「ならば、殺してください」


「だからっ…‼︎ 」



否定しようと彼女の顔を見ると、一筋の涙が頬を伝っていた。

目を見開き、悲哀と絶望が映るその瞳を見て、

私は罪悪感で押し潰されそうになる。



「今まで…つらい思いをさせて、本当にすまなかった…」



絞り出すように声を出し詫びると、

彼女は両手で顔を覆い前屈みに体を丸めた。

そして、声を抑え切れず嗚咽しながら泣き出してしまった。


今まで貴族特有の澄ました顔しか見せなかった、

彼女の泣き顔に衝撃を受け、心が深く抉られた。


今回の戦は、どちらかというと我が国が仕掛けたのだ。


隣国の国境で発掘される貴重な鉱石に目が眩み、それを独占しようと、

兵力にモノを言わせて勝てると高を括ったが、思いの外隣国が抵抗してきた。

彼らの覚悟を決めた強さは、祖父も父上も正直肝を冷やしたことだろう。

だから、いつも冷静な祖父は思うように軍事指揮を振るえず、

敵国の予想外の不意打ちに命を落とし、近くにいた父上も巻き添えを喰らった。


母上は最後まで開戦に反対していたし、この娘も戦に参加したわけではない。

いわば、汚い国家間の争いに巻き込まれた罪なき犠牲者だ。


震える細い肩に手を触れると、

彼女はビクリと体を震わせ、俺の手を避けるように体を動かした。

そして、侍女がそっと俺の手を振り払うと、王妃の膝にブランケットを掛けて、

車椅子を押して何処かに連れて行ってしまった。



王妃の寝室に一人ポツンと取り残される。



ああ…俺は…



どれほど彼女を傷つけてしまったのだろう…




* * * * * * *




それから王妃に頻繁に会いに行くが、ほとんど門前払いだった。

怪我をしてから彼女は塞ぎ込むようになり、公に滅多に姿を表さない。

花も毎日贈ったが、社交辞令的なお礼の手紙は来るものの、

本人には、なかなか会えずにいた。


執務室からふと庭を見ると、日傘をさして侍女を伴い歩いている王妃が見えた。

俺は足早に庭へ急いだ。



「シルヴィア‼︎」


「……陛下、ご機嫌よう」


「あ、ああ。もう、足の具合はいいのか?」


「はい…御覧の通りでございます」



ジロリと侍女に鋭い目で睨まれる。


杖はついているが立って歩けるまでになっていて少しホッとしたが、

彼女は、生気のない瞳と無表情な顔で見返した。

以前のように、愛想笑いもしてくれない。

彼女に嫌われているのを肌で感じる。


俺は…彼女を1年間無視していたのだ…

それだけじゃない。

使用人からの嫌がらせや窃盗に悩まされていたのに、

それにも気がつかず…放っておいた。

彼女の味方は、隣国から連れ立ってきた侍女1人だけだった。


これは…当然の反応だろう。


俺は…彼女に…どう償えばいい…



「来月、王家主催の夜会がある。そなたの親族も出席するそうだ。

 無理はしなくていいが、その足で出られるだろうか?」


「はい…大丈夫です」


「俺に、何か出来ることがあれば言ってくれ。改善する」


「ありませんわ」


「シルヴィア…本当に悪かった。

 敵国に嫁いできた、君の心細さや恐怖に寄り添えなかったばかりか、

 不誠実な事ばかりして…俺の考え方や態度が子供じみていたせいで、

 使用人達まで君に無礼を働いたと聞いている。…心から、悔いているんだ…」


「…もう、結構です。

 気に入らなければ、いつでもお捨ておきください。

 王妃など名ばかりで…所詮、私は生贄ですから」


「違うっ!違うんだっ。虫がいいと思うかもしれないが、

 俺は、君とちゃんと向き合いたいのだ。

 ……もう、遅いだろうか?」


「私に…どうしろと?」


「まず、話をしたい…」


「何のために?」


「え?」


「何のために、私と向き合いたいのですか?」


「君を、知りたい」


「私は…知られたくありませんわ」


「シル、ヴィア…」


「もう、放っておいてくださいませ。

 私、陛下の邪魔はいたしません。

 お好きなご令嬢と、閨でも、子作りでも、どうぞご存分に。

 私はこれまで通り両国友好のために、傀儡の王妃でいます」


「俺はそんなことはしない、君以外妃に迎えるつもりは…」


「国内の高位令嬢から、側妃を何人か輿入れさせる計画を立てて

 いらっしゃいましたわ。私が…知らないとでも?」


「…確かに、世継ぎの為に…考えてはいた。だが、やめたんだ」


「私は構いませんわ。憎い敵国の血筋の子など不要でしょう。

 どうぞご自由になさってくださいませ」


「……っ、……」


「お嬢様、寒くなってきました。部屋へ戻りましょう」


「ええ、そうね。では陛下、失礼いしたします」



鉄壁な拒否だった。


もう…私たちの関係は、取り返しがつかないのだろうか。




* * * * * * *




「お久しぶりです、お兄様」


「ああ、シルヴィア………痩せた…か?

