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1話-2

 トリオンファンは2人を連れふらっとした足取りで道路を進んでいくとその突き当たりのところで立ち止まった。そこには小さなキッチンカーが来ていた。無論、キッチンカーも意思を持つロボットだ。彼は、トリオンファンにランプを5回点滅させ挨拶をする。


「こんにちは、ジャンボンガさん、今日もお元気ですか?」

「あたぼうよ、今日も身体ん中バリバリ動かしていくぜ、な、カトリーヌ」

「もちろんですよ。さあ、トリオンファンさん、いつものやつですか?」

「そう、あれをお願いします!」


 ジャンボンガに乗った腰を絞った人型ロボであるカトリーヌは、車内のパイプを動かすと、そこから小さな黄土色のビーンズを複数作り出し、トリオンファンに渡した。


「おお、このオイルマメ! 今日はいっそう美味しそうだね!」


 彼女がそのツヤのある機械の手につまんだそのビーンズは、日の光に当てられ、さらに輝いていた。そして、彼女は軽くもう片方の手を添えると、それを口元に近づけてそこにある発声機関に穴を開け、吸い込んでそれをいただいた。


「うーん、やっぱり美味しい! ああ、クオリアマギアよ、この恵みに感謝します」

「なに、これ? 美味しい?」


 ふと、眺めているフードの背の低い方は、この豆に興味を示した。それを聞いてトリオンファンは慌てて両手を前で振ってよくないこととアピールする。


「ああ、これですか。これは食べちゃダメですよ。このオイルマメは、機械生命における食べ物なんです。わたしたちファンタスクは、どんな動力でも動かすことができる神秘を持っておりますが、他の機械は皆、動力が様々です。しかし、このオイルマメはどの機械も一様にいただくことができる、万能食材なんです。でも機械油なので、有機生命は食べてはいけません」


 これにショックを受けたのか、小さい方は首を下に向けた。よほどお腹が空いてたのだろうか。


「あ! でもこちらでは有機生命向けの食べ物も取り扱ってますから、それをいただきましょう!」


 彼らは自らの財布からこの辺の統一規格の硬貨を出すと、カトリーヌからガレットと何やら透明な飲料をもらった。そうして、トリオンファンはフードの二人と軽食をすることにした。


「おっ、この水、オレンジ味」

「そうでしょう、ル・オレンジアヴニールはこの国の特産です!」


 こうして同じ机に座ると話が弾み、トリオンファンは新たな話を始めた。


「そうです、私事ですが、わたしたちファンタスクは他にもいるのですよ。例えば……」

「くぉらぁあマラン!」


 急にハキハキとした怒る大きな声が小道をつんざいた。すると、この小道を小さな影がときたま浮きながら現れた。歯を出して笑っているような格子のパーツの口元に手を添え、揶揄うようにたまに後ろを向きながら走り去っていった。


 そして、次に来たのは、真っ直ぐ愚直にまでのフォームで走る、馬のような四つ足の、それでも二本足のように直立をする人型のロボットであった。どうやら、怒っているのはこのロボットらしい。よく見るとその胴体はところどころ配線が剥き出しになり、いわば外装を剥いだ機械のようになっている。そして、外装は胸と股関節の部位だけ残し、その体にはリボンが巻かれている。


「お前……またアタシのクオリアギアにイタズラしただろ! このあられもない姿を見て、罪悪感のひとつでも湧かないのか!」

「へっへーん! 騙される方が悪いんだよー!」

「そうっ……ゆうお前の反省のかけらもないところが腹立つんだよアタシはー!」


 土煙も出るようなそのチェイスを見て、トリオンファンは苦笑した。


「あれが悪意マランお姉さまと、追いかけてるのは勇猛オーダシューお姉さま。まぁ、そう言いますけど二人とも悪いかたではないんです」


 オーダシューを撒こうと逃げ続けるマランは、次第にファンタスク・祈りの(プリエール)大聖堂にたどり着いた。この大聖堂は、単に宗教的なシンボルであるだけでなく、ファンタスクや、その他クオリアマギアやファンタスクを信仰する国教・マシーネテスプリ教の信徒の生活の拠点、すなわち修道院を兼ねているのである。


 マランはその裏口から侵入して地下へ向かう階段を音を立てて駆け降りる。あの観光客すら息を呑むほどに複雑な装飾の施された厳粛な表から入るのは、さすがのマランも憚られたのだ。しかし、それなら袋のねずみであると睨み、オーダシューは安堵を胸にその階段を数段飛ばすように降りる。


 マランが無駄に大きな味気のない木の扉を開けると、そこは巨大な図書室になっていた。数多の本が円形を模る本棚に並べられており、まさに本の360度ドームといったところだ。機械生命もまばらに居るが、やはり静かで落ち着きのある空間だ。空には古来からの魔術に浮いた板が複数あり、誰にも邪魔されず空中で本を読める特等席となっている。


 そこに先ほどのやかましい二体組が、入ってきたのだ。悪意マラン勇猛オーダシューも聖女なので偉い立場にはあるのだが、流石の彼女らでもこれには本を読みに来た者たちに睨まれる。まるで、監視カメラが人らしき影を捉えた時のようだ。


 2体は階段をドタドタと駆け上がり、一番上の本棚のある外周を走っていく。マランは本を選んでいる相手をひらりひらりとかわしているが、オーダシューはかわそうとしてもたまに当たってしまい、その度にごめんと謝っている。しかし、それでもオーダシューの方が運動に慣れているからか、距離は縮まっていくのだ。


