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2話-1 黙示録の獣(ビースト)

「ビースト……!」


 目の前にいる獣の二人組を見て、トリオンファンは全身に電気の走るのを感じた。黙示録のビースト、隣国アキラメッドのカトリー教、この国の国教マシーネテスプリの元となった宗教である。その執行部隊、宗教の黒い部分を担当する存在こそが黙示録の獣(ビースト)、この国の侵略もまた、彼らに一任されている。


 セキレイと人を足した姿をした女は喉を鳴らしながら手を差し伸べた。その手には羽が生えており、そのくせ持ちにくそうでありながらも指のようなものもあった。


「あたしの名前はレッテーナ、そしてこいつが」


 そう言ってレッテーナは親指で後ろの奴を示した。彼はこの歳の割に極めて落ち着き払っている。


「……オーパスだ。よろしく」

「契約ともなれば覚えておいてほしいね。何、悪いようにはしないさ。ただ、ファンタスクの神秘を渡してくれればいい。あたしらの目的はそれだけなんだからねぇ」

「ファンタスクの神秘?」

「そう、ファンタスクの神秘さ。この国のファンタスクなら誰でも知っているであろう、あれさ」


 その言葉に、トリオンファンは自らのクオリアギアを隠すようにした。もちろん、ビーストの奴らにはその前から目にされていたので、あくまでも意思表示だ。


「それは、渡さないよ!」

「おおそりゃ残念。交渉決裂ということだねぇ」


 残念がったレッテーナは羽をバサバサとはためかせると、そのままトリオンファンの方に羽を向け、強く睨んだ。今までの柔和な態度からは想像もできないほどに。


「オーパス、やっちまいな」

 犬っころのオーパスは、彼女の腰から端末を抜き出すと、そのまま連絡をかけた。


「出撃、出撃。ビーストの隊よ、目標奪取のため死力を尽くせ」


 そして、オーパスはトリオンファンの顎のあたり目掛けて、その鋭い爪で襲いかかる。あっという間に彼女の細首を掴むと、ミシミシと音を立ててひび割れていく。


「こんなことで、脅したつもりでも……」

「ほう、発声機関は喉にはないか。しかし、握り潰せば関係のないこと」


 締めがキツくなってゆくその隙に、レッテーナはこの部屋を出て窓を突き破り空を飛ぶ。彼一人でこの状況を任せてもよいと考えたからだろう。


「もう、動くこともままならないだろう。降参を音を出して言ってみろ」

「本当に、わからないんですか? こんなことで、機械マシーネのわたしを脅したことにはならないってことを!」


 足元から旗の形のクオリアギアが浮いてトリオンファンの腕に巻き付く。そして、そのままあっという間に解け、その竿でオーパスの喉を突き上げた。苦しがった彼はその手を緩めてしまい、トリオンファンは臨戦体制をとれる。


「この状況から立て直すとは……油断ならないな」


 片や拳を構え直し、もう片や旗を大きく振りかぶる。ここでは熾烈な戦いが発生しそうな予感だ。


「だが、ビースト隊はすでにこの国に雪崩れ込んでいる。ファンタスクはみなここに集まったはず。もはやそちらの救援は間に合わんぞ」

「大丈夫、わたしたち、ファンタスクなら!」



「通達です! トリフルール首都ファンタシェリー中心部にビースト侵入!」


 伝令が来た場所はファンタスクの集まった空間であった。マランに何やらガミガミと怒り煙を立てるオーダシューと本を読むアンドンターブル、緊急事態というにはあまりに呑気だ。本を懐にしまったアンドンターブルは伝令に聞く。


「おおよそ把握した。場所は?」

「それが、複数の場所に出現しておりまして、我らが母クオリアマギア様のおります中心部をはじめ、北東部、北西部、南部にまで出現しております。それぞれ距離にしてこちらから30kmはあるかと」

「バリアは使えるか?」

「ああ、バリアね! あれは便利だよねぇ」


 マランは自分の功績でもないことなのに自画自賛のように誇っている。


「ファンタスクバリアの位置に、ですか。それなら可能だと思われます。むしろ、私のような者よりお三方のほうが詳しいと思われます」

「確かにいけるな、アンドンターブル」

「担当する場所は感覚識を繋げれば把握できるだろう。マラン、出撃だ」

「あいさー、承知!」


 そうやって談笑していると、また、かの3つの影が忽然と消える。伝令が驚いてもないことからわかる通り、彼女らが消失したわけではない。これは、瞬間移動。この国の外に貼られたファンタスク・バリアを含むこの国のすべてのクオリアギアのある場所に、彼女らはすぐに現れることができるのである。



