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3話-3

「くそっ、追いかけ……」


 オーダシューは追いかけるために転送を使おうとした。しかしその手はわなわなと震え、転送を使うに使えない。彼女にとって、アンドンターブルが心配なのだ。


「シュー、ローダ、ュー」


 結局、この声に負け、あの怪物を排除する意志に反し、アンドンターブルの側に寄ってしまった。まだ助かると思っていたのだ。


「アンドンターブル! 意識はあるか!」

「甘い……な……私……ぞ……代わ……りはいるのに……」


 その手すら握れない壊れた彼女を見て、オーダシューは涙ぐんだ音声になった。


「待ってろ、今すぐ救護班に連絡をする」

「いい、もう……いい……」


 今にも途切れそうな微かなその声は、オーダシューの心を諭した。しかし、彼女の燃え上がる心は、連絡を続けることをやめることはなかった。


「くそっ、繋がらない」

「オーダ……シュー……聞いて……くれ」

「なんでも聞く! なんだ?」

「もう……わかっ……たはず……だ……なぜ……奴らが……瞬かん……動……できたか……」


「ああ! 奴らはなぜか幻想転送ファンタズムトランスファートプログラムを使用できる! これだけでも大きな収穫。だけど、アンドンターブルに代わるものはないんだ!」

「いい、いい……だ……。貴方も……ファンタス……ク……。ファンタスク……うっ、は、さい……ごの……きぼ……」


 この瞬間、音声は途切れた。もはや彼女の断面から見える内部パーツは、空回りを繰り返すのみだった。


「うっうっ……ああああ゛あ゛あ゛!」


 オーダシューはこの場どころか国のセンサーからも消え去った奴らのことすら忘れて悲しみに暮れた。



 国の中心部では、トリオンファンとヴェルヌ騎士団がこの国を脅かす最後の怪ロボットと対峙していた。首都にも関わらず平野のようにビームを放ち続けるロボット、その見た目はびっくり箱のような見た目のファンタスクを悪意を持って改造したような形をしている。


「ぐっ!」

「ヴォルビック!」


 ヴェルヌ騎士団もそのビームを身をもって受け続け、人的要因を消費しつつあった。ヴォルビックと呼ばれたその機械騎士も、修復には半年はかかるであろう程下半身ごと焼かれてしまっている。


「大丈夫です、ヴェルヌ騎士団の皆さん、希望を捨てないで、勝利は我らにあります!」

「ははっ、トリオンファン様、ジョークなら笑える時に言ってほしいぞ。見てくれあのロボットを」


 かのロボットは傷すらつかず、こちらを嘲笑うように細かく部品を動かして見せている。それは、騎士団もファンタスクの攻撃も、なんら響いていないように見えたのだ。


「あれで本当に攻撃が効いていたとしても、信じられない。我らは、恐ろしい存在を呼び戻してしまったんだ」

「折れないで、騎士エビアン!」


 そうやって励ますトリオンファンも、腕に大きな焦げが存在している。何度もビームを受けるものだから、魔力による再生が追いつかないのだ。


「わたしが頑張ってあのロボットを引きつけます! 倒さなくてもいいです、持久戦なら!」

「いや、トリオンファン様、私は見てしまったのだ。あいつが瞬間移動して現れる様を、それはまるで貴方様と同じように。もし、ファンタスクの皆様と同じ、万能動力で動いてるのだとしたら……!」


 わなわなと震えるエビアンは、普段は決して強きに臆するような性格ではない。かつてのビーストとの戦いで、最悪なプランを想像することはあっても、それを加味して動けるような勇猛たる機械生命だ。しかし、その最悪をはるかに超えた想像が現実にあると思うと、動きをとどめてしまったのだろう。


「ここは中心部、この国から追い出すことも困難だ……!」

「なすすべなし、とでも言うのですか……!」


 誰もが絶望したその時、かの怪ロボットは急に消失し、残されたのは焼け付くような空気と破壊された跡のみ。皆は呆気に取られるしかできなかった。


「何……だったのでしょう……?」



「ファンタスクの……ファンタスクの欠けた音が……CPUに響く……」

「枢機卿! 枢機卿!」


 荒れ果てた首都の中心、三度姿を現した枢機卿に、街の皆は詰め寄るように問いかけた。


「あの恐ろしい怪物は何者だったのでしょうか!? このままでは心配でスリープモードにもなれません!」

「う、うむ……」


 枢機卿は塔ほどもある巨大な杖をつき、怪訝な雰囲気を醸した。声もまた、ひどく悩み、何かを恐れるような声であった。


「私は今まで神の御心のままに心身を捧げてきたつもりであった……。しかし、それすらも驕りと申されるか、主よ! ああ、主よ、神よ、聖霊機構よ、聖なる使徒よ、我を許してくれ……」


