第3話「おてんば娘のソウサク」
———如月隼人パート
転生から7年。
俺の村は平和そのものだった。
「ハヤト!お誕生日おめでとう!」
机の上にホールのケーキが置かれている。
そこには7本の蝋燭が立っていた。
「あ、ありがとう。母上、父上」
「もう、お前も7歳か。」
「すっかり大きくなったわね!」
「僕が今ここに生きているのも母上、父上のおかげです。いつもありがとうございます。」
「まぁ!お母さん、本当に嬉しいわ!」
母は俺に抱きつく。
そんな俺たちの前に父は大量の箱を置く。
「ほれ、今年も村中からお前に誕生日プレゼントだ!これは…村長からで…これが…ガルドのやつからだ!あと…」
俺も転生して7年。
転生した日にゴブリンから豪快に村を救ったせいで俺は勇者として村中に広がっていた。
その日からと言うものの何か問題事があれば俺に問い合わせが来る。
まぁ、悪い気はしないが異世界転生ってこんな感じだっけか?
———神代パート
「先輩!!大丈夫ですか?2話でもう7歳ですよ!」
「仕方がないだろ!どんなイベントを起こそうが軽々と解決しやがる!尺なんて足りなくて当たり前だろ!」
「いっそ成人になるまで時間飛ばしちゃいましょうよ!」
「いや、待て。最強転生者という斬新な構成が功を奏したのかおかげで視聴率は右肩上がり。視聴者も飽きてない。まだ行ける!今日はいつもよりもハードなイベントを起こす予定だ!」
「さ、さすが神代先輩!ここまで想定済みて事ですね!さすが黄金のディレクターは違うなぁ」
「ま、まぁな…!」
正直俺は焦っている。
今は、視聴者も最強転生者と言う斬新な映像をギャグとして消化できている。
だが、俺の経験上これから最強転生者が難事件を斬新な方法で解決すると言う単調な構成は飽きられるだろう。
だから俺は昨日四六時中考えた。
物語に必要不可欠で物語にも深く関わる存在そう、ヒロイン登場だ。
最強転生者に翻弄され基礎中の基礎を忘れていた。
転生者が最強ならばそいつにとってのマイナスイベントを出すのではなくプラスイベントを起こす。
ヒロインは後々どんな構成にも役に立つ。
例えば、結婚イベントや裏切りイベント、それか…死亡イベントとかな…
「先輩!そのイベントってなんなんですか?」
「後輩よ…聞いて驚くな。ヒロイン登場イベントだ!」
「な、なるほど!最強転生者とヒロイン…何か面白い事が起きそうです!!」
「ふん!そうだろ!よし!じゃあここにヒロインNPCを設置してっと…」
目の前の機器を使ってまるで、アバター作成ゲームかのようにヒロインの顔を仕上げ配置した。
———ハヤトパート
「おい!ハヤト見てみろ!ガルドのやつ、お前のために剣を打ってくれたぞ!」
父が大きな箱を開け、中には鉄で丁寧に仕上げられた剣が入っていた。
ガルドとは、父が冒険者時代からお世話になっている鍛冶職人だ。
俺も何度か父と共にガルドの鍛冶屋に遊びに行ったことがある。
「ハヤト剣を持ってみろ!」
「はい、父上」
「まぁ〜!ハヤト!様になってるわ!まるで昔のお父さんみたい!」
「ふん!まぁ、俺の息子だからな!どれ、俺が剣術を教えてやろう!」
「あ、ありがとうございます!」
父と共に父が普段剣術の練習をしている小屋に向かった。
「まずは基本の素振りだ!剣を振り上げて思い切り!振り下ろす!やってみろ」
「は、はい」
俺は父に言われた通りに剣を振り上げる。
初めての剣の感触…身体は強張っている。
「今だ!振り下ろせ!」
父の合図と共に剣を振り下ろす。
一瞬、ものすごい突風が吹き荒れる。
「な、なんだ!?この風!」
突風が収まった。
「い、今のは……竜巻でも起きたのか!?あ、あはは……」
父が、苦笑いすると俺が振り下ろした方向の壁に向かう。
「こ、これは…」
そこには、斜めに切り込みが入っていた。
俺が振り下ろした軌道と全く同じ
「あなたー!大丈夫!!急にすごい風が吹いたみたいだけど」
「あ、あぁ…大丈夫だ!なんともない!…ハヤト一旦ウチへ戻ろうか…」
「は、はい」
父と共に小屋を出て、ウチに向かう。
ふと空を見上げると一直線に雲が割れていた。
俺に剣術は無理そうだな——
——コンコン
突然ウチの扉にノック音が響く。
「ん?なんだ?」
扉を開けるとそこには見知らぬ女性が立っていた。
「すみません、ウチの娘見ていませんか?」
「いや、見ていないが」
「あらぁー!ルナ!久しぶり!」
後ろから母が手を振っている。
知り合いなのか…?
