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8話-1 神の写し身との接触

 ファンティは恐ろしいまでの気配が側に近づいていることに狼狽を隠せなかった。しきりに手を動かし、祈るというよりかは縋るようなポーズになる。心配な彼女はろーシューに連絡を取った。


「オーダシュー、あのモルトファンタスクがまた来るかも……!」

「そうか、願ったりかなったりだ! 全力で迎え撃つ!」


 ローダシューは董仙の車から離脱し、外を警戒する。周囲は暗く、照明が近くにあるからか、なおさら遠くのものは視認できない。今、頼れるのは何かもわからぬ気配だけ……。


「どうしたオーダシュー! 周囲を飛ばれると気が散るのだが?」


 董仙の問いかけにも、オーダシューは答えない、いや、答えるほどの感情の余裕は彼女にはなかった。


「はっはー! 虹の道はむしろ短縮道路(ショートカット)贈呈(プレゼント)になっちまったなぁ!」


 アオスブルフはファンティが引かなければ虹の道がこれ以上続かないことを理解し、地面に飛び降りる。数mは上からの落下、壊れそうなものだがサスペンションがしっかりと機能し、車体が跳ねるだけに終わった。そのままアオスブルフはファンティらを引き離す……。


「うぎゃああああ!」


 その時であった。後ろの方から男の断末魔のような叫びが複数響いた。アオスブルフはそれが自動破(オートバーン)仲間(ヤロウドモ)の声であることを忘れるはずもなかった。急な焦りが、アオスブルフを高速道路を逆走させた。


舎弟(おまえ)ら! 無問題(ぶじ)か!?」


 対抗からくる車は逆走する自分の速度と合わさり、通常の2倍は速い。しかし、アオスブルフの卓越した暴走テクニックは、まるで対向車など存在しないかのようであった。


 ファンティは彼を追うように虹の道の進路を変える。相手があの怪ロボットかもしれない。期待と不安を抱えつつも、行動しなければいけないと思っていたからだ。


「え、大丈夫かファンティ!」


「大丈夫サカタ、逆走といっても空の上なら! それより、どうする……! オーダシュー!」


「仕方ない、ファンティ! クオリアギア、使わせてもらう!」


 ファンティは虹そのものでバリアを描くようにして道を引くものだから、サカタらにとっては大変だ。何度も道が上下し、吐き気を催す。


「うおっぷ、大丈夫かよサカタ」


「大丈夫なはず……」


 しかし、先ほどと同じく、空の上ならアオスブルフに追いつくことだけはとても楽だ。


「よっと、トランスファート完了!」


 ようやくオーダシューがファンティの横に着いた。その時、天を焦がすが如くビームが、地を割り、道路を分断した。結果、仲間(ヤロウドモ)とアオスブルフは、今作られたばかりの大きな谷の両岸にいることなった。


「くっ、速度(パワー)があれば越えられなくもねぇが……そうなると光線ビームがヤベェ。くそっ、はめられた!」


 悔しそうに谷の奥を見つめるアオスブルフにも、速攻でいくつものナイフが彼のエンジン付近を連撃で追い詰める。幸いにも彼にもドローンがあったもので、機銃での迎撃自体はできた。


「ああ、あいつか、憲兵(ポリ公)!」


 闇夜の中から姿を現したのはファンティらにとってあまりにも最近に、絶望的な状況で見た怪ロボットの姿と完全に一致していた。気持ち悪いくらいの蜘蛛のような姿、身体を真っ二つに割ったような機体、憲兵と呼んだことには引っかかるが、間違いない、奴らはモルトファンタスクだ!


「よう、久々じゃないか、モルトファンタスク。アタシたちがこれまでどんな辛い思いでいたか、どうやって爪を研いでいたか! その装甲で思い知りながら破壊されろ!」


 オーダシューは血の気が多く、槍・ラディカルレフレクションを振り回しながら、闇に飛んでいった。空中では4つの光が四方八方に飛び続ける。その内の三体、モルトファンタスクに、何度も槍が刺さりそうになるも、そう易々とは刺さってくれない。


「やはり強い……しかし、見えてきた!」


 それでも、一手、一手と近づいていってるイメージは出来ていた。何発か撃ってるうちに確実にクリーンヒットが来ると。


 しかし、モルトファンタスクの一体、腹を物理的に割った奴が、その内部から刃物を複数放つ。一つが電灯を掠った時、それだけで真っ二つになったことから威力はとんでもないと分かったが、オーダシューが避けるにはもう遅い……。