 それに…その杖は何だ?足を悪くしているのか?」


「いいえ、大丈夫ですわ。少し捻ってしまったのです。

 お兄様は、お変わりありませんか?」


「あ、ああ、こちらは大丈夫だ。

 王家も、民達も今のところ無事にしている。心配するな…」



一瞬こちらに鋭い視線が突き刺さる。

俺が自分の妹を大切に扱っていないと、分かったのだろう。

居た堪れない気持ちになりながら、社交辞令の挨拶を来賓達に交わす。


今日は、王家主催の夜会。

久しぶりに公の場で、俺の隣に立って微笑む彼女は美しかった。

俺は…一体何を見ていたのだろう。


立場的にファーストダンスを踊らねばならなかったが、

まだ完治していない足にもかかわらず、

彼女は凛として、その役目を見事に果たした。


そういえば、こんなに長時間近くにいたのは初めてかもしれない。

彼女は微笑んでいたが、目線は絶対に合わせなかった。

一見俺を見ているようだが、その瞳の先はわずかにズレている。


第一王女として厳しい教育を受けて育った一国の姫君。

敵国でこんな扱いをされるために、生まれてきた訳ではない存在。

こんなことにならなければ、彼女はもっと大切にされ華々しい場所で、

輝いていただろう存在だった。


ダンスが終わり、彼女は礼をして、

静かに俺の腕の中から離れて行った。


そして、親族の元へ行き、

姉妹らしき女性と手を取り合い、楽しそうに笑顔で話している。


あんな顔…俺の前では一度もしたことがない。


当たり前だ。

俺が冷たくしていたのだから。

そんな人間に親愛を向ける訳が無いだろう。


チクリと胸が痛み、そして鈍痛が広がり影を落とす。

自分の愚かさに後悔をしても…もう遅いのだ。


俺は、どうしたら彼女に許して貰えるのだろう…




* * * * * * *




「視察ですか?」


「ああ、同行して欲しい」


「強制でしょうか」


「いや、君が嫌なら無理はしなくていい」


「では、お断りしますわ。足もまだ万全ではありませんし、

 執務があります。それに、王太后様とのお茶会もありますので」


「分かった。母上によろしく伝えてくれ」


「失礼します」



やはり駄目か…



王太后…母上とはよく茶会をして、良好な関係を築いているらしいが…

俺に対する態度は隙がなく、ずっと強固だった。


公式な公務や夜会には同行してくれたが、それ以外は尽く拒否されていた。

せめて朝食か夕食を一緒にと提案しても、それもツレなく断られる。


側近の頭脳も借りて色々試したが、

どうにも上手くいかなかった。




日に日に大きくなる情欲、そして執着と独占欲。




逃げられれば逃げられるほど、追ってしまう男の性。


手に入らないと分かると、どうしても欲しくなる執着。


美しい彼女を抱きしめたいのに、手を伸ばしても届かない渇望。





何より俺に向ける、彼女の美しい笑顔が見たくて仕方なかった。





少し苛立ってきていたが自業自得の自分を諫め、それを飲み込む。


女は一度傷つけると、執念深く傷を抱えて癒えるまで、許してはくれない。




何より、俺の態度や言動は最悪だった。

それの許しを乞うには、時間をかけて誠実さを見せるしかないと、

側近からの助言に従い、今度はどう行動しようかと考えながら、

惨めな思いで肩を落とし、トボトボと執務室に引き返した。





「お嬢様…」


「なぁに?」


「今回は随分、辛抱強く食い下がりますね。

 陛下がここまで耐えたのは、初めてでは?」


「そうね。

 前回は、振り向かない私に痺れを切らして首を絞めて殺害。

 その前は、私を無理やり抱こうとしたから、拒否した私が彼の目の前で

 首を切って自害してやったのよね?」


「ええ。今回は大丈夫でしょうか?」


「さあ?私はどちらでもいいわ」


「ふふっ、怖いお方ですね…」


「あら、元はといえば向こうが悪いのだから仕方ないでしょう。

 願いを叶える為に、これくらいの試練は乗り越えてもらわないとね」




私は陛下の愛人の娼婦ダリアに、階段から突き落とされて死んだ。




敵国に嫁がされる私は、きっと命を落とすだろう。

それは覚悟の上だった。

そして、予想通りの陛下の稚拙な態度と冷徹な仕打ち、

周囲から毎日続く嫌がらせと暴言に、苦痛しかなかった。


だから、階段から突き落とされた時、私は正直ホッとしていた。


ああ、やっと終わる。この地獄から抜け出せると。



───でも、呼び戻された。



私の死後、心から悔いた国王陛下は神に祈ったのだ。

何でもするから、どうか王妃を助けてくれと。


神は、彼の真摯な祈りに応えた。

時を戻し、出会いからやり直してやると。


しかし、その望みを叶える代わりに試練を与えた。


私が死んでいない世界線で、

私に寄り添い、慈しみ、一途に愛して、大事にすること。

私が心を開いて容赦するまで、許しを乞うこと。


ただし、私が死ぬ度リセットされて、

階段から突き落とされた分岐に戻される。


これで、やり直しは3度目。


彼は、やり直すと今までの記憶を失うが、私と侍女は全て覚えている。

私は死んでも苦痛はない、この償い劇場を他人事のように観賞していた。


繰り返すほど、振り向かない私を求め渇望し、

彼が苦しんでいるのを見るのが、楽しくて仕方なかった。


身勝手に私を卑下し、傷つけた報いを存分に受けるがいい。




私が許すまで、


何度も何度も繰り返す。


出口のない回廊をグルグル上がり続ける迷路のように。




気が狂う寸前まで、

私の事しか考えられないようになるまで追い詰めて、

それでもなお、私に追いすがり、惨めに愛を乞うがいい。



自分を見失うほど、私を盲愛して情欲に溺れ、

息もできないくらいの愛で満たしてくれたら───




許してあげる。



愛してあげる。



可愛いあなたを。







女性を怒らすと怖いですよー。

最後までご拝読、ありがとうございました。

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