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7話-3

「オラオラぁ! どうした龍種のおっさんよぉ!」


 それぞれが全力で駆け抜ける夜の高速道路、威勢だけはいい小柄な車体、サメのペイントの車男は、董仙の乗る車に何度も衝突して妨害をしようとする。


 しかし、それを董仙は予知したかのようにかわしていく。そして、自らの車の速度と比例して目の前から猛スピードで突っ込む一般車を、人間の物差しで考えるのであればすでに老年とは思えない凄まじいハンドル捌きで避けていく。


「師匠! あまり無茶は!」

「ほう、サメか、サメならば衝突は勧めんな。なぜなら!」


 向こうが全力でぶつかってこようとした時、董仙はレールのスレスレを走っていた。もちろん、普通ならここから避けることは困難だろう。


 しかし、董仙はあえてスピードを一気に落とした。急ブレーキにより、車内は乱痴気騒ぎでも起こったかのようにメチャクチャになる。


「ちょっと師匠……!」


 しかし、それと共に砕け散るような音が周囲に響いた。急角度でそれを避け、横目に先ほどの車を見ると、スクラップの状態になってしまっていた。内部では手を挙げて根を上げた男がドローンを飛ばしている。自力では脱出も困難なのだろう。


「サメは脆くあるからよの」


「ツヴァイハイ悪ィな、停滞()いてくゼ!」


 アオスブルフは振り返ることもせずに先頭を取った。雲が降りてきたと思うほどの排気は、周囲を煙たくさせた。


「このままだと先に何があるかわかりませんよ!」

「仕方ない、速度を上げるか」


 董仙の車はさらに速度を上げ、多くの車を追い抜いた。もはや、車内からは追い抜いたかも見えず、それどころか凄まじいまでのGが後部座席を襲った。


「し、師匠、速すぎ……」


 なんとか猛烈に追い上げ、アオスブルフの機体に追いつきそうになる。しかし、その時董仙は嫌な感覚を覚えた。車の進み方がおかしい、明らかに滑っているようで……。実を言えばこの車は先ほどアオスブルフが撒いたオイルを思い切り踏んでしまったのだ。摩擦抵抗はもはやほぼなくなり、速度に制限が効かなくなる……。運悪く目の前は急カーブだ。


「ぬおっと!」


 ほぼほぼ直進でカーブに突入すると、直角に曲がるようにしてギリギリでカーブを曲がり切る。速度がどんどんと上がっていくからか、アオスブルフすらも、一瞬ひるみ、大幅に距離を詰められた。


成程(ナル)! 随分やるようじゃねぇか! だが、そう簡単にゃあ、抜かれんぜ!」


 すると、アオスブルフのタイヤが萎んだかと思えば、急にトゲをモチーフとした見た目になりだした。事実、このタイヤは鋭いらしく、地面のアスファルトは農道の土のように荒らされた。


「愚かな……この状態では仲間も走れんぞ」


 ボロボロの道路に突入し、車体が何度も上下する。この中でも董仙は冷静に状況を判断できていた。だが、アオスブルフはこの図星の発言になおも笑った。


「俺は鈍重(ノロマ)な野郎には興味ねぇのよ! ついてこれねえ凡夫(パンピー)は置いてくゼ!」

本気(マジ)っすか総長(カシラ)!」


 実際、多くの自動破オートバーンの連中は、この悪路の通行に四苦八苦していた。ゴーストのペイントのエモツィオン・アインガイストは走り続けることには成功したが、タイヤが無惨にパンクしてしまっていた。


 そんな中、後方でその様子を見届けるばかりであったのがサカタの運転している車であった。未だアオスブルフが荒らした道にすら入っておらず、何か前の方で事故が起きてるな、くらいにしか思ってなかった。


「おいおい、サカタよぉ、もっと速くできねぇか!」

「これ以上速くしたら絶対車線変更で事故るでしょ!」


 あまりに臆病になっているサカタに、ローダシューはファンティと連絡を繋ぎ、一つの策を教えた。


「ファンティ、交代だ!」


「えー、交代って……ああ、そうだね〜、そうすればいいか〜」


 すると、ふっと後ろにいたローダシューが消えた。代わりに彼女は前の董仙の車に乗り込む。少し浮いていたからか、ドスンと椅子が大きい音を鳴らす。


「えっ、何っ? あ、オーダシューちゃん!?」

「喧しいの、もっと静かにせんか!」

「いやー、すまない! でも、ファンティは今、後ろに!」

「後ろ?」


 ふとバックミラーを見ると、後ろも後ろ、サカタの車の側にファンティが漂っているのがわかる。手のエタンセルを振り回し、空中に光輪のサインを書いてみせる。車の中のサカタも、漸くファンティの存在に気がつき、驚愕する。