「しまっ……」


 だが、その刃物が命中することはなかった。その刃より先に、別の斬撃がすべての攻撃を弾いたのだ。振り向くと、その飛ぶ斬撃は董仙が繰り出したものであった。


「万が一の時は任せるとよい。貴様は目的を果たすことに集中しろ!」


「ああ、ありがとう!」


 オーダシューは何度も、何度も槍を奴等に突く。奴等はぎこちない動きながらも、その攻撃を避け続ける。その様子を見て、あまり好ましく思ってなかったのがファンティだ。


「ちょっとオーダシュー! 話し合いは〜!」


 しかし、少しずつではあるが、オーダシューの槍は上にずれて、相手の仰向けの腹の上に辿り着きつつあった。


「今だ!」


 次の瞬間、戦っていた鎧の蜘蛛のモルトファンタスクの腹に一撃、空中からの間違いなく強烈な一閃が入った。単純な威力だけでなく、重力すら乗せた一撃。結果道路にめり込むほどの威力から考えても、これで倒せないはずはない、少なくとも装甲は破壊できたはずだ、と皆思った。


 確かにモルトファンタスクの胸部分は大きく抉られていた。しかしあれほどの一撃をモロに食らったにしてはあまりに小さく、浅く感じる。それを証明するが如く、魔法金属を使用しているのだろうか、いとも容易く再生しきる。


 次の瞬間、モルトファンタスクの体の中から食い破るように、一つの刃が現れた。再生しきったその胸を容易く破壊する姿から悟るしかなかった。先ほどの行動の無意味さ、修業してなお届かない無力さ……。


 オーダシューは刃をモロに受け、胸から足にかけてを切断された。前脚でバランスをとれず、無力に落下してゆくその姿。ファンティは素早く虹を描いて守ろうとした。


 しかし、相手は3体、ファンティは残りの2体を描いた虹の壁でいなしながらするするりと抜けていく。しかし、オーダシューを潰した最後の蜘蛛のような一体がほぼ自由でいる事実を考慮してなかった。ファンティの絶望を遠目に、蜘蛛のような奴は顔の部分をレーザーをまっすぐ照射できるように立てると、じわじわと溜め続ける……。


 ガキン、と鈍い音がした。レーザーとはまた違った音だ。そして、次の瞬間に放たれたレーザーはあらぬ方向へ飛び、味方の魚の開きのようなモルトファンタスクを貫く。凶悪な焼き払いを受けずに済んだファンティは安堵すると共に、その鈍い音が斬撃でないことに気がついた。それは小さな、それでいて威力のありそうな弾丸だった。


 レーザーの発射口目掛けてそれを打ち込んだのは、アオスブルフ、厳密には彼の操るドローンであることが、ドローンについた銃から見てとれた。


「へぇ、案外一般的(たいしたことね)ぇんだな。この程度で回避(ヨケ)られるとは」


 しかし、先ほどのレーザーら近くの道路を割き、道路を奥と手前に斜めに分断した。その結果すでにだいぶ進んでいるはずのゐ合の師は元の国側、ファンティに連れ回されたサカタはアイゼブルトゥライヒ側になった。


「うむ……」


「師匠、どうしました?」


「いや、皆ここの断裂を越えることくらいわけないが、それでは荷物を持ちきれんと思ってな……」


 ファンティは倒れゆくオーダシューへ駆け寄り、その腰を支える。上半身と下半身が宙ぶらりんになったそれは、今にもちぎれてしまいそうだ。


「ファンティ……あれは……」


「今はそんなの気にしてる暇ないのよ! とにかく距離を取らないと!」


 なんとか自らの飛行機能で遠くまでゆこうとするも、当然向こうも同じくらいの速さなものだから、オーダシューを抱えている分ファンティが不利である。よたよたと飛んでいる間にも、相手のレーザーの狙いは、どんどん良くなってゆく。


「ファンティちゃん! くっ、わたしがもっと強力な技を使えていれば!」


「そんなことは、わしも常々思っとるわい」


 断裂の奥で悔しそうな涼子を、刀で向こうの機械に応戦しつつも、董仙は嗜めた。


「まずい……もうおいつかれるかも」


「ちっ、視てられねぇ!」


 もはや、足の裏には奴らがいるという時、さらに後ろの方からあり得ないくらい飛ばした速度で何かがやってきた。ファンティらの隣にそいつがきた時点で、正体がわかった。アオスブルフがとんでもない排気量でこちらに突っ込んできていたのだ。

プレクトツィヒ「今日のカード紹介、今日のカードはこちらだ!」


自動破(オートバーン)プレクトツィヒ・ドライドナー

チェイサー

闇属性 種族:メカボーグ・レーサー

コスト3 攻撃4 守備1 速さ+2

これが墓地以外から出た時、墓地からコスト3以下の闇のチェイサーを出す。

これが墓地から出た時、山札から任意のカードを1枚墓地に置く。


プレクトツィヒ「なんと言っても即効性のある蘇生効果が一番(ぶっちぎり)の強みだ! 3以下となるとかなり範囲(ゾーン)も広く蘇生ができる! 鉄血国(アイゼブルトゥライヒ)は、墓地からの蘇生が条件になることが多い! 俺はまさにキーカードと言ったところだな!」

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