「マリエル!久しぶり!勇者様の親ってまさかあなた!?」
「俺は、勇者ではない!」
「あら、そうなの?生まれたばかりで村中のゴブリンを一掃した英雄って私たちの村でも有名よ」
「まぁ〜!ハヤト有名人じゃない〜!」
「…それより、娘さんが行方不明なのか?」
「は、はい…薬草を取りに行くって言ったきり帰ってなくて…」
「娘ってリィナちゃんよね?ハヤトと同い年の…」
「そう、今年7歳の女の子なんだけど…。最近、山で恐ろしい魔物が出たって聞くから心配で…」
「それならうちのハヤトに任せなさい!
ハヤト!リィナちゃんを見つけてあげて!」
「わ、分かった…」
「ありがとう!さすが勇者様!お願いします!」
こうして俺のリィナ探しが始まった——。
———神代パート
「先輩!ヒロインっていつ登場するんですか?もしかしてヒロインって…」
「そう、リィナだ。行方不明のヒロインを見つけに危険な山に!そこに待ち受けているのは…」
「なんですか?そんなに危険な山なんですか?蛇…とか?」
「ノンノン、後輩くんよ。ドラゴンだ!」
「ドラゴン!?そ、そんなのいくらなんでも危なすぎるんじゃ…」
「本来なら大蛇や、クマとかでもいいんだが…あいにく最強転生者だ。瞬殺してしまう。」
「流石にドラゴンはやりすぎなんじゃ…」
「大丈夫だ、見てなって後輩くんよ。俺を誰だと思っている。黄金のプロデューサー神代様だぞ〜!匙加減はわきまえている。」
「そ、そうですよね!先輩なら大丈夫ですよね!」
「あぁ、まかせろ!…お!最強くんがリィナを探しに山に入ったぞ!そろそろカメラワーク調節しないとな…」
———ハヤトパート
リィナが行ったであろう山はここか…
かなり高いな…
ハヤトは草木を掻き分けリィナを捜索する。
こんなところ本当に女の子1人で行くのか…?
ん、誰かいる…
そこには艶やかな金髪の少女が座っていた。
艶やかな金髪が夕陽に照らされて輝いていた。その姿は、迷子というより舞い降りた精霊のようで思わず足が止まった。
「おーい!リィナか!?お母さんが探してたぞ!」
少女はこちらを振り返り、返答する。
「だぁれー!なんでリィナの名前知ってるのー!!」
俺はリィナの元へ走り向かった。
「お前の母に頼まれてお前を探しにきた」
「もぉーママったら!私夕方には帰るって言ったのに!」
「もう夕方だぞ…?」
「え…ほんとだ!!薬草取りに夢中で気が付かなかったわ!」
「母が心配しているぞ。早く帰るぞ」
「ちょっと待って!あの丘の上に特薬草があるの!あれだけ取らせて!」
「分かった…特薬草を取ったら帰るぞ」
「うん!私を探してくれてありがとね!君名前は…?」
「キサラ…いや、ここでは…ハヤト・グランディアだ。よろしく頼む」
「ハヤト・グランディア…じゃあ、ハヤトって呼ぶね!私はリィナ!リィナ・カルナード!よろしくね!」
「あぁ、よろしく、リィナ。早く特薬草を取って帰るぞ」
「うん!」
ハヤトとリィナは特薬草が生えている丘を目指し山を登る。
「ママが言っていたんだけど!最近ここの山でドラゴン?ていうのが出ているらしいけどどんな動物なんだろう?かわいいのがいいな…?」
ドラゴン!?ドラゴンてあれだよな…
てことは、かなりやばいかもしれん
「いてっ!」
俺は突然、躓き体制を崩しそうになる。
「なんでこんなところに穴が…!?…こ、これは足跡…?」
地面に残された足跡は、人間の家ほどの大きさがあった。