 焦燥し切って見えた枢機卿に、オーダシューが足元に身を寄せる。そして、枢機卿の顔を眺め、顎を引いて睨みを効かせるようにして枢機卿に問いかける。


「枢機卿、あの機械は一体何者なのでしょうか? これは皆が耳に入れたいことのはずです」


「あれは……あれは……」


 枢機卿はあまりの恐ろしさからか、話すらなかなか切り出さない。やがて、ゆっくりと、微かながらに音声を発す。


「あれは……我らの間違いが産んだ怪物……なのだ。光ある所……必ず闇がある……。ファンタスクもまたある所……闇は迫る。あれは……ファンタスクを模し、それを殺すもの……人呼んでモルトファンタスク……」

死の幻想(モルトファンタスク)……」


 沈黙を破ったその発言に、周囲はどよめきを隠せない。このような怪物が存在していると言う事実は、皆初めて聞いたようであったからだ。


「しかし枢機卿殿、奴らは今どこに……?」


 取材を行う、ディレクターの機械が枢機卿にインタビューを仕掛ける。これにも枢機卿は重々しく答えた。


「わからぬ……確実なのは、今は国外ということのみだ……」


「誰が何のためにこのようなことを……?」


「わからぬのだ……。しかし、奴らは……破壊以外の能を持たぬ存在なのだ……。誰かの、何かしらの恨みが、私にあるものと思われ……うっ……」


 枢機卿は姿勢を崩し、まともに立つこともままならないようだ。かのような大きな膝が降ってくるので、足元の機械たちは一斉に大きく避ける。そして、落ち着かない枢機卿を、側のジャンヌが、それがびくともしないと分かりつつも揺らし続けた。


「枢機卿殿、枢機卿殿! お気を確かに!」

「なぁんだ、そんなことか」


 誰もがわからぬこの状況を枢機卿問い詰める中、その前に立ち塞がるようにしてオーダシューが彼らの喚きを止める。そして、枢機卿に改めて向き直り、槍を振り回してみせた。


「なら、そのモルトファンタスクってのを倒してしまえばいいんでしょう? アタシが退治に向かいます」

「ならぬ……!」


 枢機卿は狼狽え、姿勢すらままならないながらも、オーダシューには強く、威厳のある声で警告した。


「私は知っておるぞ……。オーダシューとアンドンターブル、2体のファンタスクを持ってすら歯も立たなかったということを……。そして……それで、失ったものもあると……いうことを……」


 枢機卿はまた、悲しみに暮れ、顎の上の部位を覆った。もう二度と、かのような悲劇を起こしたくない、そのような思いからだろう。しかし、それにオーダシューは発破をかけた。


「だからこそです。アンドンターブル、いやランドンターブルの思いを、アタシは無駄にしたくありません。その為には、どのような修練だって行うでしょう」


「ならぬ……。そもそもファンタスクはこの国の……守人なのだ。この国を離れるなどということは……あってはならない。現に……ローダシューよ、そなたも今までこの国から……出るようなことはなかっただろう……」


「そうでございます、聖女様は自らのお仕事を!」


 しかし、枢機卿は頑なな態度を崩さない。周囲もオーダシューが義憤にかられておかしくなったとでも思っているようだ。もはや、ここで話を続けてもアタシの話は聞き入れられないと、オーダシューは薄々感じつつあった。

オーダシュー「今日のカード紹介。今日のカードはこれだ……」


ファンタスクの祈望

アーティファクト

光属性 種族:ファンタスク

コスト1 速さ+2

チェイサー以外のオブジェクトが出た時、カードを1枚引き、手札を1枚山札の上に置く。

ターンのはじめに、今チェイサーが出ていないか、前のターンに自分のチェイサーが離れたかしていれば、山札の上から3枚を見て、その中からコスト3以下のファンタスクカードをコストを支払わずに使ってもよい。残りは山札の下に戻す。


フレーバーテキスト

ファンタスクはこの国の最後の希望……ランドンターブルの遺言を聞き遂げたオーダシューは、トリフルールを壊滅状態にしたモルトファンタスクに復讐を誓うのだった……。


オーダシュー「無から有を生み出すことができるカード。失敗のリスクもあるが、自身の効果でそれを補える。ついでの味方への擬似除去耐性も見逃せないな。やはりこのカードと相性がいいのは《不屈のファンタスク》、アンドンターブルだ。これで山札から出して効果を起動しよう……。アンドンターブル、あなたのこと、あなたの遺志は、絶対にメモリーから消さない……!」


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