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3話-1 死神(ゼンゼンマン)

「悔しい、悔しいぃ!」

「大丈夫だ、僕たちの命はアキラメッドが担保してくれている」


 捕まったレッテーナたちは、金属の縄に縛られて、ことの進まぬ歯がゆい思いをしていた。そんな無様な奴らを横目に、改めて皆の前に姿を見せた枢機卿は彼の国の別の枢機卿に話をつけに無線で連絡を取る。枢機卿とはこの国では最高権力と言って良いが、カトリー教の聖地であるアキラメッドでは枢機卿は最高権力の教皇を支える役職なのだ。


「こちら枢機卿リシュリュー……。アキラメッドの枢機卿と捕虜についてのお話がしたい……」

「ああ、黙示録の獣(ビースト)についてか。やはり、そちらで保護しているのだろうな?」

「もちろん……」


 これを聞いたオーダシューたちはあまりにもこの流れを聞き慣れているようで、もはやなんの反応もしない。唯一、新入りのトリオンファンは、国家を揺るがしかねなそうな外交に、ハラハラとしていそうなおぼつかない足腰でいた。


「オーダシューお姉さま、大丈夫なのですか? 一歩間違えれば世界大戦では……」

「ああ、いつものだ」

「して、リシュシューよ」


 無線先の枢機卿は、当然交渉を仕掛けにきた。


「我らが始めた戦いとはいえ、私としても我らの同胞を失うのは心臓の張り裂ける思いだ。故にこの度のご無礼、示談金で解決しようと思うのだ。そうだな、800万ギルダで如何しようか」

「800万ギルダ!」


 驚いたのは捕虜の皆様と、トリオンファン、のみ。確かに800万ギルダは一つの企業を運営できるほどの大金だ。しかし、国単位で見ればそこまでの金額ではない。


「800万ギルダも踏んだくろうとするとは、なんたる悪辣!」


 いざ金の話になると愚痴を言いだした捕虜たちだが、枢機卿は目もくれずに新たな要件を伝えた。


「それでは、私の国民の想いも、晴れぬだろう。この国も多くのものが壊される被害が出たものだ……。7800万ギルダなら、交渉を受ける……」

「7800万ギルダ!」


 これは、大都市圏を一手に賄うほどの予算である。これだけの大金があれば、小国などはまるごと買えてしまうだろう。当然、野次もまたわざとらしく怒りに震えた。


「金に目が眩んだ背教者めー! 人の心というものはないのかー!」

「まぁ、アタシたち機械生命だし?」

「大体こんな茶番にどんだけ時間かけてんのさー」


 マランもオーダシューも、わかっていてふざけている捕虜にはうんざりだ。なぜならば、


「分かった、要求を呑もう」

「お心配り、感謝する……」


この要求を向こうの枢機卿が呑むことは決まっていたことだからだ。今まで黙示録の獣(ビースト)が攻め込む度何回もこのような交渉を繰り返し、その度向こうが金で事を治める。飽き飽きするほど、見慣れた光景だ。


「というわけで、捕虜は皆、アキラメッドに返すこととなった……。同時に交渉を行うため、国境上空からパラシュートでお互いに要求の品を投げ捨てる計画を立てている……。マラン、頼めるか……」

「アイアイ、承知!」


 体よく飛行機がこの付近まで飛んでくる。小回りがよく効き、小さなところでも入り込める機械生命だから作れたまるで美術品の貨物機だ。その荷台のスペースが開く。


「というわけで、みんな、詰め込まれてねー!」

「またか、慣れたモンだけどさぁ」

「あ、あ、姉さん、よ、よくそんな余裕ですね!」

「元々空飛べる生き物にそんな愚問聞くのかい?」


 マランはかの捕虜をまとめて箱に、雑に、荷物かなんかのように詰め込むと、彼らを連れて上空へ去る。マランは飛行機を操縦できるようには見えないが、それがクオリアギアを内蔵しているとなればこんなにも扱えるのである。


