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2話-2

「こちらアンドンターブル。オーダシュー、南部の戦況はどうだ」

「ああ、やってるよ!」


 オーダシューは目の前にいる偉丈夫を相手するのに必死であった。


「ブモォオオオオ!」


 自然にないほどにドギツイ紫色の豚の獣人ビーストは、何度も、何度も拳を地面に叩きつける。敵味方構わずこの撃に巻き込まれた獣人は、ボロ雑巾のようにヘロヘロになっている


「ボス、ひでぇや」


 同じ豚でも話の立つ部下は、この巨大な暴君の上司に泣き寝入りするしかなかった。


「もう一発当てれば変わるか?」


 オーダシューはボスを槍で突く。しかし、その皮膚はただへっこむだけで、血すらでない。


「全く、豚にもかかわらず筋肉ダルマだな」


 しかし、この発言に部下の豚の獣人はその発言が気に食わないらしく舌を鳴らし指を振る。


「豚にも関わらずではないぞ、豚だからだ。でしょう、ボス」

「ブモォオオオオ!」

「さて、どうするか」


 拳をかましたボスは、今度は拳を振りソニックブームを飛ばす。これを掠ったオーダシューは、それで傷がついたことに驚いた。


「ただの風切りでこの威力、あの筋肉の厚さといい肉弾戦では分が悪いな。行ってこい! ラディカルレフレクション!」


 オーダシューはクオリアギアの槍を投げると、その槍はカタパルトから発射したかのような速度を出す。しかし、その槍はボスの豚にかすりもしない。


「ブモモモ!」


 笑っているボスは余裕そうであったが、部下は気が気でなかったらしい。


「後ろです! ボス!」


 ボスは振り向いたが、少し反応が遅れた。その鼻っ面の穴の中に、その槍が突き刺さったのだ。ボスは、悶絶して鼻を擦る。いくら体が筋肉ダルマでも、皮膚の薄い場所は存在するのだ。


「ああ、なんてこと!」


 そのまま槍(その名はラディカルレフレクション)はさらに勢いを増し、何度も頭を狙い、ついでに雑兵狩りもする。これには、豚たちも大弱りだ。


「マラン、そちらはどうだ!」

「遠くに、見えてきたかな? いや違うかも」



 この国の西には大きな海がある。いくら魔法で対策できるとはいえ、多くの機械は錆びつく可能性からあまりこの地を上物としない。しかし、海側には工業地帯が存在し、原料の輸入輸出はこの付近の港が頼り。つまり、新たな機械を生み出す要であるため、機械たちにとっても海は母だ。


「なーんか、見えたような見えないような……」


 マランは海を見ながら呑気にしていた。口にはハイオクなオイル吸って、陽気な様子であった。


 それを見て魚と人のあいのこの頭のビーストはえら呼吸で笑っていた。


「グッフォグッフォ、この辺りの海は汚いのぉ。工業排水まみれで息苦しいわ」


 泳ぎは素早く、じわりじわりと陸に近寄る魚人のビーストたち。マランはようやっとこれが敵影と気がついたようだ。


「あれはなんだろ、なんだか怪しげなやーつー」

「グフォフォ、その程度の認識とは甘いものだ。ワシはパッツィオ。そこに海がある限り、そこはワシの領域じゃよ!」


 急速に泳ぎ、あっという間に大陸まで数十mまで近寄る。この量の兵力が上がってくるのは、ファンタスクでも厳しいだろう。


 しかし、マランは自らの手の甲を海の中へとつけた。電線が海へ広がり、花のようになる。


「えい♡」


 瞬間、水の中は稲妻が光ったように煌めき、同時に周囲のビーストたちは皆全身を震えさせた。


「あびゃびゃびゃびゃびゃ」

「これが、『ファンタスク・エクレール』さ!」


 海は電気を通す。それゆえにこんな簡単に足止めができているのだ。得意げになったマランは、オイルを手に掲げ笑ったように口元の格子を動かす。


「だが! この程度で倒れる黙示録の獣(ビースト)では! あびゃびゃ」


 何度も電撃をあびせるマランと痺れ続けるパッツィオたち。一部の魚のビーストはいまだ状況が飲み込めずおろおろとしている。何せいくら海が電気を通すとはいえ、海は広大。そこまで広範囲に電気を流せるわけではないのだ。


「しかし、この電気はなんて威力、ばばばば」

「そりゃあそうだよ! ファンタスク・エクレールは雷とそう変わらないほどの高電圧だからね!」


 いまだに呑気にして岩場に腰掛けるマランだが、その岩に何か違和感を覚えた。


「今、この岩場、動いた?」

「どうやら気づいてないようじゃな! その岩もまた、ビースト、ロックビーストなのだと!」


 瞬間、マランの体が浮き上がり、空を舞う。地面だと思っていたその岩は、目と口を模した部位があり、まさしく岩の怪獣といわんばかりだ。


「ふーん、多少なりともやるみたいじゃーん。けど、この程度の相手、片手で倒せるモンね!」


 マランは左手の電線ををつけたまま手に持った知恵の輪を解きそうで解かず、そのまま大きく振りかぶる。そのまま彼女は急に消え去ると、海の上に現れた。これを追って、ロックビーストは海に向かってゆらりゆらりと近づいていく。


「いかん! ピエトーラゴン! 戻れ!」


 その声がピエトーラゴンというロックビーストに聞き届けられた時にはすでに遅し。ピエトーラゴンは海に堕ち、あっという間にその体が水に濡れて戻ることもできず崩れ落ちていった。


「力技じゃあ勝てない相手も、こうやって幻で一捻りさ!」


 マランは得意げに腰に右手を当てたが、そこはまだ波打ち際。決して海には入っていなかった。あの時見えていたマランはすべて幻、嘘の存在であったのだ。

 しかし、そんなマランの頭に何やら通信が入る。


「まずい! この速度では、転送もとても……」

ボス「ブモォオオオオ!」

ブッカ「今日のカード紹介、だそうで! 今回のカードはこれ、ですかい?」


ボストロル ガリュドン

チェイサー

火属性 種族 ビーストマン/ジャイアント

コスト9 攻撃力6 守備力8 速さ-2

このチェイサーを出す時、ビーストを好きな数破壊してもよい。破壊した数、このチェイサーを出すコストを2少なくする。

このチェイサーが出た時、山札の上から6枚を見る。その中から好きな数のコスト5以下のビースト・チェイサーを出す。

自分のビースト・チェイサーはすべて「速攻」を得る。


ボス「ブモォオオオオオっ!」

ブッカ「ええっと、展開力に長けたビースト! これで猛攻を仕掛けて相手を蹴散らせ! ですかい?」

ボス「ブモォオオオォォオ!」

ブッカ「……こんなに通訳頑張ってるなら、もうちょいあっしにも出番いただけませんかねぇ。せめて名前だけでも明らかにしてくれやしませんか……」

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