「ファンティ! どうして車の外に……」

「車に〜、簡易クオリアギアを設置してあったからできたんだ〜よ〜」


 運転中のゐ合の皆からは見えないが、外の自動破(オートバーン)の族たちからはしっかりと見えていた。鈍く光るパーツが車のバンパーに付着しているのを。


「これの仕業か!」

「にゃろ、ドローン!」


 雷の紋様の車人、プレクトツィヒ・ドライドナーが自身の運転席のあたりから2台のドローンを呼び出した。空に揺蕩う機体はその下から機銃を構えると、サカタの機体に何度も弾を撃つ。しかし、ファンティがエタンセルで虹を描くと、すべて弾かれてしまった。


「確かに、これなら安全に進める!」

「それだけじゃあ〜ないの〜よ〜」


 ファンティは並走を続けながらサカタの通る道の前に虹を描く。


「うおっ!」


 すると、みるみるうちに虹は夜空にかかり、高速道路の上を泳いでゆく。サカタの車は誰の邪魔も届かない道の上で、ぐんぐんと前に進んでいく。


「すごい、すごいぞファンティ! これなら一番前に行くことだって夢じゃない!」

「どんなふうに進んだって、道をえがいてあげる。安心して飛ばして〜」


 その車は自動破(オートバーン)の連中だけでなく、董仙の車も抜き、やがてアオスブルフの車体も乗り越えてゆきそうだ。空にかかる虹から聞こえる幻想的な音色が、董仙の耳にも届いた。


「彼奴ら、随分と呑気な道を進んどるな」


 アオスブルフは何度もドリフトをかまし、アスファルトの火花を散らすも、サカタらがあそこまで自由な道で進めるのであれば追いつくことは不可能だ。


「ほぉう、そんな裏技(オクノテ)を持ってやがったか。だが、俺らは天下(テッペン)自動破(オートバーン)! 敗北()ける気がしねぇんだよ!」


 すると、彼は自らの車体をバイクがウィリーするように持ち上げると、何度も排気を吹かした。すると、少しだが車体が浮き上がる……。


 一方サカタは空中ドライブを続けていくうちに、感情が驚きから楽しみに変わっていった。虹の上は一切の抵抗がなく、まさに天にも昇る心地というものだろう。


「ファンティ、あいつらがどこまで追いかけてくるかは知らないが、このままならオレたちだけでも、振り切れるんじゃないか? そうすれば、怪ロボットだって探しに行ける」

「確かに〜、その前に早めにオーダシューを呼ばないとね〜」

「そうか、つくづく便利だなその転送システム!」


 しかし、どうにも様子がおかしい。虹の上は音もなく進んでいけるはずにも関わらず、やたらとやかましい音が後ろから近づいてくる。それは、まるで虹を壊しているかのような……!


「……! ファンティ! 後ろよろしく!」

「後ろって……」


 彼女が振り向くと、なんとそこには虹の道にタイヤのスパイクを無理やり噛ませて登ろうとするアオスブルフの車体が。そして、奴が排気を最大にした結果、ついには虹の道に登り切ってしまった。


「なにあれ!? 虹の道は、こんなに上を通ってるのに!」


「オラ邪魔(ノキ)なぁ!」


 もちろん、この一本道で避けられるはずがない。爆走する凶器の化身の車に、サカタのちょっとオフロード通れる程度の貸車はぶつけられただけで吹き飛んでしまった。もちろん、その車はファンティが虹の道を使ってキャッチしたため、道路に叩きつけられることはなかった。


「あいつ……せっかくの虹の道に喰らい付いた!」

「なんてこわいサイボーグなんだろうねぇ」


 それなりに焦ったサカタらと異なり、なんだかんだ呑気にしていたファンティだが、急に目のライトを暗くした。以前、ゐ合の技術を学んだ結果、周囲のわずかな空気の流れから、生物非生物とわず気配を察することができるようになったが、あきらかに機械生命の不自然な空気がこちらに近づいているのを、機械の装甲で気づいたからだ。


「どうした? ファンティ」

「来る……! あいつらが!」

アオスブルフ「今日のカード紹介! 今日のカードはこいつだ!」

自動破オートバーン総長 クライゼクス・アオスブルフ

チェイサー

闇属性 種族:メカボーグ・レーサー/デーモン・コンダクター

コスト6 攻撃7 守備5 速さ相手-2

これが出た時、お互いのチェイサーを1体ずつ選び、破壊する。これが墓地から出ていたから、さらに相手のチェイサー全て破壊する。

これが墓地に送られた時、このカードを含むカードを好きな枚数山札に戻し、墓地から戻した数よりコストの小さい闇のチェイサーを出してもよい。その後、このターン、《自動破総長 クライゼクス・アオスブルフ》は墓地を離れない。

アオスブルフ「俺のなによりも注目するべきテキストは墓地に送られた時に、墓地をコストにしてチェイサーを出す効果! 全くのポイント消費は無料(タダ)使用(つか)えるから、何かのついでに使いやすい! さらに俺自身を墓地に送りやすい破壊効果も見逃せないな! さらに、墓地から出せば全消去(リセット)までできるときた! まさに、墓地利用デッキの要だ! 是非とも新パック『ファンタスクの冒険』で入手(ゲット)してくれ!」

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