 空を離れていく飛行機を見送り、枢機卿は瞑った目のまま皆の衆に語る。


「予定外のことはあったが、これにて解散を命ず……ファンタスクたちは皆各々持ち場に戻るように……」


 枢機卿は今度はジャンヌを連れず、クオリアマギアの存在する中枢に去っていった。


 さて、残されたファンタスクたちだが、いつも悩みのタネのマランが真面目に仕事をしているので、平和なものである。


「私はまた図書館で資料の管理を続けようと思う。本というものは機械と異なり傷みやすいからな。あの本の修復も行わなくては……」

「アタシはいつも通り、パトロールかな。トリオンファン、今回のことは勉強になったでしょ?」

「はい! 万事丸く収まってよかったです!」

「いや、だからあれは茶番でさぁ……ファンティはまた散歩?」

「うん〜。もしかしたら、また景色が変わってるかもしれないから〜」


 そうして皆は別れ、各々の持ち場に戻る。ファンティは散歩先を考えた結果、パッシオン広場に向かうことにした。この広場は道路がラウンドアバウトになっていて、中央には水晶が広がるような形をした抽象的なオブジェがある。


「見てみて、ファンタスクの方よ」

「相変わらず美しい造形をしておられる」


 この周囲の土地は高価であれど富豪が住むような地ではなく、どちらかといえば商業的な利用の多い地だ。そして、この俗世から離れた雰囲気は、芸術家肌のやや浮世離れしているロボットが集まりやすいらしい。


 ファンティは、白い石の敷かれた、たまに紋章やステンドガラス風の模様を含む道を歩いていくと、ふと噴水の近くに一体のロボットの後ろ姿を見た。これは周囲のロボットと比べても良い造形をしているだけではなく、頭の後ろには光輪が浮き出ている。紋様は刺々しい赤いもの、黒い騎士のような姿をしていたが、それはまさしくファンタスクのようであった。


 ファンティは考えた。もしかして、ファンティと同じような、ファンタスクのお仲間かもしれない。噂には聞いていたけれど本当にいるなんて思ってなかった。そうだ、仲良くなれるよう声をかけてみよう、と。


「こんにちは、もしかして、ファンティと同じファンタスクの子?」


 声をかけたそれは返事をするのではなかった。その首は異様な角度に曲がり、手足はまるで蜘蛛のように折れ曲がった。そして、仰向けのブリッジのようになると、首を大きく伸び、東洋のろくろ首のようになった。その顔は、ファンタスクのような顔が裂けて出来たモノアイでこちらを睨みつけるようだ。蜘蛛の足のようになった手足は、まるでHの形を形どるように、肘の部分から割れて変形していて、趣味が悪い。


「何、これ?」


 すると、その気色悪い手足から、鋭すぎる軌跡の一撃が、ファンティの足をかすめた。ファンティの足は魔法合金で容易に再生するはずだが、これはなぜか、あざのように黒く残った。


「ひどい! 何するの!」


 その恐ろしいロボットは、手の刃物のような部位で、片手で軽く祈るようなポーズを取ると、ふっとその場から消えた。いや、消えたのではない!


「空……! 何でこんなに速く……!」

ファンティ「今日のカード紹介〜、今日のカードはこれ〜」


ファンタスク・モルトレナートゥス

スペル

闇属性 種族:ファンタスク

コスト5 速さ+1

ショックブラスター・闇(自分がダメージを受けた時、手札の闇属性のカードを捨てて、このカードを割り込んで使える)

山札の上から3枚を墓地に送る。その後、チェイサーまたは装備アーティファクトを1枚手札に戻してもよい。

自分のコスト6以下の装備アーティファクトに、それぞれのコスト以下の墓地のチェイサーを出して装備させても良い。


ファンティ「シンプルな墓地操作に、場の装備をほっぽっておかない蘇生効果持ちだね。しかもダメージを受けた時に割り込んで使えるから使えないままのこともないよ〜。《不屈のファンタスク》の手札以外から出た時に発動する効果とは相性いいかもね〜。けど、急に現れた謎のファンティたち似の子達……何者なんだろう……」


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