「こちらアンドンターブル、クオリアマギア様の付近に到着した。敵影も既に確認している」


 聖霊機構クオリアマギアの足元まで侵略を続けていたビーストの隊長は、道化のようなエの字の目に溶けたような腕を持つ異形の怪物。腕は6本あり、どちらか言えば虫っぽいが、肉感は凄まじい。近くの機械を千切っては投げ、一般市民すらバラバラにされる、無惨な光景となっていた。


「へぇっはははは! もろいもろい。我、ヴェルダーノにとっては、鉄など紙屑!」


 のけ反って笑っている奴の目の前に、アンドンターブルは仁王立ちした。


「なんだあ、いかにも他の奴らにしたことをやってみろ、といわんばかりだなぁ。腹立つぞぉ、その余裕の態度! 獣は獣でも罰の化身、ドグマビーストの我に逆らうとは!」

「別に逆らってはいないのだが……まあ話が早くて助かる。意外と頭が良いのだな」

「意外とはなんだ、このオッティモマニフィコミラコロペルフェットベニッシモ天才ジェニオのヴェルダーノに向かい!」


 彼は突進から複数の腕を振りかぶり、一つ、二つ、三つと遅れてくるように上から順に平手をぶちかます。いくらファンタスクが硬いとはいえ、これを受ければひとたまりもない。しかし、アンドンターブルは初撃を鎧の端で受け止めると、その力を受け流すようにグルリと回り、相手の後ろをとって手をかざす。


「頭は良いが少しカッとしやすいか?」

「こやつぅー!」


 あっという間に奴を制圧してしまったアンドンターブルだが、これを見て黙っている他の獣兵士ではない。


「怯むな、かかれー!」


 まとめてアンドンターブルへ突撃をするも、彼女の手に持った本から、光が溢れると、瞬く間にこの場を埋め尽くし、獣であるビーストは皆目を擦った。


「大丈夫か、皆!」


 ヴェルダーノが気づいた頃には、もうアンドンターブルは離れた位置にいた。そして、再度まばゆいばかりの光を浴びせる。


「ぐぅっ!」


 次に光から覚めた時、兵卒の獣の一部は狼狽えた声をだした。


「ああ、見えない、何も!」

「熱い、暑くて毛を毟りたくなる!」


 強い光に目を焼かれたり、皮膚が火傷したりした獣たちがそこには大勢いた。ヴェルダーノはこの戦法に困惑しつつも、この小さくて可愛らしい機体のファンタスクに初めて恐怖を抱いた。


「知ってるか、強い光は水分を蒸発させるんだ。それは皮膚だけではない、網膜まで焼いてしまう。私としても手荒な真似はしたくないんだ。早めの降参を頼むよ」

「クソッタレが……」

「さて、オーダシューたちの様子はどうか……」

レッテーナ「今日のカード紹介ぃ! 今回のカードはこれだね!」


疾き翼のレッテーナ

チェイサー

火/風属性 種族・ビーストマン/フェザーノイド

コスト3 攻撃力3 守備力1 速さ+2

このチェイサーを召喚する時、相手のそのターン中に使用したエナジーを再消費して召喚できる。

速攻ーこのチェイサーは出た瞬間に攻撃を行える。(速さは現在の速さを参照する)

このチェイサーは迎撃されない。(迎撃された場合、貫通する)

このチェイサーが攻撃した時、手札からコスト3以下のビーストを「速攻」をつけて出す。


レッテーナ「まさしく切込隊長と言うべき速攻向けのカード! 迎撃されない効果も、非常に厄介だねぇ!」


オーパス「一番上の効果を見てもらうといいが、ビーストはこう言った相手の消費したアドバンテージを奪い取ることに長けた種族だ。まさに神聖なる奪取部隊に相応しいな」


レッテーナ「他のビーストサポートのカードについては次回を待ってちょうだいな!」

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