「こんのっ、捕まれ!」


 オーダシューは自らのクオリアギアから電気を纏うライトサーベルのような武器でマランに一振りする。


「やーだよー!」


 マランはこれを金属で出来たマントに当ててかわす。マントに当たったそれは大きな火花を散らしたが、ここは本体と絶縁されているので、当たってもノーダメージだ。


 ふと、そんな中で空中の板に乗って本を読み続ける彼女らと似た機械が、たまたまそばに寄ってきた。波のようなパーツが頭を構成し、目のライトはセダンのようにクールな茶褐色の機械少女だ。彼女もまた、ファンタスクであった。


「おい、アンドンターブル! あんたからもマランになんか言ってやってくれ!」


 正直この空間ではお前が言うななオーダシューからの言葉に嫌な顔もせず、本の文字を追いながらもアンドンターブルは逃げるマランに向き直った。


「マラン、お前はこの図書館の管理を任されていたが、放棄しただろう」

「うっ、だってめんどくさそーで……」


 マランは虚をつかれて、一瞬固まる。当然、オーダシューがそれを見逃すわけもなく、腕を伸ばして捕まえようとする。


「ひゃあっ!」


 マランはサッと幅跳びし、なんとか打開した。


「しかし、おかげで私は代理でここの管理を任された。おかげで本に囲まれ、楽しく過ごせている。感謝しているぞ」


 アンドンターブルは一旦本を閉じる。この話を聞いて、オーダシューは微妙な音を立てるしかなかった。アンドンターブルは真面目なやつで、責める気はしなかったのだ。そしてマランはそんな温厚なアンドンターブルに疑問に抱いたのだ。


「しっかし、なんでそんな本読んでるの? 知りたいことなんて今ならインターネッツで一発じゃん」

「確かに今は情報社会だ。人間も手元の端末でインターネットから情報を拾えば、ただちに知見を得ることができるだろう。それが、機械なら尚更だ」


 アンドンターブルは、そんな中でまた別の本の表紙を覗く。その背表紙には、ファンタスクのあり方と書かれていて、随分と古いようで色褪せてしまっている。ペラペラとページを捲り、どうやら前から読んでいたらしい真ん中あたりのページを開く。


「しかし、そうしてすぐに手っ取り早く調べて、次の日には忘れているようなことは、正しい知識とは言えないのでは思っていてね。だからこそ、わざわざ本を探し、読み、さまざまな考えを比較して、いつでも頭の中から引き出せるようにする。それが本当の知識なのではと信じている」

「ふーん、ぼくにはちょっと分かんないや……」


 マランは手すりの外側を浮きながらなぞっていく。オーダシューはからかわれ続けて、怒髪天をつきそうな勢いだ。


 ふと、大きなサイレンが静寂の図書館を裂いた。ただ、それに周囲の機械たちは驚くこともなく、淡々と今読んでいる本を置き、この場所を後にしだした。


「枢機卿が来られます。皆様、慌てず配置についてください。繰り返します……」

「枢機卿の巡回か、仕方ない、向かうぞ」


 アナウンスを聞いたアンドンターブルは本を閉じると、まるでその場に最初から居なかったように消失した。


「しめたっ、この隙に乗じて……」

「あ、マラン、おまえっ!」


 もうすでに出口にいるマランに向けて槍のクオリアギアを投げたオーダシューは、祈りを捧げるようなポーズを取り、こちらもまた消失すると、クオリアギアのある場所に出現する。


「あっ、まずっ」


しかし、まだマランのイタズラがかかっていたためか、リボンが増量され、絡まってしまった。


「学習しなよ、オーダシュー!」

「てんめぇええ!」


 しかし、金属で出来たリボンを馬力で引きちぎったオーダシューは目のランプを赤くして、丁度発電機のタービンを大きく回したような大音でマランの肩を掴んだ……。

マラン「今日のカード紹介、今日のカードはこれだ!」

追い風

スペル

風属性

コスト2 速さ+2

山札の上からカードを1枚エナジーブーストする。

マラン「シンプルな山札からのエナジー増加カード! 風属性はこういったエナジーや速さをコントロールすることが得意なんだ!」

アンドンターブル「エナジーの使い方について、説明した方がいいのではないか?」

マラン「そうだった、そうだった! エナジーは1ターンに1度(それより小さな単位である1ラウンドに1度ではないよ!)、スペシャルカードで手札のカードをブーストを行うことでエナジーを増やせるんだ! このエナジーが増えれば増えるほど、ターンのはじめに獲得できる活性ポイントが増えていくんだよ。ゲーム最初に貰えるのは5ポイント、それからのターンのはじめに3ポイントずつ。カード1枚につきさらに1ポイントとね!」

アンドンターブル「この活性ポイントがいわばマナシステム。コストを支払う時は、この活性ポイントを消費して払うぞ。活性ポイントはカードで存在するものではないことには注意だな」

マラン「しかも、この活性ポイントは1ターンで使い切らなくても貯めておけるんだ! 最初からケチらず使ってしまうか、しばらくしてからまとめて使うか、戦略を立てられるね!」

アンドンターブル「今回の『追い風』の風属性のように、属性を持つカードを使うときは注意が必要だ。その場合は、その属性のカードがエナジーに置いてある必要がある」

マラン「同一属性なら1枚で使いまわせるけど、複数属性を使うときは注意が必要だね!」

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