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6話-2

「この切先を受けられるか!」


 距離を詰め、正面から乱舞のごとく斬り続ける董仙。受ける側のファンティは容易くそれを筆から出る虹に流して受け流す。涼子はファンティの優位に安堵していた。


「これなら何発でも……!」


「いや、厳しいかもしれない」


 しかし、オーダシューは長年見てきた彼女の様子のおかしさに気づいていた。一見全て綺麗に受け流せているように見えるが、よく見ると筆を振る速度が全然足りていない。大きな一つの線を描き、無理やり全てを受け流しているのだ。普段のファンティならのんびりしているようでこんな雑な真似はまずしない。するとなれば、それは機体の疲弊としか考えられなかった。


「はっ!」


 瞬間、董仙はこのからくりに気がつき、虹を縫うように避け、ファンティの首筋をついた。彼女の首からは、ハニカム構造の幻影が浮かび、刀を一時的に止めた。


「あれは、シールド機能……ファンティが使う所は初めて見た」


 シールド機能、ファンタスクが危機に陥った時に自身の周囲に具現化される、攻撃を受け止める盾といえる存在であり、簡易ファンタスクバリアでもある。ファンティにこれを使わせるほどに、董仙は押しているのだろう。


 すかさず空中に逃げゆくファンティ。しかし、当然董仙は飛ぶ斬撃を放ち追いかける。揉まれるように斬撃はファンティの肩や膝に命中した。


「もはや空中の方が不利かもしれない……」


 オーダシューもそう予想する中、ファンティは意を決してか、董仙向けて体当たりを仕掛けた。


「愚直な突進ほど、ゐ合に適した的はありやせん! 最高の技で屠ってくれる!ゐ合奥義・獄華・絢爛!」


 董仙はゐ合の構えから、何度も刀を鞘で擦り続ける。やがてその刀身からは煙があがり、焼け付くような熱気が観客である弟子らにも伝わった。


「閃!」


 董仙はファンティが目と鼻の先にきた、その段階で刀を振るう。しかしその寸前でファンティは左から斜めに虹の蹴りを加えていた。裂けたのはその虹であったが、ファンティの前面にも貫通した一刀が、線を刻んだ。崩れ落ちるように、ファンティは全身で地面にへばりつく。


「くうっ、けど!」


 同時に、もう一つのエタンセル、筆が自発的に動き董仙の背後に回っていて、斜めに虹を書き記していたことに、董仙は気づかなかった。ファンティのゐ合の技術の応用だろう。虹が2つ、挟むように形成されるこれが何を表しているかは明確だった。


 次の瞬間、凄まじいスピードで董仙は斜め上に飛ばされる。もはや、虹の上には乗っていないが、つまりこれは虹そのものがまるでレールガンのように作用したということだ。


 1秒とたたぬ間にゐ合の師である董仙は先ほど立てた杭の外に出てしまった。


「じょ、場外……」


 これを見た多くの弟子らは皆放心する。何が起こったか理解するために、そして理解した時、意外な反応が飛び出た。


「やった、やった! これであの子たちは処断されない!」


「これからしばらくは、一緒にここで過ごすことになるでござるな」


「師匠をぶっ潰せるなんざ、こりゃあ大物だぜ?」


 その湧き上がりはおおよそ歓迎であったのだ。ローダシューは安堵を覚え、ファンティに飛んで近寄る。


「ファンティ、ほら、勝てたんだ。ここでしばらく居てもいい!」


「うん、でも〜ちょっと無理しすぎた〜かも〜」


 ファンティの腹の部分の大傷は、内部の機関にもダメージがあり、ファンティは立とうにも立てない。幸い、ファンタスクは魔法金属の機械生命、メンテナンスを怠らなければ、自然再生ができるだろう。


「まったく、何だあの技は。儂もちとこたえたぞ」


 董仙はすぐに戻ってきたが、地面に強く叩きつけられたからか、足元がおぼつかない。


「師匠! これだけ実力を見せれば、彼女らのことを認めてくれますよね!」


 サカタのこの物言いに、董仙は首を掻いた。


「ま、まぁ、認めてやらんこともない……ぞ?」


 帰ってきたその反応は思ったよりも好意的な反応であった。


「さて、皆のもの、これでよかろう。修業の怠ることのないように。そして、今夜はこの絡繰……」


 この言葉にファンティは倒れながらも目のライトを細め、苦い顔を表現した。董仙はこれに気がつき、わざとらしく顔を逸らし、咳払いした。


「こほん! ファンティたちの来訪を正式に認めた、宴といこうかの」


「よっしゃあああ!」


 たまの羽目外し、周囲は大いに湧いたのであった。



「しかし、久々の酒は美味いものだなぁ!」


「金龍どの、加減して、加減してでござるよ」


 宴は大いに盛り上がる。机の上にはいくつもの料理が並べられ、多くのお猪口や湯呑みの舞い踊るような風景が広がった。


「しかし、瞬間移動と気配消しができる奴が現れたとなれば、我らの修業も、ちと厳しいものとなるの」


 董仙は先ほどの戦いで、この世にもっと恐ろしい才があることを知り、このように述べたのだろう。それを今回の料理の大半を仕上げた隺園かくえんが聞いていた。


「確かに、我らのあり方も変わることになりそうですね……しかし、今はよいではないですか」


「まぁ、そのようなものか」


 ファンティも魚はまだしも、白いよくわからない食物を見て一瞬食欲を失っていた。


「ファンティ、食べないのか」


 ローダシューは平気でそれをオイルマメにして、口にしている。ほぼ双子の姉妹のように扱われてきた彼女の勇気を見て、ファンティもオイルマメにするために指でつまむ。その白い雲のような物体はみるみるうちに小さくなり、あっという間に頬張られた。


「なんというか〜、あっさりしてるね〜」


「それは卯の花だよ、おからという豆の加工品を使ったものだね」


 サカタは涼子と仲良くしているファンティに目をかけつつ、オーダシューに向けて一つの地図を見せた。


「さて、君らは今ここがどこかもよくわかってないだろう。ここで、改めて情報を整理したいと思う」


「よろしく頼む……地図はネットワークを駆使すれば探せるが、詳しいことは何もわからないんだ」


 サカタはまず、トリフルール近くの山を指差した。


「この世界の名はギルダームと呼ばれている。そして、ここが今オレたちが拠点にしているマレイド山、この西にあるのがトリフルール、東にあるのがアキラメッドだ」


 今までトリフルールが動ける範囲の限界であったオーダシューにとって、知っていたこととはいえこの広さまでは想定外であった。なにせ、このマレイド山はトリフルールからわずか数十kmしか離れていないのだ。


「アキラメッドには法皇の塔があると聞く。これはこの辺り……でいいのか?」


「大体間違ってないと思う。詳しくはオレも知らんが……」


 この地図が数日後、また引っ張り出されることを、彼らはまだ知らない。

董仙「今日のカード紹介、今日のカードはこれかの」


ゐ合・風切羽

スペル

無属性

コスト2 速さ-2

山札の上から3枚を見て、1枚を加える。

このターン中受けたダメージ分回復する。そうしたら、このターンの終わりまでドローできない。


董仙「ダメージを大きく抑えるスペル。手札も維持できるから無駄になりにくいの」


リョウコ「ただ、これでたくさん回復したいと欲張ると、うっかり倒されてしまうかもしれないから、使い所が肝心ね!」

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